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食事に全介助が必要な場合のポイント

作成日:2019年8月10日

こんにちは!配食のふれ愛のコラム担当です!
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食事に全介助が必要な場合のポイント

さまざまな理由で自分では食事が食べにくい、または食べることができない方が、安全にストレスなく食事が摂れるようにお手伝いするのが食事介助です。食事介助とひと言でいっても、一人一人の状態に合わせた方法をみつけることが大切ですが、安全に食事を摂るためには、確認しなくてはならないいくつかのポイントがあります。

食事介助とは:状態と必要性

食事介助は「食べ物を口中に運ぶこと」だけを指すのではなく、自力で食べやすい方法を考えたり、食事に集中できる環境を整えたりすることも含まれます。食事の環境を整えたうえで、できる限り自分で口の中に食物を運び、自分のペースで食事を進めることは、おいしく安全に食べることにもつながります。しかし、自力での食事が困難な方もいらっしゃいます。今回は食事の全てに介助が必要な、全介助のポイントについてまとめます。

食事のストレスや疲労を軽減するための一部介助

例えば半身に麻痺があって、利き手ではない方の手で食べなくてはならない時に、食べやすい食器や方法を考えることも大切な食事介助です。また認知症の方が食事に集中しやすい環境を整えることも食事介助です。何か特別なことをしなくても、同じテーブルに座って一緒に食事をしたりしながら、食べている様子を見守ることも食事介助の一部といえます。自力で食べるときの疲労やストレスを軽減したり、誤嚥や窒息などの事故リスクを低減するために必要なお手伝いをすることも大切な食事介助です。

食事の全てにお手伝いが必要な全介助

自分で食事を摂ることが困難な方には、食事の全てをお手伝いすることが必要です。全介助が必要な方は、身体機能や摂食嚥下機能などが重度に障害されていることもあります。食べる方の状態に合わせた介助が必要となりますが、安全に食事を摂っていただくために、基本として守るべきポイントがあります。

食事を始める前に

安全にストレスなく食事を摂っていただくために、食事を始める前の準備はとても大切です。

覚醒の確認

初めに覚醒の確認をします。声をかけて会話をしましょう。高齢者では「傾眠」といってウトウトと浅く眠っている状態のことがあります。呼びかけたり、肩に触れるなどの軽い刺激でもいったんは眼を覚ましますが、刺激がなくなるとまたすぐに眠ってしまうような状態です。しっかりと覚醒していない時に食事を摂ることは、誤嚥や窒息などのリスクが高く危険です。声をかけて眼を開けてもまたすぐに眠ってしまうようなときには、無理せず食事の時間をずらしましょう。数十分眠った後に再度声をかけると、覚醒することもあります。

一日を通して傾眠傾向がある場合は、日中の活動量や夜間の睡眠の状態などを確認し、必要であれば医師に相談しましょう。

口腔内の準備

次に、うがいや歯みがきなどの口腔ケアをします。高齢者では分泌されるだ液の量が減少しているため、口腔内が不衛生になりがちです。口の中か汚れたまま食事をすることは細菌も一緒に飲み込むことになるため、誤嚥性肺炎の要因のひとつとなります。

自分の歯があって、歯みがきができる場合は歯みがきをしましょう。歯みがき粉は使用しなくても、水で濡らした歯ブラシでブラッシングするだけでも大丈夫です。ブラッシング後は、ブクブクうがいが可能であれば、水でよくブクブクうがいをします。義歯を使用している場合は、義歯も水で洗ってから装着しましょう。歯みがきをしない場合でも、ブクブクうがいができる場合は、ぜひブクブクうがいを習慣にしましょう。

ブクブクうがいができない場合は、口腔ケア用のスポンジや口腔ケア用ウエットティッシュなどを使用して、口腔内を清拭しましょう。

嚥下体操

食事の前に嚥下体操をすることで、口唇周辺や食べるために使う筋肉の緊張がほぐれ、だ液の分泌が促進されることで、食事がスムーズに進められるようになります。

口腔ケアについての情報サイトです。嚥下体操について詳しくまとめられていますので、ご参考ください。
http://www.kokucare.jp/training/training/enge/

嚥下体操が困難な場合でも、だ液腺のマッサージは行いましょう。だ液腺は耳下腺、舌下腺、顎下腺の3か所あります。

1.耳下腺は耳たぶの付け根の前後にあります。人差し指と中指で耳たぶを挟むようにあてて押します。
2.親指を顎関節の下にあてて、顎の先に向かって数か所押しながら移動します。
3.顎の先端の骨の内側を押します。

