こんにちは!配食のふれ愛のコラム担当です!
栄養バランスのよい食事をとりたい方へ、お弁当の無料試食はこちらから!
「サルコペニア」「フレイル」という言葉は、まだ聞き慣れない人も多いかもしれません。サルコペニアとフレイルはこれからの超高齢化社会に向けて、高齢者の健康維持・増進を考えるうえで大切な概念のひとつです。
目次
サルコペニアとは
サルコペニアとはSarx(筋肉)とPenia(減少)というギリシャ語を組み合わせて作った言葉で、1989年ごろにアメリカで提唱された比較的新しい概念です。
サルコペニアの定義
サルコペニアとは、「進行性で全身性に認める筋肉量の減少と筋力低下であり、身体機能障害やQOL(生活の質)の低下、死のリスクを伴う」と定義されています。具体的には握力や下肢筋力、体幹の筋力など全身の筋力低下が起こることで、歩くスピードが遅くなったり、杖や手すりなどの支えが必要になるなどの、身体機能の低下が起こることを指します。
以前は「加齢による筋肉量の減少」として使われていた言葉ですが、現在はもっと広い意味でとらえられており、加齢以外の原因による筋肉量の減少や筋力低下、および身体機能の低下にも使われています。
サルコペニアの分類
サルコペニアは大きく2つの原因に分けて考えられています。原因が加齢のみの場合を「一次性サルコペニア」、その他の原因の場合を「二次性サルコペニア」と呼びます。加齢以外の原因で起こる二次性サルコペニアはさらに、活動に関連するもの、栄養に関連するもの、疾患に関連するものに分けられ、サルコペニアの原因は4種類と考えることができます。
二次性サルコペニアの具体的な例として、活動に関連するものでは怪我や寝たきり、不活発な生活習慣などの活動量低下による筋肉量の減少があります。栄養に関係するものは、疾患や薬剤の副作用などによる食欲不振や、吸収不良によってエネルギーやたんぱく質の摂取不足による低栄養によって引き起こされます。
疾患に関連するものは感染症や臓器不全、炎症性の疾患、リウマチや膠原病などの免疫疾患、がんや内分泌疾患など、さまざまな疾患によって引き起こされます。
大分類 | 小分類 | 原因 | |
一次性サルコペニア | 加齢性サルコペニア | 加齢の影響のみで他に明らかな原因はない | |
二次性サルコペニア | 活動に関連するサルコペニア | 寝たきり、活動量の少ない生活習慣、無重力 | |
栄養に関連するサルコペニア | エネルギーやたんぱく質の摂取量の不足など | ||
疾患に関連するサルコペニア” | 侵襲 | 急性疾患、炎症(手術・外傷・熱傷・急性感染症など) | |
悪液質 | 慢性疾患、炎症(がん・慢性心不全・慢性呼吸不全・慢性肝不全・膠原病・慢性感染症など) | ||
原疾患 | 筋委縮性側索硬化症・多発性筋炎・甲状腺機能亢進症など |
例えば、摂食嚥下に関係する筋肉に加齢性サルコペニアを認めると、サルコペニア性の摂食嚥下障害を生じることがあります。それによって、栄養による二次性サルコペニアや誤嚥性肺炎によって疾患によるサルコペニアなどを合併するという状況が起こり得ます。
サルコペニア診断の基準
サルコペニアの診断基準は、世界的な統一はされていませんが、日本ではアジアのワーキンググループであるAWGSの診断基準を参考に用いることが推奨されています。
<AWGSによる診断基準>
四肢骨格筋量 | 身体機能(歩行速度) | 筋力(握力) |
DXA法又 男性:7Kg/㎡、女性:5.4Kg/㎡ BIA法 男性:7Kg/㎡、女性:5.7Kg/㎡ | 0.8m/s以下 | 男性:26Kg以上 女性:18Kg以上 |
・DXA法:二重エネルギーX線吸収測定法。X線照射による測定法で正確性が高い。
・BIA法:生体電気インピーダンス法。体に微弱な電流を流し電気抵抗で測定する。
上記の診断基準の判定には筋肉量の測定が必要となりますが、もっと簡単にチェックするための簡易基準案を国立長寿医療センターが作成しています。この簡易基準では身長計、体重計、握力計、メジャー、ストップウォッチがあれば測定可能であり、比較的簡単にサルコペニアの診断とリスク判定ができます。
日本人にあったサルコペニアの簡易基準案
簡易基準は以下の通りです。
① 65歳以上である。
