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近年、腸内細菌の研究は飛躍的に進み、腸内細菌が人の健康に及ぼす影響が明らかとなってきています。排便コントロールはもちろん、高血圧や糖尿病などの生活習慣病やアレルギーなどの免疫機能だけではなく、うつ病や認知症など脳の健康にも関係があることがわかり始めています。
目次
近年の腸内細菌の考え方
「メタゲノム解析」というDNA解析の技術が開発されたことで、腸内細菌についての研究も加速的に進みました。以前は数か月かけて腸内細菌を培養して種類や数を調べていましたが、メタゲノム解析では数週間で可能となっています。
腸内細菌の集まり、腸内フローラ
人の大腸に生息する菌は2万~2万5000種以上、大腸内の腸内細菌総重量は1.5㎏、便1g中の細菌数は約1兆個ともいわれています。便は食べた物のカスというイメージですが、実際は便中の固形成分のうち食べ物のカスは3分の1程度で、3分の2は腸内細菌と新陳代謝によって剥がれ落ちた腸の粘膜です。
顕微鏡で見ると細菌群は花畑のように見えることから、腸内細菌の集まりを「腸内フローラ」と呼びます。細菌は菌種ごとにまとまって存在し、お互いになわばり争いをしています。これまでは、ビフィズス菌や乳酸菌などのいわゆる「善玉菌」と呼ばれる菌種が多いほど良いといわれてきました。
しかし善玉菌といわれる乳酸菌の中にも、身体によくない影響を及ぼす菌種の存在が疑われるようになっています。反対に悪玉菌とされてきた菌種の中にも、身体によい影響があるケースもわかってきています。現在は多様な菌種がバランスよく存在することが重要であると考えられるようになっています。
善玉菌、悪玉菌以外の「日和見菌」についてはまだまだ解明されていない部分が多く、未知の細菌群といえます。腸内環境は善玉菌と悪玉菌の勢力争いによって変化しますが、そのバランスは食べた物や生活環境、心理的ストレス、加齢などの影響を受けています。
ビフィズス菌と乳酸菌
善玉菌であるビフィズス菌と乳酸菌は同じものと思われることがありますが、実際は別の菌種で、人の大腸内ではビフィズス菌は乳酸菌の数百倍も多く生息しています。ビフィズス菌が産生する酢酸は整腸作用によい影響があるといわれます。
乳酸菌 | ビフィズス菌 | ||
菌形 | 乳酸球菌 (球状) | 乳酸棒金 (棒状) | ビフィズス菌 (棒状・分岐した棒状など形は様々) |
生息場所 | 小腸に生息している。 植物や動物など自然界に存在する。酸素があっても生育できる。 | 人や動物の大腸内に生息している。 酸素のある場所では生育できない。 | |
特徴 | ・ブドウ糖などをエサに乳酸を産生する。 | ・ブドウ糖をエサに酢酸と乳酸、ビタミンB群、葉酸などを産生する。 | |
代表的な菌種 | サーモフィルス菌 ブルガリア菌 カゼイ菌 ラムノーザス菌 ガセリ菌 デルブレッキー菌 など | ロングム菌 ブレーベ菌 ラクティス菌 ビフィダム菌 など |
腸内環境に影響する要素
腸内環境は食事や生活スタイルの他に、遺伝や人種などの影響も受けていると考えられています。血液型と定着しやすい菌種についての研究なども行われています。
腸内細菌の地域差
腸内環境は常在する細菌の比率によって大きく3つの腸内フローラの型(エンテロタイプ)に分類できます。このエンテロタイプは、国や地域によって特徴があることがわかっています。
・プレボテラタイプ:プレボテラ属の細菌比率が高いタイプです。小麦やトウモロコシなど穀物を中心にした食習慣の国に多く、中南米や東南アジアに分布しています。
・バクテロイデスタイプ:バクテロイデス属の細菌比率が高いタイプです。肉食が中心でたんぱく質や脂肪を多く食べる食習慣の国に多く、中国や欧米が代表です。
・ルミノコッカスタイプ:ビフィドバクテリウム属、ルミノコッカス属の細菌比率が他のエンテロタイプより多いのが特徴です。プレボテラタイプとバクテロイデスタイプの中間的食生活の国に多く、日本やスウェーデンが代表です。穀物を主食として、海産物を多く食べる食習慣によって形成したと考えられています。
日本人特有の腸内細菌
