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加齢とともに濃い味付けを好むようになったり、食べ物が美味しく感じられなかったり・・・それは、味覚障害が起きているせいかもしれません。味覚機能は特に70歳頃から有意に低下を示すと言われており、誰にでも起こり得る身近な病気なのです。
ここでは、味覚障害の原因や症状、治療法についてなど詳しく解説していきます。
目次
味覚障害って?
味覚障害とは、塩気や甘味などの味が薄く感じられたり、全く味を感じなかったり、本来の味とは違う味に感じたりするといった味に関する障害のことです。
味覚に異常があると、食べることを楽しめず食欲が低下してしまったり、食べ物が腐っていても気づかずに食べてしまうなど健康を害する可能性もあります。薄味では味を感じず、濃い味ばかりを求めてしまうことで塩分の摂取量が増えてしまうことにも繋がります。
特に高齢者では加齢に伴う感覚機能の低下や、薬による副作用などで味覚障害が起きやすく、味が感じにくくなったり食べ物が美味しく感じられなくなった場合には、医師に相談して適切な治療を受けましょう。
舌はどうやって味を感じているの?
味覚には塩味、甘味、苦味、酸味、うま味の5種類があり、舌の表面や口の中の粘膜にある「味蕾」という部位で味を感知しています。私たちの身体は、食べ物の味の成分が唾液に溶け出して味蕾にある味覚受容器を刺激し、脳へ伝達することで味を感じることができる仕組みになっています。
また、味覚だけではなくにおいや歯ごたえ、舌ざわりなど様々な経験を総合して脳は食べ物を「美味しい」と感じます。味覚には、食べ物の味を感じて食欲を刺激したり、危険なものを食べないようにしたり、唾液の分泌を促進したり、消化液の分泌を促進して消化を促進したりなど、様々な役割があります。
味覚障害の原因
味覚障害の原因には加齢によるものや、亜鉛の不足、薬剤、病気、心因性などがあります。また原因が分からない特発性の場合もあります。また頭頚部のがんで放射線療法をふけている場合、その副作用として味覚障害があらわれることもあります。
1. 加齢
味蕾の数は加齢とともに徐々に減少していき、高齢者は新生児の3分の1まで減少すると言われています。
また、舌にある乳頭というザラザラした部分の形態も加齢によって変化します。若い頃は丸みや弾力性がある状態ですが、歳をとると形は扁平化していき、硬くなり萎縮していくのです。乳頭には味蕾が存在しているので、乳頭の形態変化によっても味が感じにくくなると考えられています。
さらに、加齢とともに唾液の分泌も低下していくため、食べ物に含まれる味物質が唾液に溶けにくくなることも味覚障害の原因となります。
2. 亜鉛不足
食事での亜鉛摂取量が不足すると味覚障害が起こります。亜鉛は体内に約2gしか存在しな微量な元素ですが、新しい味蕾を作るという大事な役割を担っています。
高齢者の場合、独居や高齢者2人暮らしの世帯で買ってきたものなどで食事を簡単に済ませたり栄養バランスが偏った食事をすることが要因で亜鉛不足となることがあります。
また、お酒をよく飲む人は、アルコールを分解する過程で亜鉛が使われるため亜鉛不足となりやすいです。さらに加工食品やインスタント食品に含まれる添加物は亜鉛の吸収を妨げます。
3. 薬剤
高齢者の味覚障害の原因で一番多いのは薬剤性です。加齢とともに日常的に薬を服用する機会が増えるためです。味覚障害を引き起こす薬剤は250種類以上あると言われており、神経の働きを鈍くしたり、亜鉛の吸収を抑制したり、唾液の分泌を抑えるなど様々な作用が味覚障害の原因となります。
多くの場合は薬を服用してから2~6週間で症状が現われ、なるべく早く治療を開始するほうが症状が改善しやすいと言われています。
4. 病気
貧血や消化器疾患、糖尿病、肝臓疾患、腎疾患、甲状腺疾患が原因で味覚障害となることがあります。また、顔面神経麻痺や脳梗塞・脳出血、糖尿病などの病気は味覚を伝達する神経経路に異常をきたすことがあり味覚障害を起こすことがあります。
また、シェーグレン症候群や口腔乾燥症などで唾液分泌量が減少したり、舌炎や舌苔、入れ歯が合わないなど口腔内のトラブルも味覚障害の原因となります。さらに、風邪で喉や鼻に炎症を起こした場合にも味覚障害を引き起こすことがあります。
5. 心因性
うつ病や精神的なストレスが原因で味覚障害となってしまうこともあります。ストレスがかかると、亜鉛の消費量を増加させたり、交感神経を刺激するため唾液分泌が抑制されて口腔内が乾燥してしまいます。
味覚障害の症状
味覚障害には様々な症状があります。
1. 味覚減退:味が感じにくい
2. 味覚消失:何かを口にしても味が全く分からない
3. 自発性異常味覚:何も食べていないのに口の中に苦味や渋みを感じる
4. 悪味症:何を食べても嫌な味に感じる
5. 異味症:本来の味と異なる味に感じる
6. 解離性味覚障害:特定の味だけ分からなくなる
治療法
味覚障害の治療は耳鼻科が専門です。亜鉛の欠乏が関与している場合には亜鉛の内服治療が行われます。薬剤性が原因と考えられる場合には、主治医と相談して原因となった薬剤を見直し、中止や減量をすることがあります。
加齢や病気などによる口腔内の乾燥が原因と考えられる場合には、保湿剤を使用して口腔内を保湿します。また、病気による二次的な味覚障害では原因疾患の治療が必要です。
味覚障害の食事療法のポイントは?