② 普通歩行の速度が1m/s未満、もしくは握力が男性で25Kg未満、女性で20Kg未満である。
③ BMI(体格指数)が18.5未満、もしくは下腿囲30センチ未満である。
これらの条件にすべてあてはまると、サルコペニアである可能性が高いと考えられます。
②の具体的な目安として、歩行速度1m/sというのは、横断歩道を青信号のうちに渡り切ることができる速さといわれています。また握力は、ペットボトルやビンの蓋が開けにくくなると要注意と考えられます。
③のBMI(体格指数)の計算式は次のとおりです。身長と体重を用いて簡単に計算できます。
BMI(体格指数) = 体重(㎏)÷ 身長(m)× 身長(m)
サルコペニアのメカニズム
サルコペニアは若い人でも起こる可能性はあります。しかし若い人の場合は、病気や怪我などによって活動量や食事量が減少し、一時的に筋肉量が低下したとしても、体調の回復とともに活動量を増やし元の生活に戻ることができます。
しかし高齢者の場合は、活動や疾患、栄養に関わる何か一つのきっかけによっても、身体機能・精神機能に悪影響を及ぼし、日常生活に変化をきたすことがあります。身体機能や精神機能に低下がみられた場合、悪化のスピードは速く元の状態には戻りにくいのが、高齢者の特徴といえます。
どうしてサルコペニアが起きるのか
サルコペニアの原因は明確に特定できないことも多くあります。特に高齢者では、加齢による影響や体質、生活環境や習慣、疾患などの複数の要因が重なってサルコペニアが起こっていることが多く、要因が多いほどサルコペニアの改善が困難になるといえます
サルコペニアのメカニズム
筋肉の量は筋たんぱくの合成と分解の繰り返しによって維持されています。筋たんぱくの分解が合成量を上回ったときに筋肉量は減少します。
人は30歳を過ぎると、筋肉の合成に関わるホルモンは減少を始めるといいます。また筋肉を動かすための細胞の死滅や、細胞内のミトコンドリアの機能障害、さらに栄養不良や消耗性の疾患による筋委縮(カヘキシア)などが加わることで、サルコペニアの発症へとつながります。
サルコペニアのケア
サルコペニアを予防・改善するためには、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。基本はバランスのよい食事と運動の習慣です。バランスのよい食事を摂るためには、食べるための口腔機能を保つことが必要です。また、サルコペニアでみられる下肢筋力の低下は、転倒・骨折の要因となり、高齢者が要介護状態となるリスクを高めます。
口腔機能の維持と改善
口腔内を清潔に保ち、むし歯や歯周病などのトラブルや義歯の不具合などがある場合は、速やかに治療をしましょう。噛む機能を維持して何でもおいしく食べられることは、サルコペニアの要因となる低栄養を予防するためにとても大切です。まずは次の二つのことを習慣にしましょう。
1.丁寧な口腔ケア
毎日の丁寧な歯みがきと、義歯のお手入れは口腔ケアの基本です。プロのスポーツ選手の中には、1日に5回以上歯みがきをしている選手が少なくありません。口腔内を清潔に保ち、何でもよく噛んで食べられることは、健康で強い身体を作るうえでとても重要なことなのです。
さらに定期的な歯科検診で口腔内のトラブルを未然に防ぎ、歯科衛生士によるプロの口腔ケアを受けることは、口腔機能を維持・向上するためにとても有効です。
2.会話をする・歌を歌う
話すことや歌うことに使う筋肉は、食べるために使う筋肉と同じです。会話をすることや大きな声で歌を歌うことで、食べるために使う筋肉や飲み込むために使う筋肉を動かすことができます。また人と会話をし、交流することで社会とのつながりを持ち、活動的な生活を保つことができます。
下肢筋力の維持と改善、そして向上
加齢によって、歩くために必要な筋肉が衰えると、日常生活に支障をきたすことがあります。太ももの前側にある大腿四頭筋やお尻にある大臀筋などは歩行するために重要な筋肉なので、日常的に無理のない範囲で運動を継続していくことが大切です。初めからがんばり過ぎると、思わぬ怪我や痛みが生じることがあります。
持病や関節痛などがある場合は、あらかじめかかりつけの医師に相談してから運動を始めるようしましょう、
人工関節の広場という、人工関節とその治療について紹介しているサイトです。下半身の筋力トレーニングについてわかりやすく紹介されています。ご参考ください。
