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食事介助:安全においしく食べる方法について

作成日:2019年4月10日

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食事介助:安全においしく食べる方法について

介助で食事を摂る場合、介助者の配慮が足りないと非常にストレスのかかる食事になってしまいます。場合によっては疲労や苦痛が伴い、誤嚥や窒息といった事故のリスクもあります。

生きるために必要な食事ですが、ただお腹に入ればよいというものではありません。安全においしく、楽しく食べるための食事介助とはどのような方法でしょうか。

食事介助とは

食事が自分で摂れない、もしくは摂りにくくなる原因はさまざまであり、食事に介助が必要なことが一時的なことも、継続的なこともあります。いずれの場合でも、やはり食事は自分の手で自分のペースで食べる方が、安全でおいしく食べることができるでしょう。

口に入れることだけが食事介助ではない

食事介助というと、食事を口に入れて差し上げることを想像するかもしれません。しかし、必ずしもそれだけが食事介助ではありません。

例えば利き手が使えない状態であっても、反対の手が使えるのであれば、自分で食べていただく方法を考えます。利き手ではない方の手で食事をしようとすると、うまく食べ物を取れなかったり、口に運ぶまでに落としてしまったりするかもしれません。食事が進まなくてイライラするかもしれません。そのようなときに、食具や食事の形態を工夫することで食べやすくなることがあります。

またスプーンを握って口に運ぶことはできても、お皿の上の食べ物をスプーンですくうことが難しいことがあります。そのような場合には、適量の食べ物をスプーンの上に乗せて差し上げれば、あとは自分で食べることができるのです。

自分で食べられる方法を考え、自分では難しい事をお手伝いする、ということも食事介助なのです。

どのような介助が必要かを見極める

何をお手伝いすれば自分で食べることができるのか、食べやすくなるのか、安全に食べることができるのかを考えるようにしましょう。食事介助を受けるご本人の意見が聞ける場合は、ご本人の要望を聞き取りながら考えることが重要です。少しずつ方法を変えながら、ご本人に合った方法をみつけましょう。見ていて感じることと、実際にやってみることは異なることもあります。

1.食具を変えてみる

食具(箸、スプーン、フォークなど)を変えることで食べやすくなることはよくあります。特にスプーンやフォークは柄の長さや口に入る部分の大きさ、形、スプーンの材質などによっても食べやすさは変わります。握力の低下がある場合には持ち手の太さも重要です。

同様にお皿やコップも材質や重さ、形状によって食べやすさは変わります。福祉用具の中に自助食器といって、食べやすくするための工夫がされているものもあります。しかし実際に使ってみないと、使い勝手が良いかどうかわからないことがあります。自助食器は一般的な食器よりも価格が高いことが多いので、まずは手元にある食器を工夫しながら試してみるのがよいでしょう。

2.食事の形態を変えてみる

摂食嚥下機能に低下がある場合は、その状態に合わせて食事の形態を変える必要がありますが、摂食嚥下機能に問題がない場合でも、食事の時の姿勢や使用する食具によって、食事の形態を変えることで食べやすくなることがあります。

例えば腕を骨折していたり、リウマチなどで手指に変形や痛みがあるときには、箸やスプーンを使用できなくても手づかみでなら自分で食べられることがあります。

主食をおにぎりやサンドイッチにすることで、おかずは介助が必要でも、主食は自分で食べることができます。

また箸やフォークを使用するときは、ある程度の大きさがある方が取りやすいのですが、スプーンだけで食べる場合は、小さめに切ってあった方がすくいやすくなります。

3.食事の環境を変えてみる

食べる人の体格に合わせて、テーブルの高さや椅子の大きさなどを選ぶことも大切です。テーブルと体の距離が適正でないと、食べこぼしが増えたり食事姿勢が悪くなったりします。

いつも同じところに食べ残しがある場合は、器の中身に死角ができて見えていないのかもしれませんし、視野の欠損があるのかもしれません。そのようなときには、使用する食器や配膳方法の工夫が必要です。またテーブルや食器の色や柄によっても、器の中身が見えにくいことがあります。

認知症がある人の場合、食卓周辺の物や音によって食事に集中できないことがあります。食事に集中できないことで、食べこぼしや食べ残しだけではなく、誤嚥や窒息などの事故につながることもあります。テレビやラジオなどの音、周囲の人の動きや声、部屋の明るさなど、食べる人の目線になって食事の環境を見直してみましょう。

