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腎臓は腰のあたりに左右ひとつずつ、握りこぶしくらいの大きさのソラマメ型の臓器です。腎臓は一言でいうと「尿をつくる臓器」といえますが、その他にも体のバランスを保つためのいろいろな働きをしています。近年は加齢と腎臓の働き、病気と腎臓の関係について、いろいろなことが分かってきています。
目次
腎臓の働き
腎臓の最も大きな働きは「尿をつくる」ことといえます。しかし腎臓はそれだけではなく、さまざまな臓器ともバランスをとって、体の調子を整える働きもしています。
NPO法人腎臓サポート協会の「腎臓病なんでもサイト」内にある腎機能の簡単チェックです。健康診断結果の血清クレアチニン値と年齢・性別だけで、腎臓の働きの程度がチェックできます。今の自分の腎機能についてチェックしてみましょう。
https://www.kidneydirections.ne.jp/kidney_tests/check.html#check02
尿をつくる
腎臓の代表的な働きのひとつが尿をつくることです。ひとつの腎臓の中にはネフロンという組織が、およそ100万個あります。ネフロンは糸球体という毛細血管が毛糸玉のように丸まったかたまりと、それを包むボウマン嚢、それに続く尿細管からできています。
糸球体では流れてくる血液をろ過して、尿のもととなる血液(原尿)を作ります。原尿は尿細管を流れながら必要なものを再吸収したり、不要なものや老廃物を排出していき、最終的に尿として排出されます。
尿細管はナトリウム、カリウム、カルシウム、リンなどの中から体に必要なものを取り込み、不要なものを尿中へ排泄していきます。この働きによって体内のイオンバランスを適切に保っています。健康な成人では1日約150ℓの原尿がつくられており、尿として排泄されるのは1.5ℓ程度といわれます。
腎臓の機能が悪くなると、本来尿として排出されるはずの老廃物など体に害のある物質が蓄積し、尿毒症などを引きおこすことがあります。
血圧の調整
腎臓では塩分と水分の排出量を調整して、血圧を適正に保つように働いています。血圧が高いときは、塩分と水分の排出量を増加させることで血圧を下げます。反対に血圧が低いときは塩分と水分の排出量を減少させることで血圧を上げます。
血圧というと心臓とのかかわりが強いように考えますが、腎臓とも密接に関係していて、腎臓の機能が低下することで高血圧の症状があらわれることもあります。反対に高血圧が腎臓に負担をかけて、腎機能の低下につながることもあります。
血液をつくる補助
血液(赤血球)は、腎臓から出るエリスロポエチンというホルモンに刺激されて、骨髄の中の細胞によってつくられます。腎臓の機能が悪くなってエリスロポエチンの分泌に異常が出た場合、血液が十分に作られなくなる可能性があります。この状態を腎性貧血といいます。
体液の調整
尿をつくる過程の中で、尿細管から体に必要なミネラルを取り込んだり、体内の体液量やイオンバランスを調節したりしています。腎臓の機能が悪くなると体液のバランスが崩れ、むくみが出ことがあります。
ビタミンDの活性
骨の形成にはカルシウムとビタミンDが欠かせません。腎臓はカルシウムが体内に吸収されるときに必要なビタミンDを活性型に変える働きをしています。尿細管でビタミンDを活性型に変換することでカルシウムの吸収が促進され、骨の形成に役立ちます。
腎臓の働き | 腎機能低下 | 腎機能が低下したときの症状 |
老廃物の排出 | 尿毒症(倦怠感、嘔吐、頭痛、食欲低下、意識障害、けいれん、など) | |
体の水分量とイオンバランスの調整 | アシドーシス(血液のpHが酸性に傾く)による過呼吸、意識障害、高カリウム血症 | |
血圧の調整(水分と塩分の排泄) | 血圧上昇、浮腫、肺水腫 | |
赤血球をつくるホルモンの分泌 | 貧血 | |
骨をつくるビタミンD活性 | 低カルシウム血症、骨量・骨密度の低下 |
加齢と腎臓
腎臓は24時間休みなく働き続けているため、加齢に伴って疲労し、機能低下が起こります。これからの高齢化の進行に伴って、腎機能に何らかの症状を持つ高齢者は増加することが予想されます。しかし腎臓病は、高齢者の生活の質(QOL)に大きな影響を与える病気でもあります。
