こんにちは!配食のふれ愛のコラム担当です!
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年齢や性別にかかわらず、排便にまつわる症状は多くの人に経験があることではないでしょうか。便秘は自律神経やホルモンの影響も受けやすく、自分の意志ではコントロールが難しい部分もありますが、生活習慣の見直しによって改善や予防も期待できます。
つらい症状には薬をうまく利用しながら、便秘を予防できる生活を目指しましょう。
目次
便秘予防に欠かせない栄養
栄養をバランスよく摂ることは全身の健康に大切であり、もちろん便秘の予防にも必要です。穀類、肉・魚・豆類、野菜・果物類、きのこ・海藻類など、食品の種類を多く食べるように心がけることで、自然と栄養のバランスが良くなります。その中でも特に、便秘の予防に欠かせない栄養素を挙げます。
食物繊維
食物繊維は根菜類やきのこ類などに豊富に含まれますが、これらの食材は摂食嚥下機能に低下がある高齢者にとっては、食べにくい食材でもあります。安全に効率よく食物繊維を摂るために、いくつかの工夫があります。
1.野菜・きのこ・豆
葉物野菜や根菜は繊維を断ち切るように切りましょう。ゴボウやレンコンなどは繊維を断ち切る方向に切りながら、表面積は大きくして圧力鍋で加熱すると、やわらかく食べやすくなります。おでんの大根のように隠し包丁を入れるのも食べやすくする工夫のひとつです。
例えばゴボウを乱切りにして、繊維が長くなっている部分に隠し包丁を入れてから圧力鍋で加熱すると、義歯でも食べやすく調理できます。
きのこ類は残念ながら加熱してもやわらかくなりません。きのこ類は小さくみじん切りにして、肉団子やハンバーグ、ギョウザのたねなどに混ぜ込んでしまうと食べやすくなります。
豆類も食物繊維を豊富に含む食材ですが、豆の薄皮が硬く食べにくいことがあります。豆類を煮る場合は、薄皮を取り除くひと手間でとても食べやすくなります。また、あんこのようにつぶしてしまうのも食べやすくなる工夫のひとつです。
2.水溶性と不溶性
食物繊維には水に溶けるものと、溶けないものがあります。水溶性食物繊維は便中の水分に溶けて便の硬さを調整するのに役立ちます。不溶性食物繊維は水分を吸って膨らむことで便の量を増やし、腸を刺激します。
水溶性の食物繊維は海藻や果物に多く含まれ、不溶性の食物繊維は野菜や根菜、イモや穀類に多く含まれています。
食物繊維を便秘に効果的に摂るには、水溶性:不溶性=1:2の割合が理想的といわれています。
3.市販のレトルト食品や缶詰の利用
根菜や豆類が便秘に効果的だとわかってはいても、食べやすく調理をすることはなかなか手間のかかる仕事です。煮豆や根菜の煮物などは市販のレトルト食品や缶詰などで、とても食べやすく調理されている商品があります。スーパーなどでも手軽に購入することができるので、上手に取り入れてみましょう。
乳酸菌
腸内環境を整えることは便秘の改善にとても大切なことです。腸内細菌は善玉菌と悪玉菌、日和見菌に分けられます。腸内細菌の7割は日和見菌ですが、善玉菌と悪玉菌の勢力争いによって、日和見菌がどちらかの味方につくことで腸内細菌のバランスが変わってきます。
日本人の腸内に多く棲んでいる善玉菌のひとつがビフィズス菌です。生後数か月の赤ちゃんの腸内細菌は99%がビフィズス菌といわれます。それが成人する頃には10%前後しかいなくなっているという研究データもあるため、ビフィズス菌を補う工夫をしましょう。
ビフィズス菌にも多くの種類があり、人によって多く棲んでいるビフィズス菌の種類が異なるといわれています。ビフィズス菌というとヨーグルトが代表的な食品といえますが、市販のヨーグルトも種菌として使用されている菌種が異なります。食べてみて、自分に合ったヨーグルトをみつけましょう。
ぬか漬けやみそ、キムチ、納豆などにも乳酸菌が豊富に含まれます。発酵食品を少量でも毎日続けて摂ることは、腸内環境を整えるためにとても有効です。
オリゴ糖
オリゴ糖は腸内の善玉菌のエサとなります。エサがあることで善玉菌の増殖が活発になり、腸内環境を良化することが期待できます。オリゴ糖にもいくつかの種類があって、砂糖よりもカロリーが低いといわれているオリゴ糖もありますが、甘さを感じにくいオリゴ糖もあります。オリゴ糖を甘味料として使用する場合は摂りすぎに注意が必要です。
オリゴ糖は根菜、果物、野菜、豆など、広く食品にも含まれています。例えばヨーグルトにオリゴ糖を多く含むバナナときな粉を入れて一緒に食べることで、乳酸菌とそのエサとなるオリゴ糖を一緒に摂ることができます。
油分