食べさせてもらうことのストレス

目の前に並んだ食事を見たときに、私たちはほとんど無意識のうちに何から食べようか、どんな味がするか、などと考えています。自分で口に運べないときに、自分が思ったものとは違う食べ物が口に入ったらがっかりしてしまうでしょう。どうしても嫌いな食べ物があった時にそれを口に入れられるのも嫌ですし、途中でお茶を飲みたいのにどんどん食事を進められるのもストレスになるでしょう。

誰でも一口の量、噛む回数、飲み込むタイミングなど、自分のペースで食事を進めているのです。

口の中は、日常的に人に見せることはないデリケートゾーンですので、食事介助をする人が家族以外の場合では、口を開けること自体に抵抗感がある場合もあります。

食事を口に入れる介助では適切な距離感を保ち、声をかけながら、あくまでも食べる人のペースに合わせて進めることが大切です。

食事を始める前に確認すること

どのような状態の方でも、食事を始める前に確認しておくポイントがあります。安全に気持ちよく食事を始めるために必要なことです。

覚醒の確認

体調やお薬の影響などによっては、食事の時間でも眠気が強かったり、ボーっとしていて食事に集中できないような状態の事があります。食事を始める前には必ず意識が清明であるかどうかの確認をしましょう。

声をかけて呼びかけ、食事の時間であることを伝えます。会話が可能であれば何度か言葉のやり取りをして、いつもと状態に変化がないかを確かめます。返事があっても眠気が強い様子だったり、いつもとは異なる様子があった場合は、無理せずに食事は後回しにしましょう。体温や血圧の確認をして体調に異常がなければ、少し時間をおいてからもう一度声をかけて食事を勧めてみましょう。

口腔ケア・うがい

食事の前に口腔ケアをすることは、高齢者にはとても有効です。高齢者は唾液の分泌量が減少するため、口腔内の自浄作用が低下している可能性があります。食前の歯みがきで口腔内が清潔になり、誤嚥性肺炎のリスクを軽減することができますし、味を良く感じることができるのでおいしく食事ができます。

食前の口腔ケアの方法は、歯みがき粉は使用せずに、歯ブラシを水で濡らしてから歯と歯ぐき、舌を優しくブラッシングしてからブクブクうがいをします。義歯を使用している場合は義歯を外して水洗いします。残歯と歯ぐき、舌をブラッシングしてからブクブクうがいをしてから、義歯を入れましょう。

トイレ

食事中にトイレに行きたくなると、誰でも落ち着いて食事が摂れません。高齢者はトイレが近くなる方も多いので、食事の前にはトイレを済ませておきましょう。

食事姿勢

食事の時に姿勢が安定していないと食べにくいばかりでなく、咽頭での食べ物の流れにも影響を及ぼすことがあり、誤嚥や窒息といった事故のリスクが高まります。

人の体は、腰(股関節)・膝・足首の関節を直角に曲げ、足の裏が接地しているときに最も安定した座位が保てます。体格が小さく椅子に座ると足が浮いてしまう場合は、踏み台を置いて足を置くようにしましょう。ちょうどよい高さに雑誌などを積み重ね、縛ったものを置くだけでも十分です。

拘縮などで関節を直角近くまで曲げられない場合は、無理のない範囲でとどめますが、足の裏の接地は確認しましょう。足の裏が車いすのフットレストや、ベッドのフットボードに接地していることだけでも、姿勢が安定します。

次に、上半身が前後や左右に傾いていないことと、頸部が後屈していないことを確認します。頸部が後屈してあごが上がった姿勢では、食道はつぶれ、気道が広がります。つまり食べ物が気道に入りやすい状態となるため、あごを引き、やや目線が下向きになるように補正しましょう。

人は赤ちゃんの頃から相手の顔、特に目を追う習性があります。介助者の顔が上方にあると、どうしても目線が上を向き、あごが上がった姿勢になりがちです。介助者も座って、目線の高さを合わせた位置から食事介助を行うようにしましょう。

食事姿勢と食卓環境のチェック表

頭部が直立するように枕やクッションで補正する。
股関節、膝、足首はできるだけ直角になるようにする。
背骨が床と垂直になるように、骨盤を立てて座る。
足の裏を接地する。
頸部が後屈しないように、あごを引いた姿勢に枕やクッションで補正する。
食器の中身がよく見えるように配膳する。
食卓の周囲に動くものや人は少なくする。
テレビやラジオなどの音は控えめにする。

食事中に気をつけること

安全においしく食べるために気を付けることはいくつかありますが、どれも個人差があります。食べる方の特徴に合わせることが大切です。

一口の量

一口の量には個人差が大きく、自分で食べるときには食品の種類や硬さ、温度などによっても無意識のうちに一口量を調整しているものです。口に入れて差し上げる場合には、食べている様子をみながら一口量を調整しましょう。