高齢者の腎臓
健康な成人の場合、およそ100万個ある糸球体のいくつかに機能低下があっても、他の糸球体が働きを補っていくことができます。しかし高齢者の腎臓では、加齢とともに糸球体の数が減少していて、働きを補いきれなくなっていくために腎臓の機能は低下します。腎機能の低下が始まった初期には症状があらわれないこともありますが、病状の進行とともに症状が出てきます。
・尿量の変化
腎臓で初めに作られる原尿は1日に150ℓ、その後尿細管を進みながら、実際に排出される尿は1.5ℓ程度に調整されています。腎機能の低下により尿細管での再吸収が困難となるため尿量が増えることがあり、人によっては頻尿を訴えることがあります。さらに腎機能の低下が進行すると尿を作ることができなくなり、尿量が減少します。
尿として排出されるべき水分が体内に溜まるため、むくみ、胸水、腹水など、通常は水分がない部分に水が溜まることがあります。また、血管内の水分量が増えることで血圧が上昇して心臓に負担がかかり、息切れや疲労感などがあらわれることがあります。
・血液の変化
腎臓は血液中のナトリウムやカリウムの電解質のバランスを整えています。健康なときには塩分を摂り過ぎても尿中に多く排出して、体内のナトリウム濃度は一定に保たれています。しかし腎機能が低下していると、ナトリウムが尿中に排出されずに蓄積していきます。同様にカリウムも腎機能の低下にともない体内に増えることで、高カリウム血症となります。高カリウム血症は不整脈の原因となることもあります。
フレイルと腎機能
フレイルとは、加齢に伴う筋力の低下などの要因によって、日常生活に支障をきたすような疾病や、要介護の状態に近づいている状態のことをあらわす言葉です。フレイルは早期に気づいて適切な対処がとれれば、健康な状態に改善できます。
フレイルの改善のためには、適切な運動の習慣と栄養バランスの良い食事が欠かせません。特に筋肉量を減らさないために十分なたんぱく質の摂取が望まれますが、腎臓病がある場合はその病状によって、腎臓を守るためにたんぱく質の摂取を抑える必要があります。
腎臓病がある高齢者はフレイルの状態に陥っている割合が多いという調査結果もあります。腎臓病の人の食事は、病状やライフスタイルによって必要なエネルギー(カロリー)量やたんぱく質量が一人一人異なります。主治医や管理栄養士と相談し、適切な食事内容について考える必要があります。
病気と腎臓
腎臓と関係のある病気は非常にたくさんあります。腎臓の病気が原因となって起きる病気もあれば、他の病気が原因で腎臓に悪影響が及ぶこともあります。
腎臓の機能はある程度まで落ちてしまうと、残念ながら元の機能まで戻ることはありません。若いうちから腎機能に悪影響を及ぼす生活習慣を改善し、早期発見・早期治療によってそれ以上の機能低下が進行しないように治療することが必要です。
腎性貧血
腎臓から分泌されるエリスロポエチンというホルモンが赤血球の産生を刺激し、骨髄で必要な量の赤血球が作られています。赤血球は、エリスロポエチンの指揮によってつくられているともいえます。
貧血というと食事からの鉄分補給が不足し、ヘモグロビンが不十分なために起こる鉄欠乏性貧血もありますが、腎性貧血の場合は原因が異なるため、鉄分を補給しただけでは改善しません。腎性貧血の治療には赤血球造血刺激因子製剤を使用した薬物治療が行われます。
貧血があると赤血球が全身に運ぶ酸素の量が不足し、体内で酸素が足りない状態となりますが、それでも全身に酸素を送り届けようと心臓は懸命に働きます。貧血の状態が長く続くことで心臓も疲労してしまいます。
骨粗しょう症と腎臓
骨粗しょう症は骨の中がスカスカの状態になり、骨がもろくなる病気です。転倒したときに骨折しやすくなり、高齢者が要介護状態になる大きな原因のひとつです。
これまでも女性は閉経によってホルモンのバランスが変わり、骨粗しょう症のリスクが高くなることはいわれてきましたが、最近では他にもいろいろな病気によって骨粗しょう症のリスクが高まることが分かっています。
