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認知症にも!?嗅覚障害とは?原因や治療法などを解説!

作成日:2020年5月13日

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認知症にも!?嗅覚障害とは?原因や治療法などを解説!

嗅覚は脳の記憶や感情を司る部位を直接刺激する感覚であり、嗅覚が衰えるとやる気を失ったり、筋力が低下したりと様々な影響を及ぼします。また、嗅覚は味覚とも密接に関係しているため、においが分からないと味も分からず、食べ物を美味しく感じません。ここでは、嗅覚障害の原因や、治療法、嗅覚障害を予防するための生活習慣などについて解説します!

嗅覚障害とは?

嗅覚障害とは、においの感じ方が変わったり、においそのものを感じなくなったりする状態のことです。人間の嗅覚は、腐敗した食べ物を誤って口にしないようにしたり、煙やガスなどといった異常事態を素早く察知するために働いています。また、嗅覚は味覚と深い関係があり、嗅覚の情報によって甘味や旨味、塩味は味覚強度が増して美味しく感じることができるのです。

においのもとは分子であり、地球上には現在20~40万もの分子が存在していると言われています。これらの分子の種類や配列によってにおいは異なり、その中で人間が感じることができるにおいは数十万種類と考えられています。においは、鼻の奥のにおいの分子を電気信号として脳に伝達する細胞(嗅細胞)によって、脳に送られてから認識されます。嗅覚障害は、何らかの原因でにおいの電気信号が脳に届かないことで起こります。

においを感じることができないと、ガス漏れを察知できず命を脅かす可能性があるだけでなく、食べ物が美味しく感じられず食欲が低下してしまうなど、生活に支障をきたします。また、最新の研究では嗅覚のテストの結果が悪かった人ほどアルツハイマー型認知症に移行するリスクが高いことが分かっており、嗅覚障害の早期発見がアルツハイマー型認知症の予防や改善に繋がる可能性も示唆されています。

嗅覚障害の原因とは?

(1)呼吸性嗅覚障害

においの分子の通りが鼻の中で物理的に遮られることによって嗅細胞へ到達しない状態のことをいいます。花粉症やハウスダストなどのアレルギー性鼻炎では鼻の粘膜が腫れることによって空気の通りが遮断されるため、においを感じにくくなります。また、慢性副鼻腔炎で鼻の中に出来やすくなる鼻茸(ポリープ)や鼻の穴の間を隔てている鼻中隔という壁が強く湾曲する鼻中隔湾曲症では片方の鼻の通りだけが悪くなることがあり、においを片方だけ感じないといった症状を自覚することもあります。

(2)末梢神経性嗅覚障害

風邪などのウイルスによって嗅細胞がある嗅粘膜や、においを電気信号として脳に伝える嗅神経、においを受け取るセンサーである嗅覚受容体などにダメージを与えられたことで起こる嗅覚障害です。嗅覚受容体は396種類もあり、その一つ一つが小さくてデリケートなものであるため、ウイルス感染によりセンサーの機能が故障してにおいを感じにくくなることがあります。

ウイルス感染による嗅覚障害は、風邪の原因となるウイルスや、インフルエンザウイルスなどでも起こる可能性があり、においが完全に分からないとまではいかなくとも、においによって分かるものと分からないものがあったり、本来のにおいと感じ方が違ったりするなどの症状を自覚することがあります。

(3)中枢神経性嗅覚障害

アルツハイマー型認知症やパーキンソン病などといった神経変性疾患では、脳の血流低下に伴い、嗅神経周囲の血流も低下するため嗅覚障害が起こりやすくなります。頭を強く打つ頭部外傷でも中枢神経性嗅覚障害が起こることがあります。においを感じにくくなるだけでなく、においを感じてもそれが何のにおいなのかが分からなくなるという症状がみられることがあります。

(4)加齢

加齢に伴い嗅細胞が減少し、さらに嗅神経の機能も低下するため、50歳頃から徐々に嗅覚は衰えていきます。

嗅覚障害の検査法とは?