認知症がある人の場合は、ちょうどよい一口量を調整できなくなってしまう場合があり、たくさんの量を口の中に押し込んでしまったり、次から次へと口に入れてしまうことなどがあります。窒息や誤嚥などの事故を避けるため、食事は初めから小さめに切っておく、小さいスプーンを使っていただく、少量ずつを小さな食器に取り分けて差し上げる、などの介助をしてみましょう。

ご自分で食べることができる方でも、誰かが近くで見守ることも大切です。

食事のペース、飲み込みの確認

口に入れて差し上げる場合、介助を受ける人が意思表示が可能であれば、ご本人に声をかけて確認しながら食事を進めることができますが、ご本人の意思を確認することが難しい場合は、確実に飲み込んだことを確認しながら進めていかなくてはなりません。口を開けたときに食べ物が残っていなくても、「飲み込んだ」とはかぎりません。

ごっくんとして、食べ物が咽頭付近を通過し食道へ流れたかどうかは、外からは見えない部分で起きているのです。安全に飲み込めたかどうかは、目視で確認ができないのです。

飲み込みを確認する目安には次の方法があります。

1.のどぼとけの動き

ごっくんとすると、のどぼとけが指1~2本分程度の範囲で上昇します。まずはこの動きを確認しましょう。しかし高齢者の中には筋力の低下などにより、のどぼとけの動きがわかりにくいことや、複数回のごっくんを繰り返して、やっと一口が飲み込めるようなケースもあります。

2.唇の動き

飲み込もうとするとき、人は唇を閉じます。上あごに舌を押し付けるときに、唇をきゅっと引き絞ったように、一文字に強く閉じることがあります。個人差はありますが、このような唇の動きがあったときは、飲み込もうとしているときかもしれません。声をかけたり、次の一口を差し出したりせず、ごっくんと飲み込むのを待ちましょう。

3.次の一口に開口するかどうか

私たちは一口を飲み込めば、次の一口を食べるために口を開きます。高齢者の場合はごっくんとのどぼとけの動きが確認できても、一口分を全部飲み込めたかどうかはわかりません。口腔内の奥や咽頭付近に残った食べ物を飲み込もうとして、舌の運動が続いているときには、口を開けることは難しくなります。

開口されない理由は他にもたくさん考えられるため、一概に自発的に開口しないことが、飲み込めていないサインとはいえませんが、しっかりと飲み込めていないと、口を開けたくても開けられない状態があることも知っておきましょう。

食後にすること

食卓の料理がなくなって食事が終了ではありません。高齢者にとって、食事は思いのほか疲れることもあります。食後もしばらくは誰かが近くにいて、体調に変化がないかなどを見守るようにしましょう。

歯みがきうがい、義歯の洗浄

無理のない範囲で、口腔ケアもご自身でやっていただきましょう。

食後の歯みがきは、初めにブクブクうがいをして、口の中に残っている食べ物の残渣を除きます。義歯を使用している場合は義歯を外してからうがいをします。歯ブラシを水で濡らしてから、毛先が垂直に当たるように優しくブラッシングします。歯みがき粉や液体歯みがきなどは使用しなくても大丈夫です。歯と歯の間、歯と歯ぐきの境目を丁寧に、歯ブラシを細かく動かしましょう。

手や腕が動かしにくい場合は、電動歯ブラシを使用することも有効ですが、その場合は仕上げみがきの介助を行いましょう。最後にブクブクうがいをします。

ブクブクうがいが難しい場合は、スポンジブラシや口腔ケア用のウエットティッシュを使用して、最後に清拭をしましょう。

義歯は義歯専用のブラシを使って洗浄します。歯みがき粉で義歯をみがくと、義歯に傷がつくことがあるため、義歯は義歯専用の口腔ケア用品を使用してください。自歯と同じように歯と歯の間などのくぼんでいる部分は丁寧にブラッシングします。時間があるときは義歯洗浄剤に浸けおき洗浄をしましょう。

座位を保つ

食道は、入ってきた食べ物を蠕動運動によって胃へと運びます。高齢者は食道の蠕動運動が低下している場合があり、食べた物がすべて胃へと送られるまでに時間がかかることがあります。食後すぐに横になったり、動き出すと、食道に残った食べ物が逆流したり嘔吐したりすることがあります。

食後30~40分間は座位のままで食休みをすることが理想的です。

まとめ

安全に食べるために、確認しなくてはならないことはいくつかありますが、何よりも大切なのは食べる人の様子をよく見て、その人に合った方法をみつけることです。

食事介助のポイントを理解して、食事を安全においしく摂るためのお手伝いをしましょう。

この記事の提供元:シルバーライフ

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