腎臓がビタミンDを活性化することが骨の形成には重要ですが、腎臓と骨の関係はそれだけではありません。丈夫な骨はリンとカルシウムがバランスよく結合していますが、腎臓の機能が低下すると尿中へのリンの排出が滞り、血中のリン濃度が高くなります。
血中のリンとカルシウムのバランスをとるために骨の中のカルシウムが溶け出してしまうと、骨がもろくなります。この状態を骨ミネラル代謝異常といいます。
高血圧と腎臓
高血圧の目安は収縮期血圧(上の血圧)が140mmHg以上、拡張期血圧(下の血圧)が90mmHg以上が目安です。高血圧が続くと血管が硬くなる「動脈硬化」が起こりますが、腎臓の血管でも動脈硬化が起きてきます。腎臓のネフロンは毛細血管が集中しているため、動脈硬化が起こると血液の流れが滞り、腎臓の働きが悪くなります。この状態を「腎硬化症」といいます。
腎硬化症では血圧を正常に保つことが必要で、適度な運動習慣と塩分を控えた食事に加えて、毎日時間を決めて血圧を測る習慣も大切です。
糖尿病と腎臓
血糖値は、すい臓から分泌されるインスリンというホルモンによってコントロールされています。何らかの原因によってすい臓の働きが低下して、インスリンが十分に分泌されなかったり、インスリンの働きが弱くなると糖尿病になります。
血糖値が高い状態が続くと、血管が傷みます。腎臓の糸球体に集まっている毛細血管が傷つくことで、血液のろ過機能が正常に働かなくなってしまいます。このように糖尿病が原因で腎臓の機能が悪くなった状態を「糖尿病性腎症」といいます。
糖尿病は自覚症状が少なく、治療開始が遅くなるケースの多い病気ですが、糖尿病性腎症も目立った自覚症状がないまま進行していきます。糖尿病になった場合は早期に適切な治療を始めることはもちろんですが、状態が安定していても医師の指示に従って、定期的な尿検査や血液検査を受けることが大切です。
高尿酸血症と腎臓
尿酸値が7.0㎎/dlを超えた状態が高尿酸血症です。血液中の尿酸値が高い状態が続くことで尿酸が結晶化して溜まり、いろいろな症状を引き起こします。関節に溜まれば痛風の発作を起こし、腎臓に溜まることで「腎結石」や「痛風腎」を引きおこし、腎臓の機能低下につながります。
尿路感染と腎臓
細菌やウイルス感染による感染症が腎臓へ悪影響を及ぼすことがあります
・膀胱炎
腎臓から尿の出口までを合わせて尿路といいます。尿路に細菌やウイルスが入り込んで、体内で増殖し、炎症を起こしている状態を尿路感染症といいます。細菌やウイルスが膀胱へ入り込んで炎症が起きると「膀胱炎」になります。
・腎盂腎炎
腎盂は腎臓と尿管の接合部にあり、じょうごのような役目をしています。腎臓の糸球体で作られた尿を腎盂でまとめて尿管へ送り、膀胱に溜めておきます。細菌やウイルスが尿管をさかのぼって腎臓まで到達すると「腎盂腎炎」を引きおこすことがあります。
薬と腎臓
薬の中には腎臓の働きに影響を及ぼすものがあります。
・非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs:エヌセイズ)
痛み止めや解熱剤として処方されます。腎臓の血流を阻害することがあるため、腎臓の機能に低下または異常がある場合は注意が必要な薬です。
・降圧剤
血圧を下げる薬には、その作用機序(効き方)によっていくつかの種類があります。その中には腎臓の機能に影響を与えるものもあるため、腎臓の機能に低下または異常がある場合は注意が必要な薬です。
・抗生剤
細菌による感染症の治療に使用される薬です。長期に渡って服用すると腎臓に蓄積され、腎臓の機能に悪影響を与えることがあります。
・抗がん剤
抗がん剤はがん細胞だけでなく、正常な細胞も攻撃することがあります。長期に渡って服用すると腎臓に蓄積され、腎臓の機能に悪影響を与えることがあります。
どのような薬でも副作用のリスクはありますが、薬を処方されて服用を始めた後に、食欲不振、吐き気、下痢、倦怠感、発熱、乏尿、むくみなどの症状があらわれた時は、早めに主治医に相談しましょう。
まとめ
腎臓は他の臓器とも密接にかかわりながら働いています。そのため生活習慣病などの、他の病気の影響も強く受けます。加齢に伴って疲労がたまっていく腎臓を、若いころからの健康管理で守っていきましょう。