動物性の脂に偏った食事は便秘の原因となることもありますが、良質の油を適量摂ることは、便秘の予防に必要なことです。オリーブオイルなどに含まれるオレイン酸には腸の蠕動運動を促進する働きがあるといわれています。
水分
特に高齢者は、子供と比較すると体内の水分量が少なく口渇も感じにくいため、意識的に水分を摂らないと常に脱水傾向にある可能性があります。トイレが近くなる、おむつから尿もれしてしまう、などの理由で水分摂取を控えるケースがありますが、便秘だけではなく全身状態に悪影響を及ぼす危険があります。
医師から水分摂取について指示がある場合を除き、高齢者の場合は食事に含まれる水分を除いて、1日1.5リットルから2リットルの水分摂取が必要といわれています。
便秘予防のための運動
高齢者では、排便のときにいきむための腹筋や背筋の筋力低下も便秘の要因となることがあります。現在よりも筋力落とさないことを目標に、無理のない範囲の運動を継続していきましょう。
歩く
排便のためには、強い筋肉トレーニングよりも副交感神経を刺激してリラックスできる運動が有効なことがあります。歩くことは、いつでも本人のペースでできる運動です。毎日できれば時間を決めて、20~30分程度の散歩から始めてみましょう。
腹式呼吸
腹式呼吸は横隔膜や骨盤底筋を動かし、腸に刺激を与えることができます。
1.座った姿勢の腹式呼吸
いすに深く腰かけます。背骨をまっすぐに伸ばし、腰(股関節)、膝、足首を直角に曲げて、足底を床に接地します。下腹部(おへその下あたり)に両手をあてて、下腹部を膨らませるように深く息を吸います。そのとき、上半身は少し後ろにそらせるような気持ちで下腹部まで息を深く吸い込みましょう。
息をいっぱいに吸い込んだら、唇をすぼませて息を細くゆっくり吐きます。今度は下腹部をへこませながら、背中を丸めるようにして吸った空気を吐ききります。
これを、無理のない範囲で5~10回繰り返します。最後は深呼吸をして息を整えましょう。
2.横になった姿勢の腹式呼吸
仰向けに横になって下腹部に両手をあてます。座った姿勢の腹式呼吸と同じように、下腹部を膨らませながら深く息を吸い込みます。息をいっぱいに吸い込んだら、唇をすぼませて息を細くゆっくり吐きます。今度は下腹部をへこませながら、吸った空気を吐ききります。
これを無理のない範囲で5~10回繰り返します。最後は深呼吸をして息を整えましょう。
腹部マッサージ
おへそから指2本分くらい離れた場所を、親指で押しながら1周します。おへその下からスタートし、気持がいい程度の力でゆっくりと押して、ゆっくりと戻します。少しずつ場所をずらしながらおへその周りを1周します。
次に、手をおへその下にあてて、おへその周りを「の」の字を描くように時計回りに撫でます。この時に、左の腰骨の出っ張ったところから少し内側の下、S状結腸付近を手のひらの付け根か、人差し指・中指・薬指の3本でゆっくりと押すようにします。
座っていても横になっていてもできますが、介助者がマッサージするときは、強く押しすぎないように、力加減に注意して行いましょう。
排便を促す生活習慣
規則的な生活をすることで排便の習慣が整いやすくなります。また季節を問わず、腹部は冷やさないように注意しましょう。冷たいものの食べ過ぎには注意し、衣類などで外から保温しておくことも大切です。
規則的な食事と朝食
食事はできるだけ3食を決まった時間に摂るようにしましょう。間食をする場合もだらだらと食べるのではなく、決まった時間に摂る方が好ましいといえます。特に朝食は欠かさず摂りましょう。朝食を摂ることで腸が活発に動き出し、排便を促します。夜は寝る2時間前までに食事は済ませ、寝る直前に食べることは控えましょう。
排便習慣
朝食を摂ったら、便意は無くてもトイレに座ってみましょう。トイレに座ったときに腹部のマッサージを習慣にするのもよいでしょう。
睡眠
良い睡眠を摂ることで自律神経のバランスが整い、便秘にも良い影響が期待できます。できるだけ就寝時間と起床時間を規則的にし、早寝早起きを心がけましょう。睡眠中に自律神経の副交感神経が優位に働くことで、起床後の腸の蠕動運動が活発になります。
市販の便秘薬コーラックのホームページです。睡眠と便秘についてわかりやすく説明されていますので、ご参考ください。
https://brand.taisho.co.jp/colac/topics/topics07.html
便秘薬
便秘薬はその成分によって、作用に違いがあります。便秘の原因に合った薬を正しい方法で使用することで、便秘のつらい症状を改善することができます。最近は市販の便秘薬も種類が増えていて手軽に購入できます。便秘の原因と状態に応じて上手に利用しましょう。
便秘の薬(下剤)の種類と特徴
薬剤の効き方と特徴を理解して、上手に使い分けましょう。
