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糖尿病や高血圧などの生活習慣病との関連が深い腎臓病。患者数は日本に約1300万人もおり、適切な治療を受け生活習慣や食習慣を見直さなければ人工透析が必要となるリスクがあります。
ここでは、腎臓病の高齢者向けの介護食について解説していきます。
目次
腎臓病、食事療法が必要?
腎臓病とは、腎臓の働きが悪くなる病気のことです。腎臓の機能は加齢に伴い徐々に低下していきますが、糖尿病や高血圧といった生活習慣病があるとさらに腎臓の働きは悪くなり、そのままだと「慢性腎不全」という人工透析が必要な状態となってしまいます。慢性的な腎臓病の場合、一度悪くなった腎臓の回復は見込めません。
しかし、腎臓病は食事療法、薬物療法、安静療法により進行を遅らせることができます。
正常の腎機能であれば、たんぱく質が代謝されてできる身体にとっては有害な老廃物を排出することができますが、機能が低下した腎臓は老廃物を排出することができずに蓄積してしまいます。そのため、腎臓病の場合にはたんぱく質の摂取量を制限します。
他にも電解質の制限や塩分制限を行うことで、腎臓の機能の低下を抑え、合併症を予防することができるため、腎臓病には食事療法が必要なのです。
慢性腎臓病(CKD)の重症度分類
症状・自覚症状がほとんどない
・たんぱく尿や血尿が出る・夜間に何度もトイレに行く
・血圧が上昇する
・貧血になる・疲れやすくなる
・むくみが出る・食欲が低下する
・吐き気がする
・息苦しくなる
・尿量が少なくなる
CKDステージ | ハイリスク群 ステージ1 | ステージ3 | ステージ4 | ステージ5 |
ステージ2 | ||||
推算GFR値 (mL/分/1.73㎡) | 90以上 | 30~59 | 15~29 | 15未満 |
60~89 | ||||
治療法 | ||||
※GFRとは、1分間あたり糸球体が血液をろ過して作れる尿の推算量を表しています。 |
CKDステージによる食事療法基準
※エネルギーや栄養素は合併する疾患(糖尿病や肥満など)により病態に応じて調整する必要があり、年齢や性別、身体活動量により異なります。
ステージ | エネルギー (kcal/kgBW/日) | たんぱく質 (g/kgBW/日) | 食塩 (g/日) | カリウム (mg/日) |
ステージ1 (GFR≧90) | 25~35 | 過剰な摂取をしない | 3≦ <6 | 制限なし |
ステージ2 (GFR 60~89) | 過剰な摂取をしない | 制限なし | ||
ステージ3a (GFR 45~59) | 0.8~1.0 | 制限なし | ||
ステージ3b (GFR 30~44) | 0.6~0.8 | ≦2,000 | ||
ステージ4 (GFR 15~29) | ≦1,500 | |||
ステージ5 (GFR<15) | ≦1,500 |
たんぱく質の制限量の目安は?
日本腎臓学会ではステージ 1~2 では,過剰なたんぱく質摂取を避けることを推奨しています。どれくらいが過剰なのか、ということですが進行する腎臓病リスクがある場合には 1.3 g/kg 標準体重/ 日を超えないことが1つの目安とされています。
たんぱく質が多い食品は、肉、魚、卵、大豆、乳製品がありますが、実はお米にも180gあたり4.5gのたんぱく質が含まれているのです。毎日食べているお米を「低たんぱくご飯」に置き換えることで、たんぱく質の摂取量を減らし、腎臓の負担を軽減することができます。
エネルギー量を増やす理由は?
腎臓病のステージが進むと、よりたんぱく質を制限する必要があります。たんぱく質を制限するとその分エネルギー量、つまり食事の総カロリー量が減ってしまいます。エネルギー量が減ると身体の中のたんぱく質が分解されてたんぱく質を食べていないのにも関わらず身体にとって有害となる老廃物が生まれてしまうため、エネルギー量は不足しないようにすることが大切です。
エネルギー量はたんぱく質が含まれない糖分や脂肪で補います。目標エネルギー量に満たないときは、たんぱく質量やエネルギー量が調整されたクッキー、ゼリー、飲料などの治療用特殊食品を取り入れると良いでしょう。
食塩を制限する理由は?
腎臓の働きが落ちると、食塩に含まれるナトリウムを代謝する機能が低下するため血液中のナトリウム濃度が高くなります。血液中のナトリウム濃度が高くなると、身体の中の水分が血管へ移動するため、血液量が増えて高血圧の原因となります。血圧が上がると腎臓の毛細血管を障害しさらに腎機能が悪くなる原因となるため、腎臓病では食塩の摂取量を制限する必要があるのです。
食塩の摂取量は重症度に関わらず一日3g以上6g未満が基準とされています。
カリウムを制限する理由は?