・内視鏡検査

嗅覚障害の原因を調べるために、内視鏡というカメラを鼻に挿入し、内部を観察します。

・画像検査

CTやMRIを撮影し、鼻の形の異常や脳に異常が起きていないか調べます。

・嗅覚検査

日本で保険適応になっている嗅覚検査は2つあります。

(1)T&Tオルファクトメーター

においの種類や濃度が異なる液を嗅ぎ、においの有無や種類を答える簡単な検査です。5種類のにおいで、濃度がそれぞれ8種類設定されています。ろ紙の先端に濃度の薄いにおいを付けて提示し、においを感じるまで濃度を濃くしてにおいを感じる閾値を調べます。

(2)静脈性嗅覚検査

ニンニクのにおいがする注射液を静脈に注入し、注入開始からニンニクのにおいを感じるまでの時間と、感じなくなるまでの時間を計測する検査です。

嗅覚障害の治療法とは?

・呼吸性嗅覚障害の場合

鼻の粘膜の腫れや鼻水による鼻づまりを解消するための内服治療が行われます。既に長期間内服による治療を行っても改善がみられない場合には、鼻の中に鼻茸が存在しており、大きくなっている可能性があります。鼻茸が大きくなっている場合には、内視鏡下で鼻茸を切除する手術が選択されることもあります。

・末梢神経性嗅覚障害の場合

現代の医学ではウイルスによって侵された神経に効果がある薬はまだ証明されておらず、漢方薬やビタミンB12、亜鉛などの内服による治療での効果を臨床実験で調べている段階です。1年間程経過観察をして徐々に自然に改善する場合もあります。

・中枢神経性嗅覚障害、加齢の場合

頭部外傷やアルツハイマー型認知症、パーキンソン病では原疾患の治療を行うと嗅覚が戻る可能性はありますが、呼吸性嗅覚障害と比較すると治癒率は5割程度と言われており、嗅覚障害を完全に回復させる治療法はまだありません。ただし、神経性嗅覚障害と加齢による嗅覚の低下の場合には、嗅覚刺激療法というヨーロッパを中心に世界中で積極的にすすめられているリハビリテーション法があります。嗅覚刺激療法では、花や果実、スパイスや食べ物のにおいを各10秒1日2回行うことで、においを伝える神経の機能を再生し、嗅覚の改善を図ります。

ドイツの大学による研究では、1日2回4つのにおい(ローズ、ユーカリ、レモン、クローブ)を嗅ぐ訓練を12週間行ったところ、訓練を行った患者は嗅覚機能の向上が認められたと報告されています。日本でも注目されている治療法でありますが、病院によっては実施していない場合もあります。自宅でもできるリハビリテーション法であり、においの刺激によって神経だけでなく海馬の再生も図ることができることから、認知症予防・改善にも効果があると考えられています。

嗅覚障害を予防法・改善法とは?

・糖尿病を予防する

アメリカの研究では糖尿病患者は嗅覚障害を伴うリスクが高く、糖尿病と嗅覚障害に関連があると考えられると発表されています。また、糖尿病の合併症である神経障害を発症すると、味覚も障害され、食べ物を美味しく感じることができなくなる可能性があります。後天的に発症する糖尿病は、食事や運動などの生活習慣が原因となります。糖尿病を防ぐためには食べすぎや偏食を避け、適度な運動を行い、肥満体型とならないことが大切です。

・亜鉛、ビタミンB12を積極的に摂取する

亜鉛は嗅神経の新陳代謝に必要であり、ビタミンB12は末梢神経の維持に必要な栄養素です。これらの栄養素が不足しないような食生活を心がけましょう。亜鉛は牡蛎や豚レバー、ビタミンB12はイワシやシジミなどに多く含まれています。

・自然の香りを楽しむ

加工食品や芳香剤といった人工の香りは嗅覚を鈍らせると言われています。人工的な香りに頼らず、普段から花や果実など自然由来の香りを生活に取り入れましょう。

食事をおいしく食べるために

嗅覚と味覚は相互に関係しているため、どちらか一方でも衰えてしまうと食事を美味しく感じることができなくなります。嗅覚障害は自然に治ることも多いため急いで治療をする必要はありませんが、長引くと生活の質に影響を及ぼします。2週間以上様子を見ても症状が改善しない場合は耳鼻科を受診しましょう。

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参考:Effects of olfactory training in patients with olfactory loss.
Hummel T1, Rissom K, Reden J, Hähner A, Weidenbecher M, Hüttenbrink KB.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19235739

この記事の作成者:A.N(看護師)
この記事の提供元:シルバーライフ

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