こんにちは!配食のふれ愛のコラム担当です!
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いつもの口腔ケアに加えればさらに効果的な、覚えておくと役に立つ口腔ケアのコツと機能的口腔ケアについて紹介します。
口腔ケアのプラスワン知識
口腔ケアの目的と効果について
口腔内の疾患予防 | むし歯、歯周病、口臭、口腔内の乾燥、舌苔口内炎、口腔内細菌感染症、誤嚥性肺炎 |
口腔機能の維持・向上、改善 | 味覚の良化、口腔内の創傷の改善促進 |
摂食嚥下機能の維持・向上、改善 | だ液分泌促進、食欲増進 |
生活の質(QOL)の向上 | 義歯の安定、会話の活性、表情の活性 |
口腔ケアは口の中を清潔に保つことはもちろん、幅広い効果を発揮します。その効果は上記の表に示したように、生活の全般に及びます。自分で口腔ケアが難しく介助が必要な場合でも、適切な口腔ケア用品を活用して毎日行いましょう。
いつもの口腔ケアをより気持ちよく安全に行うために、知っておきたいことについて説明します。
ブクブクうがい
口に水を含んで頬を動かすブクブクうがいは、口腔内の汚れを吐き出すことができるだけではなく、口腔内の乾燥を防止するためにとても有効で、頬の筋肉のトレーニングにもなります。ただし嚥下機能に低下があり誤嚥の可能性が高い場合は、誤嚥性肺炎のリスクが高いため、無理をせず水を使わない方法を考えましょう。
ブクブクうがいをするためには次のことができなくてはなりません。
1.唇をしっかり閉じることができる。
2.頬を動かすことができる。
3.鼻呼吸ができる。
4.口を開けて水を吐き出せる。
これらのうちひとつでもできない場合は、水を使わない方法の口腔ケアを検討しましょう。
開口保持
口に中に物が入ることで、反射的に強く噛んでしまうことがあります。口腔ケアの途中で口が閉じてしまうと、十分なケアができなくなってしまいます。一定時間口を開けていることが困難な場合は「オーラルバイト」と呼ばれる器具を噛んでいただくことで、ある程度の広さの開口が確保されます。
オーラルバイトは手作りすることができます。 割り箸を割らずに、半分の長さに切ります。半分に切ったものを、まとめて一緒に清潔なガーゼで包みます。適当な太さになるまでガーゼを何重にも包んで完成です。これを噛んでいただくことで一定の開口が維持されます。
オーラルバイトを手作りするときは、口唇周辺や歯、歯ぐきを傷つけないように、素材や形、大きさには十分な配慮をしましょう。また洗浄や乾燥など、十分に清潔を保てるようにしましょう。
片麻痺の人、座位がとれない人の口腔ケアに必要な配慮
片麻痺がある場合は、麻痺側の口腔内に汚れがたまりやすくなります。自分で口腔ケアを行う場合も、麻痺側は介助者がお手伝いをしましょう。座ることができる場合は、食事姿勢と同様にあごを引いていすに深く腰かけ、腰(股関節)、膝、足首をできるだけ直角になるようにして足底を接地します。麻痺がある場合は体を安定して保つのが難しいため、クッションなどで支えましょう。
座ることができない場合は横になったまま口腔ケアを行います。側臥位(横向きに寝る)の姿勢で行いますが、可能であれば顔だけではなく体ごとしっかり横を向いていただきます。上になる足の膝を曲げて、体の前にくるように乗せると側臥位の姿勢が安定します。体の状態に合わせて、クッションなどで体を支えましょう。
座位はとれなくても麻痺などがなく、自分で口腔ケアができる場合は、利き手が上になるように横向きに寝ます。 片麻痺はあるけれど自分で口腔ケアができる場合は、麻痺側を下にして、健側の手で歯ブラシなどを持っていただきます。 片麻痺があって、介助者が口腔ケアを行う場合は、麻痺側を上にして口腔ケアを行います。
どのような状態でも、誤嚥を防ぐことは大切です。無理せず、水を使わない方法も併用して考えましょう。
フロス、歯間ブラシ
歯ブラシの毛先が届かない歯と歯の間やすき間には、歯間ブラシやデンタルフロスを使うときれいに汚れを落とすことができます。特に高齢者は歯ぐきが下がり、歯と歯のすき間が目立つようになってきます。このような部分は歯ブラシだけでは汚れが落ちにくく、むし歯になりやすい部分です。また歯が抜けている部分も、同じように歯ブラシが届きにくく、汚れが落としにくい場所です。
・歯間ブラシ
歯間ブラシは、歯と歯の間の比較的広いすき間の汚れを取るブラシです。金属のワイヤーにナイロンの毛が付けられているタイプや毛先がシリコンゴムの製品などがあります。本体の形も持ち手から毛先までまっすぐなI字型や毛先部分に角度のついているL字型があります。