1.塩類下剤(成分:酸化マグネシウム、クエン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム)
薬の成分の浸透圧が高いことを利用して腸からの水分吸収を抑え、腸の中に水分を多く保つことができます。薬と一緒に水分を多めに摂ることで効果が発揮されます。
習慣性がないので、高齢者の弛緩性便秘には最初に使用されることが多い薬ですが、稀に薬の成分が蓄積して高マグネシウム血症を起こすことがあるため注意が必要です。
2.膨張性下剤(成分:カルボキシメチセルロース)
薬の成分が水分を含んで膨らむことで便量と便の硬さを調節します。薬と一緒に水分を多めに摂ることで効果が発揮されます。胃の中でも水分を吸って膨らむため、胃がもたれる感じや食欲が低下することがあります。
習慣性がなく効き目が穏やかであるため、高齢者の弛緩性便秘に使用しやすい薬です。腸にポリープや狭窄がある場合は、便が詰まって腸閉そくを起こす可能性があるため注意が必要です。
3.浸潤性下剤(成分:ジオクチルソジウムスルホサクシネート)
界面活性作用によって便の中に水分を浸み込ませて便をやわらかくします。薬と一緒に水分を多めに摂ることで効果が発揮されます。効き目が穏やかなので他の薬と一緒に配合されたり、併用することの多い薬です。
4.大腸刺激性下剤
腸の粘膜を刺激し、蠕動運動を活発にして排便を促します。塩類下剤だけでは効果が低いときに併用することもあります。習慣性があり、長期間の服用によって大腸メラノーシス(大腸黒皮症)を起こすことがあるため注意が必要です。
・アントラキノン系誘導体(成分:ダイオウ、センノシド)
古くから便秘の治療に使われている生薬です。習慣性があり、連用すると薬の量が増えていく傾向があります。市販の便秘薬に多い種類です。
・ジフェニール系誘導体(成分:ピコスルファートナトリウム)
腸内細菌が作るジフェニルメタンという物質で大腸粘膜を刺激します。他の便秘薬と併用することも多く、薬の量で作用の強さが調節しやすいため、高齢者にも広く使用されます。
その他の便秘の薬
・坐薬(成分:ビサコジル、炭酸水素ナトリウム・無水リン酸二水素ナトリウム)
肛門から挿入し、直腸を直接刺激したり、直腸内で炭酸ガスが発生して、腸の蠕動運動を活性化することで排便を促します。即効性があり数分から30分で効果があらわれますが、習慣性があるため他の便秘薬で改善できないケースに使用が限られます。
・浣腸(成分:グリセリン)
肛門から挿入する薬です。一般的な浣腸はグリセリン浣腸で、精製水とグリセリンが半量ずつ含まれています。グリセリンは主に油脂を加水分解して得られるアルコールの1種で、他の医薬品や化粧品にも含まれています。腸壁からの粘液と水分の排泄を促し、腸の蠕動運動を促進します。
またグリセリンの粘滑性によって排便が容易になります。最も強い働きの便秘薬であり、習慣性もあるため、限られた条件での使用となります。高齢者への使用には注意が必要な便秘薬です。
・漢方薬
便秘に効く漢方薬は何種類かあります。大建中湯、大黄甘草湯、麻子仁丸などは一般的な便秘に効く漢方薬ですが、作用の仕方はそれぞれ異なるため、その症状によって使い分けが必要です。
また便秘以外の漢方薬の中にも、緩下作用のある生薬が含まれていることがあります。消化器官に直接作用するだけでなく、全身のバランスを整える効果が期待できるため、高齢者や虚弱体質の人にも使いやすい薬といえます。
一般的な便秘薬の分類
一般名 | 商品名 | 作用時間 | 注意事項 |
酸化マグネシウム クエン酸マグネシウム 硫酸マグネシウム | カマ マグコロール | 8~10時間 | |
カルボキシメチセルロース | バルコーゼ | 12~24時間 | 尿に色が着くことがあります |
センノシド | プルセニド アローゼン | 8~10時間 | 尿に色が着くことがあります |
ダイオウ | 8~10時間 | ||
ピコスルファートナトリウム | ラキソベロン | 7~12時間 | 水分を多めに飲みましょう |
大建中湯 大黄 麻子仁 | 大建中湯 大黄甘草湯 麻子仁丸 | 8~12時間 | |
炭酸水素ナトリウム ビサコジル | レシカルボン坐薬 テレミンソフト坐薬 | 20分~2時間 5~60分 | |
グリセリン | 50%グリセリン浣腸 | 即時 | 高齢者は注意が必要です |
まとめ
便秘も予防が第一です。便秘の要因はひとつとは限らないので、生活習慣の全般を見直して快適な排便習慣を整えましょう。それでも便秘になってしまった時には、薬も上手に使用しましょう。ただし気になる症状がある場合は、医療機関の受診をおすすめします。