http://www.hiroba-j.jp/cure/training/
サルコペニアの治療
実際にサルコペニアと診断された場合には、どのような治療が必要なのでしょうか。治療の内容は大きく運動療法・栄養療法・薬物療法の3つに分けられます。3つを並行して実施できることが望ましいですが、サルコペニアの原因や身体の状態によって、中心となる治療方法が変わります。
運動療法
一次性サルコペニアに対してはレジスタンストレーニングが有効といわれています。レジスタンストレーニングとは、筋肉に一定の負荷をかける運動のことです。一般的に「筋トレ」と呼ばれる運動がレジスタンストレーニングともいえます。レジスタンストレーニングは筋肉量だけではなく、筋力と身体機能の改善にも効果があります。
しかし、適切で正しい負荷をかけた運動を行わないと、腱や関節を痛める可能性があります。医師や理学療法士、健康運動指導士など専門家の指導を受けて、無理のない範囲で実施するようにしましょう。
二次性サルコペニアの場合は、その原因や身体の状態によって運動療法が不可な場合もあります。医師の指示に従いましょう。
栄養療法
一次性サルコペニアの場合、骨格筋量、筋力、身体機能は、たんぱく質の摂取量と深い関係があります。高齢者の場合、若い人と比べるとたんぱく質を合成して筋肉を作る働きが低いため、毎食25~30g以上のたんぱく質を摂る必要があります。
たんぱく質25~30gとは、だいたい卵2~2.5個分に相当します。朝・昼・夕食に、肉や魚、卵・豆・乳製品のどれかを必ず食べるように心がければ、充足することはそれほど難しいことではありません。
しかし好き嫌いが多かったり、歯が悪くて肉がよく噛めなかったりすることで、たんぱく質を十分に摂取することが難しくなってきます。慢性疾患などによって、エネルギーやたんぱく質の摂取に制限がある場合は、かかりつけの医師や管理栄養士に相談するようにしましょう。
二次性サルコペニアの場合は、実施される運動療法の内容と、一人一人についての栄養状態の評価が必要であるため、医師や管理栄養士の指導を受けるようにしましょう。
薬物療法
サルコペニアに対する薬物療法は、まだ一般的に行われているものではありませんが、いろいろな研究が進んでいます。
たんぱく質の合成には、ロイシンという必須アミノ酸を補給することが効果的と言われていますし、たんぱく質の合成を促進するホルモンは加齢によって減少することがわかっているため、テストステロンや成長ホルモンの補充療法も研究が進んでいます。
フレイルとは
フレイルという言葉はサルコペニアと関連して使われる概念のひとつです。
欧米で使われているフレイルティ(Frailty)の日本語訳として、「虚弱」「衰弱」の言葉が使用されていましたがネガティブな印象が強く、フレイルティの意味を正確に表せていないという考えから、より日本人になじみやすい概念として「フレイル」という言葉が使われることとなりました。
フレイルの概念
フレイルは、自立した生活を過ごしている高齢者と要介護状態の高齢者の中間を指しています。疾病や転倒・骨折などによって要介護状態になる可能性もあれば、適切な介入によって自立した生活に戻ることもできるといった、可逆的な状態のことです。
フレイルの定義と診断基準
フレイルの定義として1.体重減少、2.疲労感、3.活動量の低下、4.歩行速度の低下、5.筋力(握力)の低下、の5項目のうち3個以上に当てはまるとフレイル、1~2個当てはまる場合をプレフレイル(フレイルの前段階)と考えます。
フレイルの予防は身体機能だけではない
フレイルを予防するときに忘れてはならないのは、フレイルの引き金となる要因は身体的なものだけではなく、社会的フレイルや精神的・心理的フレイルが大きく影響を及ぼすということです。
具体的には、地域社会との関りがなくなる社会的孤立や認知症・老人性うつ病などが、もともとの要因となっている可能性を見逃さないようにしなければなりません。
まとめ
超高齢化社会に向けて高齢者の健康維持・向上についてさまざまな研究が進み、新しい用語や概念が多く登場しています。しかし基本となる事は同じで、バランスの良い食事をおいしく食べて、活動的な生活を送ることといえます。