ブラシの太さにはいくつかのサイズがあるので歯間のすき間の広さにあったものを選んで使いましょう。目安は、抵抗なくすき間に入り前後に動かせる太さです。細めの物から始めてみるとよいでしょう。
歯間ブラシは歯ぐきを傷つけないようにゆっくりとすき間に入れて、数回往復させます。奥歯は、歯の外側と内側の両方から歯間ブラシを入れるようにすると、汚れをきれいに落とせます。
歯間ブラシは使い捨ての物とそうでないものがあります。使い捨てではないタイプの歯間ブラシは、歯ブラシと同じように使用後はよく水洗いして乾かしておきます。毛先がバラバラになって痛んできたら交換しましょう。
・デンタルフロス
糸巻タイプと持ち手のついたホルダータイプがあります。ホルダータイプは持ち手を持って、歯の上面から前後に動かしながらゆっくりと歯と歯の間を通していきます。歯の表面に添わせるようにして前後に動かしながら上下させます。
糸巻タイプは40~50センチに切って、両手の中指に数回巻き付けて持ちます。糸が張った状態を保ちながら歯の上面から歯間に通します。歯の表面に添わせるようにして、前後に動かしながらゆっくりと入れましょう。デンタルフロスを少しずつずらしながら、きれいな部分を使って次の歯間に入れます。デンタルフロスは使い捨てです。
どちらも歯の状態に合わせて正しく使用すれば、とても有効な口腔ケアができますが、口腔内や歯の状態によっては使い方が難しい場合もあります。かかりつけの歯科医師に相談し、使い方を指導してもらうとよいでしょう。
義歯安定剤
義歯が粘膜に密着するには、口の中がだ液で適度に湿っていることが必要です。そのため口腔内が乾燥している場合などに、義歯をずれずに安定させる目的で使用します。義歯安定剤は義歯の土台部分の義歯床の内側に塗ることで、歯ぐきや上あごの密着性を高めます。クリーム状、パウダー状などの種類があり、使い方もそれぞれ異なります。
クリーム状の安定剤は、洗浄後の義歯の水分を拭き取り、歯ぐきや上あごに接する部分に薄く塗ります。つけすぎると歯を噛みしめた時に横からはみ出てくることがあるので、初めは少しずつ使用しましょう。口に入れたら安定するまでしばらく押さえていましょう。
パウダー状の安定剤は義歯を洗浄後、少し濡れた状態のところで歯ぐきや上あごに接する部分に振りかけます。余分な粉は振り落とし、口に入れたら安定するまでしばらく押さえていましょう。
義歯の使用感が悪い場合は、義歯安定剤を使用する前に歯科医師に相談をしましょう。義歯安定剤を使用するのは一時的なものと考えて、歯科医師のアドバイスを受けましょう。
口腔内にトラブルがあるときのケア
口腔内にトラブルがあるときはできるだけ早く歯科受診をしましょう。毎日の歯みがきはトラブルの種類に応じて、できる範囲で行います。
出血するとき
歯ぐきからの出血は、歯ぐきが炎症を起こしていることが原因のひとつです。歯と歯の間や歯と歯ぐきの境目などにたまった汚れには多くの細菌が潜んでいます。これらの細菌によって歯ぐきの炎症が引き起こされます。ケアを続けて歯ぐきの健康が保てれば、出血は減少すると考えられます。
多くの歯科医師は「少量の出血であれば気にせず歯みがきをしましょう」とアドバイスします。
ただし出血部位はやさしくケアし、強い痛みや多量の出血がある場合は、早期に歯科受診をしましょう。抗血栓薬と呼ばれる血液をサラサラにする薬を服用している場合は、出血が止まりにくいことがあるため、かかりつけの医師、歯科医師に相談してください。
グラグラする歯があるとき
グラグラしている歯は、歯周病が進行している可能性があります。早期に受診することをお勧めします。動きが大きい場合は歯ブラシを持っていない方の指をあてて、動かないように支えて磨くと、痛みも少なく磨きやすくなります。痛みが強かったり、歯ぐきの腫れがひどい、出血が多いなどの場合は、無理せず歯科医師の指示に従いましょう。
ブクブクうがいができる場合は、洗口液などを使用してブクブクうがいをすることも効果的です。
舌苔のケア
舌苔とは舌に付く汚れのことです。食べかすやだ液の成分、口腔内の細菌などが汚れの素となっています。十分なだ液の分泌があり舌の運動が活発であれば、適度な摩擦が生じ、粘膜の表面は新陳代謝によって健康な状態を保つことができます。
健康な舌の表面はピンク色ですが、誰でも疲れていたり、口腔ケアが不十分な時には舌が白っぽくなることがあります。それが舌苔です。 舌苔には細菌も多く含まれているため、抵抗力の低下している高齢者の場合、誤嚥性肺炎のリスクが高くなります。
舌苔のケア方法は、ブクブクうがいができる場合、ぬるま湯で数回うがいをしていただくか、保湿剤を多めに塗って舌苔をふやかします。舌苔がやわらかくなったら舌ブラシか、口腔ケアウエットティッシュを巻いた指で、舌苔を少しづつ拭き取るイメージで舌の奥から手前にかき出すように動かします。