カリウムは果物や野菜、海藻類に多く含まれていて、神経の伝達や筋肉の働きに関与しています。腎臓の働きが落ちると、ナトリウム同様にカリウムを代謝する機能も低下するため血液中のカリウム濃度が高くなり高カリウム血症となることがあります。
高カリウム血症は吐き気や嘔吐、しびれや脱力感などの神経症状、不整脈などを起こす原因となり、重度になると命に関わる不整脈を起こすことがあるため注意が必要です。
日本人は一日約2,200~2,300mgのカリウムを摂取しています。腎臓病のステージ3aまではカリウムの摂取量は制限されていませんが、3bでは一日2,000mg以下、ステージ4~5では一日1,500mg以下が目標とされています。カリウムはあらゆる食品に含まれているため、たんぱく質を制限することでカリウムの摂取量を減らすことに繋がります。
カリウムが多い食品(100g中のカリウム量)
炭水化物・芋類 | 肉・魚・大豆 | 海藻・野菜・果物 | 飲料 | |
非常に多い | 小豆(1500) インゲン豆(1500) | 大豆きなこ(1900) スキムミルク(1800) | とろろ昆布(4800) 昆布(3200) 切干大根(2400) 焼き海苔(2400) 干し椎茸(2100) | インスタントコーヒー(粉)(3600) 抹茶粉(2700) |
~1500mg | 黒砂糖(1100) | 煮干(1200) するめ(1100) | トマトペースト(1100) きくらげ(1000) | ポテトチップス(1200) |
~1000mg | 干し芋(950) ゆり根(740) 里芋(640) 甘栗(560) | 八丁味噌(930) 納豆(660) 枝豆(590) | 昆布の佃煮(770) 干し柿(670) ぬか漬(610) たくあん(500) | ミルクココア (粉)(730) |
~500mg | さつまいも(470) かぼちゃ(450) れんこん(440) じゃが芋(410) 食パン(97) | カンパチ(490) カツオ(430) マグロ(380) 牛もも肉(330) 豚ロース(310) 鶏もも肉(270) | 茹でほうれん草(490) 梅干し(440) バナナ(360) ブロッコリー(360) メロン(350) | 玉露茶(470) トマトジュース(260) 低脂肪乳(190) 牛乳(150) |
おすすめ調理法や注意点は?
腎臓病食は、低たんぱく・高カロリーが基本です。さらに食塩の摂取量を基準内に収まるよう制限したり、必要に応じてカリウムの摂取量を制限したりする必要があります。目標エネルギー量を摂取するためには、たんぱく質が含まれない油や糖分を上手に使った調理法がおすすめです。
・油は少量で高カロリーなため、天ぷらやフライなどの揚げ物を献立に取り入れる。
・パンには減塩のマーガリンやバターをたっぷりと塗る。
・チャーハンや焼きそばなど主食に油を多く使う。
・たんぱく質が含まれない春雨を取り入れてボリュームをアップする。
→サラダや炒め物、汁物などにおすすめです。炒め物には油を多く使いましょう。
・サラダにはオリーブオイルをかけることでカロリーをプラスする。
→ドレッシングやマヨネーズは塩分が高いため減塩の商品を使用しましょう。
・コーヒー、紅茶を飲むときは砂糖を多めに使う。
→たんぱく質が含まれない粉飴がおすすめです。
・野菜は小さめに切って茹でる、水にさらすなどの下処理をする。
→カリウムは水に溶けやすく、特に茹でると多く水に溶けます。小さめに切ったり、茹でた後によく水を切ると、より多く除去できます。
、玉ねぎなどの根菜類を水にさらした場合、約40%のカリウムが除去できます。
・生食よりも缶詰の果物を使う。
→缶詰の果物は生よりもカリウムが少ないためです。シロップに溶け出しているためシロップは摂取しないようにしましょう。
(例)100g中のカリウム含有量
・みかん(生):150㎎
・みかん(缶)果肉:75㎎
効果的な減塩方法は?
腎臓病の方の多くは高血圧を合併しており、減塩をすることで血圧を低下させる効果や脳血管疾患や循環器疾患などの合併症予防にも繋がります。
・味付けは調理中ではなく調理後に行う。
→料理の表面に味付けをすることで少ない塩分量でも味が感じやすくなります。
・昆布やかつおなど出汁を上手に使い、食材のうまみを生かす。
→うまみを生かすことにより、塩分が少なくても美味しく感じられます。
・スパイスなどの香辛料や酢による酸味など、味にアクセントをつける。
→塩分をあまり使わずに食材を美味しくする方法の1つです。酢の物や、大葉やみょうがなどの香味野菜を献立に取り入れると良いでしょう。
・醤油はかけるのではなく小皿にとり、つけるようにする。
→塩分摂取量が控えられます。
・煮魚より焼き魚を選ぶ。
→煮魚は調理の段階で塩分を多く使いますが、焼き魚の場合には塩を振らずに焼き、食べる直前に醤油をつけることで塩分摂取量を抑えられます。
おすすめしたいのが、醤油をスプレータイプの容器に移し替えることです。食べる直前に醤油スプレーを振りかけることで、少ない塩分量なのに塩気が良く感じます。
・汁物は具を多くして、汁を減らす。
→みそ汁1杯あたりの塩分量は約1.8gです。みそ汁をよく飲む習慣がある場合は減塩味噌に変えましょう。味噌汁は塩分量が高いため、身体に悪いと考えられてきましたが、近年では発酵食品である味噌の栄養素に注目されています。味噌はアミノ酸やビタミン、亜鉛をはじめとしたミネラルが豊富に含まれており、1日1杯程度の味噌汁を飲むことで、血管年齢を10歳程度改善する傾向があると言われています。
・ラーメンやうどんなどの汁は飲まない。
→ラーメン1杯には約7g、うどん1杯には約5g強の塩分が含まれているため、汁は飲み干さないようにしましょう。スープを飲まないだけでも約2.6g程塩分摂取量を抑えることができます。
・塩蔵品や漬物、佃煮は控える。
→高齢者が好んで食べていることが多いですが、食塩量が多いため気をつける必要があります。
・インスタント食品は避ける。
→インスタントラーメンのは塩分量は約5~6g、レトルトカレーは約2.8~3.9gとインスタント食品は塩分量が高いため避けましょう。
腎臓病高齢者の介護食:まとめ
腎臓病の介護食は低たんぱく質・高カロリーを基本に、おいしく調理して毎日継続していくことが大切です。しかし、食材選びや調理に手間がかかることが多く、毎日の食事作りは介護者にとって負担になりがちです。そのため、栄養バランスやエネルギー量に配慮した宅配弁当や冷凍食品をうまく取り入れることで介護負担の軽減をすることができます。