日本人には紅藻類を分解できる細菌のひとつであるバクテロイデス・プレビウスがいることが報告されています。この腸内細菌は、欧米人の腸内からはほとんど発見されることがなく、日本人に特有の腸内細菌といわれています。バクテロイデス・プレビウスは紅藻類の消化に関係しているために、日本人が海苔を食べる習慣と関係が深いといわれています。
腸内フローラにも「お国柄」がある
日本人の腸内フローラと欧米やアジアの数か国の人の腸内フローラのデータを比較したところ、各国ごとに特徴的な腸内フローラが形成されていることがわかっています。日本人の腸内フローラは代謝機能など生体に有効な機能を持つ細菌が多く含まれており、このことが日本人の平均寿命の長さや肥満率の低さと関係があるのではないかと考えられています。
腸内フローラの特徴は、食生活や生活習慣ももちろん要因のひとつではありますが、それ以外の要因も大きく関与していると考え、さらなる研究が進められています。
ライフステージと腸内細菌
人の腸内フローラは加齢に伴ってバランスが変化していくことがわかっています。乳幼児から高齢者に向かって連続的な変化にいくつかのパターンがあり、加齢に伴って減少する菌群、反対に増加する菌群、成人にだけ多い菌群や、乳幼児と高齢者に多い菌群などが存在します。また健常高齢者では、70歳を超えると高齢者型の腸内フローラへ変化することが多いという研究結果があります。
乳幼児の腸内フローラ
赤ちゃんは胎内では無菌の環境で育ち、生まれて間もなくから皮膚や気道、消化器官などの粘膜で細菌が増殖を始めます。そのため、赤ちゃんの生まれて初めての便は通常無菌ですが、誕生の翌日にはほとんどの赤ちゃんの便には細菌が出現します。母乳(ミルク)を飲むことで細菌数は急激に増え、生後5日目ころからはビフィズス菌が最優勢となって安定します。
成人の腸内フローラ
赤ちゃんが離乳して離乳食を食べ始めると、大人の腸内フローラへと変化していきます。成人では10~20%をビフィズス菌が占めるようになります。
高齢者の腸内フローラ
高齢者では加齢とともに腸内の総菌数が減少し、ビフィズス菌では検出されない種類がみられるようになります。反対にウエルシュ菌などの悪玉菌が検出されるようになり菌数も増加します。
しかし健康な高齢者の中には、腸内細菌の菌種や菌数が若い世代と同等に維持されている人がいることも事実です。腸内フローラを若いころの状態で保つには、継続的な食生活と生活習慣が深くかかわっていると考えられ、健康長寿の要因の一つとして調査・研究がされています。
ビオフェルミン製薬のサイトにある「腸年齢チェック」です。簡単なチェック項目で気になる腸年齢がチェックできます。
https://www.biofermin.co.jp/nyusankin/selfcheck/cho/
全身の健康と腸内細菌
腸内の悪玉菌が生成する有害物質は、大腸に悪影響があるだけではなく、腸管壁から血流にのって全身に悪影響を及ぼすといわれます。このことから、腸内細菌とさまざまな病気の関連についての研究もされています。今後は病気の治療も、薬の治療に加えて腸からのアプローチが可能となるかもしれません。
なぜ腸内細菌が大腸に多いのか
腸内細菌の多くは酸素や胃酸、胆汁などが無い場所を好みます。胃には強い胃酸があるため細菌数は100~1000個/gほどです。続く小腸の十二指腸には胆汁があるため、腸内細菌の生息数はあまり増えません。小腸を進みながら細菌数は増えていきますが、空腸は流れが速いため増殖が難しく、大腸の手前の回腸に届くころに10万~1000万個/gほどに増えます。
大腸は消化管の最も奥で、酸素や胃酸、胆汁が行き届かないことから細菌の増殖が進み、1000億個/g以上が大腸に生息しています。
消化器官と腸内細菌の関係
良好な排便は腸内細菌のバランスを崩さないことで維持できます。善玉菌が優勢の時、腸内はやや酸性に傾いていて有害な細菌の生育が阻止されています。また悪玉菌も、お互いにバランスを保って共存していれば悪さはしません。特定の悪玉菌が増殖することで、便秘やげりなど排便にも悪影響を及ぼします。