嘔吐反射が強い場合は奥の方は無理せず、大丈夫な範囲をケアしましょう。1回の口腔ケアで取り除こうとせず、保湿をしながら、数回または数日かけて汚れを拭き取りましょう。
乾燥と痂皮のケア
乾燥がひどくなると痛みを伴うことがあります。汚れが粘膜にこびりつき硬くなってしまうと、スポンジや指で触れても痛みがあり、口腔ケアが難しくなってしまいます。こびりついた汚れをはがそうとすると出血することがあるため、汚れがこびりついている場合は、初めに保湿することで汚れをやわらかくすることから始めましょう。
ブクブクうがいができる場合はぬるま湯で数回うがいをしていただき、十分に口の中が湿ってから口腔ケア用ウエットティッシュでやさしく拭き取ります。ブクブクうがいができないときは、汚れがこびりついている部分に少し多めの保湿剤を塗ります。汚れがふやけてから口腔ケア用ウエットティッシュでやさしく拭き取ります。
1回の口腔ケアで取り除こうとせず、保湿をしながら数回または数日かけて汚れを拭き取りましょう。汚れが取り除けた後も保湿剤のケアは継続し、口腔内の乾燥を防ぎましょう。だ液腺マッサージなどでだ液の分泌を促す方法も有効です。
専門的クリーニング
口腔内の状態はひとりひとり異なり、全身状態によっても口腔ケアが難しいケースがあります。リスクが高いと感じたときは、無理せず歯科医師に相談しましょう。口腔ケアのプロフェッショナルである、歯科衛生士による専門クリーニングを受けることも方法のひとつです。
歯科診療所に行くことが困難な場合は、訪問診療をしてくれる歯科医師もいます。かかりつけの医師や担当のケアマネージャー、市区町村の担当窓口、都道府県歯科医師会などに問い合わせをしてみましょう。
口腔機能訓練
口腔機能訓練は機能的口腔ケアにあたります。毎日繰り返すことで、摂食嚥下機能の維持・向上や誤嚥防止だけではなく、発語がはっきりする、顔が引きしまるなどのも期待できます。
嚥下体操
食前に首、口唇周辺、舌、のどなどを動かすことで、摂食嚥下に必要な機能の準備運動ができます。ゆっくり、ひとつひとつの動きを意識しながら行いましょう。近畿大学のウェブ講座で紹介されている動画を紹介します。ぜひ一緒にやってみましょう。
「近大ウェブ公開講座2016」
https://www.youtube.com/watch?v=YtZCeRL1nS8
パタカラ体操
パタカラ体操は、食べるために使う口腔周辺の筋肉をほぐし鍛える体操です。
・「パ」:唇を閉じる 「パ」は破裂音といい、発音の前に一度唇をしっかりと閉じることが必要です。食事の時にも、唇をしっかり閉じることはとても大切な動きです。
・「タ」:舌を上あごにつける 「タ」を発音するときには、舌の先を上あご(上の前歯の裏付近)につけます。これは、口に入れた食べ物をしっかり噛んだ後、のどの奥に送り込み、飲み込むときに必要な舌の動きです。
・「カ」:のどの奥に力を入れる 「カ」を発音するときは、のどの奥に力を入れてのどを閉めています。食べ物を飲み込んで食道へ送るほんの一瞬は、気道に蓋がされて呼吸が止まります。この時ののどの運動に必要な筋肉が鍛えられます。
・「ラ」:舌を丸める 「ラ」を発音するとき、舌の先を丸めて上あごをなぞるような動きをします。噛む・飲み込む全ての過程に必要な舌の動きを鍛えます。
食事の前に、「パ・タ・カ・ラ」をゆっくり大きな声で5回繰り返します。次に「パパパパパ・タタタタタ・カカカカカ・ラララララ」と5回繰り返します。大きな声で発音することで、腹筋や呼吸の機能も鍛えられます。
摂食嚥下機能の維持・向上だけではなく、いびきや歯ぎしりの改善や口呼吸から鼻呼吸への改善、義歯が安定する、顔の筋肉が引きしまる、などの効果も期待できます。嚥下体操と組み合わせて行いましょう。
だ液腺マッサージ
だ液の分泌を促すマッサージです。だ液腺を刺激すると、口の中にじわっとだ液がでてくるのを感じられます。
・耳下腺
耳の前に親指以外の指(4本)をあてて、前方に向かって大きく円を描くように手を動かします。指は強く押さなくても大丈夫です。優しくあてて、大きくゆっくり動かしましょう。
・顎下腺
下あごの骨に沿って、奥歯の方からあごに向かい、数か所を親指で下から押し上げながら進みます。軽い力で痛くない程度に優しく押しましょう。
・舌下腺
下あごの先端、骨の内側を親指2本で下から押し上げます。軽い力で痛くない程度に優しく押しましょう。
まとめ
口腔ケアは日々の継続が大切です。若いうちから、正しい口腔ケアを習慣にしましょう。 心身に機能低下がある高齢者の方の口腔ケアは、困難なケースも多くあります。無理せず、歯科医師、歯科衛生士の専門クリーニングを受けることも、ぜひ活用しましょう。