年齢に関係なく、だ液が十分に分泌されることは口腔内の健康にはとても大切です。だ液腺マッサージはいつでもどこでもできるので、ぜひ家族みんなで習慣にしましょう。

食事の姿勢

食事の姿勢を整えることは、誤嚥や窒息を予防するためにとても重要です。一人一人の身体の特徴や疾患に応じて無理のない姿勢をとることが必要ですが、基本的にチェックが必要な項目を挙げます。

・下半身の関節
座位が可能な場合は、いすや車いすに座って食事を摂ります。人の身体は股関節、膝関節、足首の関節がそれぞれ90℃になっているときに、最も座位が安定します。いす(車いす)に深く座り足を下ろして、床またはフットレストに足底を付けます。それぞれの関節の角度は、一人一人の身体の特徴に応じて可能な範囲で90℃に近くなるようにしますが、体を支えるためには足底が接地していることが重要です。足が床に着かない場合は、足台を用意しましょう。段ボール箱や雑誌などを積み重ねて高さを調整して縛ったものでも十分です。車いすフットレストの場合は、フットレストの角度を足に合わせて調節し、足底がフットレストに接地するようにしましょう。

ベッド上で食事を摂る場合も同様ですが、ただ上体を起こすだけでは臀部の位置がずれてしまうため、臀部の位置を補正し、膝を曲げてベッドに足底を付けるか、足底部に布団やクッションなどをあてて足底を支えることで座位が安定します。

・腕の位置
腕はテーブルに乗せるか、車いすのひじ掛けに乗せて支えるようにしましょう。腕の重さを支えることで肩から首にかけての緊張がほぐれ、飲み込みがスムーズになります。ベッド上の場合もクッションなどで腕を置く場所を作り、支えるようにしましょう。

・上半身の角度
安定した座位を保つためには股関節を90℃にして座ることが理想的ではありますが、上体を十分に起こすことが困難な場合は、苦痛がなく、無理のない範囲で車いすの背もたれやベットの角度を調整します。また嚥下障害が認められ、医師から食事時の上体の角度に指示がある場合は、その角度に合わせて上体を起こします。全介助の場合、上体の角度は最低30℃といわれています。

・頸部の角度
誤嚥防止のために、上体は倒れていても、頸部は起こした姿勢であることが重要です。顎が上がり、頭部が後ろに倒れた姿勢は、食道が潰れて気道が広がっているため、飲み込んだ食物が気管に入り込みやすい状態になっています。誤嚥を防止するためには、軽く顎を引いた姿勢を維持できるようにしましょう。自分で頭部を動かすことができる方の場合は、食事をしながら「おへそを見てください」と声をかけると、自然と顎を引いた状態になります。頭部を支える必要がある場合は、車いすの場合はヘッドレスト、ベッドの場合は枕やクッションを調節し、顎を引いた姿勢が保持できるようにします。頸部を深く曲げすぎても飲み込みにくくなるため、顎と首の間に指3~4本が入る程度の角度を目安に調整しましょう。

食事中に確認すること

適切な食事姿勢が作れたら、食事を始めましょう。安全にストレスなく食事を進めるためには、食べる人の様子をよく見ながら介助することが大切です。

ひと口めは水分から

お茶や汁物など、水分を数口摂って口腔内を潤しましょう。コップやお椀から直接すすることができる場合は、コップやお椀を唇にあて、液体が上唇に触れる程度に傾けて「すすってください」と声をかけます。介助者が液体を口腔内に流し込もうとすると、こぼれたりむせ込んだりすることがあるので注意しましょう。コップからすすることが難しい場合は、スプーンやレンゲに液体をすくって唇にあてると、すすれることがあります。

またストローを使うことで、ストレスなく飲むことができる場合もあります。
飲水にむせ込みがある場合は、状態に応じてとろみをつけたり、ゼリーにする必要がある場合があります。適切な水分の提供方法について医師の指示がある場合は、指示に従いましょう。

初めに何を食べるのか

介助者は食べる人の横に座ります。介助者の顔が食べる人の目線より上にならないようにします。人は本能的に人の顔を追うため、介助者の顔が上方に見えると、自然と顎が上がった状態になってしまうためです。
食事はできるだけ食事の全体が、食べる人に見えるように配膳します。その食事の内容を説明し、何から食べたいかを聞いて確認しましょう。返答が困難な方であっても、無言でただ食べ物を口の中に入れられることは、食べる人にとってストレスになります。少なくともそれぞれの料理の最初の一口は、何であるかの説明をしながら口中に運ぶようにしましょう。