大腸がんと腸内細菌に相関関係があることは明らかとなっています。がんの早期の段階から増加し始めて、病気の進行とともに増殖していく菌種や、がんの早期にのみ増加する菌種などがあることがわかっています。しかしこの腸内細菌の変化ががんの原因となっているのか、がんの結果として腸内細菌に変化が表れているのかは、まだはっきりわかっていません。
免疫と腸内細菌の関係
腸内細菌は食物繊維をエサとして短鎖脂肪酸を産出する菌種があります。免疫機能が低下したマウスに、酢酸・酪酸・プロピオン酸の3種類の短鎖脂肪酸を与えると、インフルエンザウイルスを排除する免疫反応が回復したという実験結果があります。
またマウスの試験では、クロストリジウム菌の働きが食物アレルゲンの血中への流入を抑制して、食物アレルゲンへの感作から保護していることが示されました。小児の食物アレルギーは、生後3か月ころまでに形成される腸内フローラが関与している可能性があるといわれています。
代謝と腸内細菌の関係
肥満の人とやせ型の人の腸内フローラを無菌のマウスにそれぞれ便移植し、同じ食事、同じ運動量で観察する実験が行われました。肥満の人の便移植をしたマウスは肥満になり、やせ型人の便移植をしたマウスは体重が変化しなかったという結果から、腸内細菌が肥満と密接に関係していることがわかります。
肥満や糖尿病との関りが深いといわれる腸内細菌のひとつに、アッカーマンシア ムシニフィラという善玉菌があります。アッカーマンシア ムシニフィラは成人の腸内細菌の1~4%を占めますが、肥満や血中コレステロール、空腹時血糖値が高い人では、正常な人よりも腸内のアッカーマンシア ムシニフィラが少ないとされています。
また糖尿病では腸内フローラのバランスが乱れやすく、本来腸内でのみ生息しているはずの腸内細菌が血液中で検出され、炎症を引き起こしている可能性についても研究されています。
肌と腸内細菌の関係
悪玉菌がたんぱく質を分解するときに有害物質を産生します。有害物質は大腸の毛細血管を通じて血液中に溶け込んで全身をめぐります。そのため肌では、ニキビや吹き出物ができたり、シミが沈着しやすくなったりします。
神経や脳と腸内細菌の関係
腸内細菌の中に、神経伝達物質であるγアミノ酸(GABA)を産生する菌があることがわかっています。この腸内細菌が少ない子供は、行動異常や自閉症のリスクが高いとされています。現在は自閉症の子供に対して腸内環境を整える治療も行われ始めています。
消化器官の疾患を持つ人に、不眠、頭痛、食欲不振などの精神神経症状を訴えるケースは多くみられます。消化器官の不調が精神面に影響しているのか、精神面の不調が消化器疾患を招いているのかは個々のケースで異なるともいえますが、脳腸相関ということは以前から知られている現象です。
副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRF)は、ストレスのある状況下で脳から腸へ送られるシグナルの役目があり、ストレスホルモンといわれています。このホルモンを起点として、ストレスに対応するためにさまざまな生体反応が起きます。CRFの作用を受けた腸管では腸の機能の変化だけではなく、腸内フローラにも変化が生じることがわかり始めています。
脳で受けたストレスが腸管に何らかのシグナルを送り、腸内フローラへ働きかけているようです。ラットの実験では、ストレスを受ける前に水溶性食物繊維を与えておくことで、腸の運動機能更新が抑えられることがわかっています。事前に腸内細菌のエサとなる水溶性食物繊維を摂っておくことで、腸内フローラのバランスが保たれたと考えらます。
幸福ホルモンといわれるセロトニンが脳内で正常に作用していると、人はポジティブな気持ちを維持し、健康で過ごせるとされています。セロトニンが不足すると怒りやネガティブな気持ちを抑制することが難しくなり、いわゆる「キレやすい」といわれる精神状態となるようです。このセロトニンは腸管内で作られており、セロトニンの生成には腸内フローラの関与が明らかとなっています。
まとめ
これまでは便を排出するための器官と考えられていた大腸ですが、実は腸内細菌が全身の健康に深く関与していることが明らかとなってきています。腸内環境は指紋のように一人一人異なるともいわれます。日々の生活スタイルを見直して、自分の腸内フローラを育てることを意識してみましょう。