・亜鉛を積極的に摂取する
→味を感知する味蕾は、10日程度で新しく生まれ変わります。味蕾を新しく作るには亜鉛が必要不可欠です。「日本人の食事摂取基準(2015年版)」では1日に亜鉛を男性は9~10mg、女性は7~8mg摂取することを推奨しています。
「平成29年度国民健康・栄養調査」では、1日に男性は平均8.9 mg、女性は平均7.4 mg摂取しているとされており、通常の食品から必要とされる量の亜鉛を摂取することができます。
しかし、インスタント食品や加工品などの添加物が多い食品で食事を簡単に済ませてしまうと、亜鉛の吸収を妨げ摂取量が不足してしまいます。
また、飲酒をする習慣のある人も亜鉛が不足しがちになるため意識して摂取するように心がけましょう。
亜鉛の男女別平均必要量と推奨量(mg/日)
年齢 | 男性 | 女性 | ||
推定平均 必要量 | 推奨量 | 推定平均 必要量 | 推奨量 | |
18~29 | 8 | 10 | 6 | 8 |
30~69 | 8 | 10 | 6 | 8 |
70以上 | 8 | 9 | 6 | 7 |
参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015年版)」
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000041955.pdf
亜鉛が多く含まれる食品
食品名 | 亜鉛含有量(mg/100g) | 目安となる摂取量(g) |
生牡蠣(養殖) | 13.2 | むき身1個(約10g) |
かつおの塩辛(酒盗) | 11.8 | 大匙1杯(約17g) |
パルメザンチーズ | 7.3 | 大さじ1杯(約6g) |
豚レバー | 6.9 | 1切れ(約30g) |
たたみいわし | 6.6 | 1枚(3g) |
たらばかに(水煮、缶詰) | 6.3 | 1缶(約100g) |
炒りゴマ | 5.9 | 大匙1杯(約9g) |
するめ | 5.4 | 中1枚(約100g) |
わかさぎ(佃煮) | 4.4 | 1尾(約3g) |
卵(卵黄、生) | 4.2 | 中1個(約18g) |
ローストビーフ | 4.1 | 1切れ(約40g) |
毛がに(ゆで) | 3.8 | 1杯(約500g) |
明太子 | 2.7 | 中1腹(約80g) |
ホタテ貝(貝柱) | 2.7 | 1缶(125g) |
うなぎ蒲焼 | 2.7 | 一串(約100g) |
納豆 | 1.9 | 1パック(約40g) |
・唾液の分泌を促す
→口の中が乾くと味が感じにくくなるため、よく噛んだり、梅干やレモンなど酸味のある食品を食べることで唾液の分泌を促しましょう。
唾液線という耳の舌にある唾液を分泌する組織をマッサージするのも効果的です。それでも唾液の分泌が少ない場合は、保湿剤を使って口腔内を保湿すると良いでしょう。
・献立に水分を含んだ煮物や蒸し物、汁物を取り入れる
→水分が多い料理は口の中の水分を補うため、唾液分泌が少ない人でも味を感じやすくなります。
特に高齢者の場合は、食べ物に水分が含まれていると口の中でまとまって飲み込みやすくなるというメリットもあります。
・食べるときに味付けをする
→調味料は食べるときにかけるなど、自分で味の調整ができる献立を取り入れましょう。
・味以外の要素で食欲を刺激する
→食べ物を美味しく感じるのは味だけではなく見た目やにおい、食感、温度など様々な要素があります。そのため、料理の見た目にも気を遣ったり、美味しそうなにおいや好きな食感がする食品を献立に取り入れるなど、食欲を刺激する工夫をしてみましょう。
・決まった時間に食事を摂る
→味が美味しく感じられなく、食欲が減退すると栄養不足となってしまうこともあります。栄養不足は様々な問題を引き起こす原因となるため、空腹感を感じていなくても、決まった時間に食べられるものを少量でも口に入れることで栄養を摂ることが大切です。
本来の味と異なって感じる場合
・調味料は食べるときにかけ、色々な味付けを試す
・香味野菜や香辛料などの香りを利用する
・出汁を濃いめにとり旨味を引き立たせる
・魚、肉類はアク抜きや臭み消しを適切に行う
味を強く感じる場合
・強く感じる味の調味料や食品は使わないようにする
味を感じにくい場合
・味付けを濃いめにする
(※塩分の過剰摂取とならないよう注意が必要!)
・香味野菜や香辛料を使う
・旨味を利用し味に深みを出す
・料理の温度を人肌程度にする
・マヨネーズなどコクのあるものを使ったり、あんかけにして素材に味をまとわりつかせる
まとめ
食べ物を美味しく感じると食事の時間が楽しくなります。その楽しみが奪われてしまわないように異常を感じたら早期に医療機関を受診することが大切です。また、日常的に亜鉛が不足しないよう食生活の見直しや、サプリなどで十分な量の亜鉛を摂取するようにしましょう。