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食事のペース

一口の量はティースプーン1杯くらいずつといわれますが、やはり個人差があります。多すぎることは窒息などのリスクが高まりますが、少なすぎても口腔内で移動させにくい場合もあります。食べる人の様子をよく見ながら、適切な一口量をみつけましょう。唇や舌の運動に問題がない場合は、箸やスプーンをあまり奥まで入れる必要はなく、唇で食物を口腔内に取り込んでもらえるように介助をします。唇や舌の運動に制限がある場合は、舌の中央部まで食物を入れた方が良い場合もあります。また口唇周辺や舌に麻痺(片麻痺)がある場合は、健側(麻痺のない方)に意識的に食物を入れるように介助をする必要があります。

食事のペースは飲み込みの確認をしながら食事を進めますが、同じ人でも体調によって食事の進み具合が異なることはよくあります。会話が可能な場合は、食べる人の意思を確認しながら食事を進めましょう。ただし食べている途中で返答をしようとすると、むせたり、誤嚥につながる可能性があります。口の中の食物を飲み込んだことを確認したタイミングで声をかけるようにしましょう。会話が困難な方の場合はその日の様子を注意して見ながら、自発的な開口を待って食事を進めましょう。

嚥下の方法

誤嚥を予防するために以下のような方法があります。

目的方法
頸部回旋1咽頭機能に左右差がある場合、健側の食塊経路を確保し、誤嚥を防ぐ。患側を向いて嚥下する。
頸部側傾1咽頭機能に左右差がある場合、重力を利用して健側に食塊の経路を確保し、誤嚥を防ぐ。健側を下にして嚥下する。
複数回嚥下咽頭残留がある場合、一口につき何度か嚥下することで、残留物をクリアする。嚥下を確認後、もう一度空嚥下をするように声をかける。
交互嚥下食事の合間に水分やゼリーなどで残留物をクリアする。少量の水分やゼリーを丸のみする。
正門閉鎖嚥下嚥下時に声門下の圧を上げることで誤嚥を防ぐ。嚥下後に意識的に咳をすることで誤嚥物を喀出する。嚥下前に息を吸い、しっかり息をこらえてから嚥下し、嚥下後に咳をする。

・複数回嚥下
一口を口中に入れた後、喉仏の動きで嚥下の確認ができたにもかかわらず次の開口がされない場合は、咽頭残留が疑われます。「唾を飲み込んでください」「もう一度ごっくんとしてください」などと声をかけて嚥下を促すことで、咽頭残留物がクリアになり、次の開口がされることがあります。

・交互嚥下
食事の間に規則的に水分やゼリーを摂ることで、咽頭残留をクリアにします。ただし口腔内に食物が残っているときに水分を摂ると、強くむせ込むことがあるため注意が必要です。

・頸部回旋、頸部側傾、正門閉鎖嚥下
これらの嚥下方法を実施する際には、嚥下造影検査(VF)や嚥下内視鏡検査(VE)などを受けたうえで、医師の指示により実施することが理想的です。

食事にかける時間

一般的に健康な人でも、食事に集中できる時間は20~30分といわれます。食べる人のペースに合わせてゆったりと食事を進めることは大切ですが、食事時間が長くなりすぎると、食べる人の集中力が低下したり疲労するため、誤嚥や窒息のリスクが高まることがあります。食べる人の食べたい気持ちや意欲を尊重したうえで、食事時間が長くなり過ぎないようにペース配分を考えることも食事介助に必要なことです。

食事介助:食後にしておくこと

安全に食事を終えるために、食後にも配慮することがあります。

食後しばらくは座位を保つ

高齢者では食道の蠕動運動が低下していることで、食べた物が胃へと送られるまでに時間を要することがあります。食後は30以上座位を保持することが理想的です。食後すぐに横になると食物が逆流し、嘔吐することがあるため注意が必要です。

口腔ケア

食後の口腔ケアは誤嚥性肺炎の予防にとても重要です。口腔内に残った食物残渣っをだ液と一緒に飲み込むことで、強くむせ込むことがあります。また、口腔内に汚れが残ったままだと歯周病の原因となり、口腔内の環境が悪化するだけではなく、増殖した細菌をだ液とともに飲み込むことで誤嚥性肺炎のリスクが高まります。

食事介助の必要性まとめ

スムーズに食事が進むことは、食事を食べる人にとっても、介助者にとっても良いことです。安全にストレスなく食事を摂るために、食事の前の準備も大切にしましょう。また食事中は、できる限り食べる人の意思を確認しながら、適切な声かけを心がけましょう。

この記事の作成者:S.M(管理栄養士)
この記事の提供元:シルバーライフ

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