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足の指が腫れて、突然の激痛に襲われる痛風ですが、かつては美味しいものばかり食べていると発症する「ぜいたく病」といわれていたこともあります。50代以降の男性に多く発症する痛風ですが、近年は女性や若い人に発症するケースも増えているといわれます。痛風の原因を理解して、痛風発作を予防しましょう。
目次
痛風とは:急性関節炎
痛風発作は男性に多く、主な症状は、足の親指の関節に激痛を伴う急性関節炎です。
痛風発作
初めての痛風発作では、特別な予兆はほとんどなく、突然関節に痛みが生じます。多くの場合で足の親指の付け根の関節部分が赤く腫れて、触れると激痛が走ります。足の他の指の関節や膝関節に症状があらわれることもあり、まれに手やひじ、肩の関節に症状がおこる場合もあります。初回の発作では激しい痛みは数時間から数日と比較的短く、関節障害なども残ることはほとんどありません。適切な治療を受けることで速やかに急性発作は消失します。
痛風発作の再発
複数回の痛風発作を繰り返しているような場合では、ひとつの発作が1か月から数か月間に及ぶ長期発作となったり、数日から数週間の短い間隔で痛風発作が繰り返されることもあります。痛風発作は、ほとんどの場合で単関節で発症しますが、短期間に痛風発作を繰り返す場合では、ひとつの発作が消失しないうちに別の関節で痛風発作を発症することで多発性関節炎となり、歩行が困難になるなど生活に悪影響を及ぼすことがあります。
痛風発作の原因とは?
痛風発作の原因となるのは体内にある尿酸です。
プリン体から作られる尿酸
プリン体という物質が肝臓で分解されたときにできるのが尿酸です。プリン体は細胞の遺伝子(DNA)の構成成分であり、内臓や筋肉を動かすためのエネルギー源にもなるため、重要な物質です。細胞が毎日生まれ変わることでプリン体から尿酸はいつも作られていて、血液中に溶け、尿中に排泄されます。
尿酸値が高くなる理由
通常、尿酸の産生量と排泄量はほぼ同量で、体内の尿酸は常に一定量に保たれています。しかし体内で尿酸が多く作られ過ぎたり(産生過剰型)、体外への排出量が低下したり(排泄低下型)、またその両方が合併すること(混合型)で血中の尿酸値は上昇します。尿酸のもととなるプリン体を多く含む食品をたくさん食べたり、アルコールを多く摂った場合にも尿酸値は高くなります。
また内臓脂肪の蓄積も尿酸値が高くなる要因のひとつといわれます。
高尿酸血症
尿酸の血中濃度が高まった状態を高尿酸血症といいます。血液検査の結果で尿酸値が7.0mg/dl以上になると高尿酸血症と診断されます。この状態が長く続くことで痛風が発症しやすくなります。
高尿酸血症が進行すると結晶化した尿酸(尿酸塩結晶)が足先や関節などにたまり、その部分に炎症が起きると痛風発作が発症します。同様に、尿酸塩結晶が腎臓にたまって結石ができると腎臓結石、尿管や膀胱に移行して炎症を起こすと膀胱結石や尿路結石となり、いずれも激痛が生じます。
遺伝的要因
高尿酸血症の改善には食事や運動を含めた生活習慣などの環境的要因が影響していることの他に、遺伝的要因の影響も少なくないことが近年の研究によってわかっています。生活習慣や環境要因の改善をしても尿酸値が低下しないケースや、20代以下で発症する若年性痛風など、今後の研究によって遺伝子リスクが早期に判定できるようになれば、痛風発症の早期発見や予防、治療に役立つと考えられています。
高尿酸血症の合併症とは?
高尿酸血症には痛風発作を発症するまで、大きな自覚症状はあらわれません。しかし高尿酸血症の状態が継続することで、いろいろな合併症につながります。
腎機能障害
尿酸塩結晶が腎臓内にたまると腎機能が低下します。腎機能が低下すると尿酸の排泄力が低下するので、尿酸値がさらに高くなるという悪循環が生じます。
腎結石、膀胱結石、尿管結石など
尿酸値が高い人は尿が酸性に傾いていることがあります。尿が酸性になっていると、尿中に結晶が形成されやすく、腎臓や膀胱、尿管、尿道などに結石ができる原因になります。
痛風結節
体のいろいろなところで尿酸塩結晶がたまると、硬い結節を作ることがあります。結節ができるのは関節内だけではなく、骨の中や脊髄にできることもあり、骨折や麻痺につながると生活に大きな支障をきたすことがあります。
動脈硬化
高尿酸血症があると、動脈硬化による心疾患や脳卒中を引きおこすリスクが高まります。特に高尿酸血症と他の生活習慣病を併発している場合には、動脈硬化の進行に悪影響を及ぼすことが示唆されています。
痛風の治療方法について
痛風の治療は薬物療法に加えて、食事療法を含めた生活習慣の改善が重要です。
薬物療法
痛風発作がおきてしまったら、最初に患部の痛みと腫れに対しての治療を行います。非ステロイド系消炎鎮痛剤の使用によって短時間で症状を消失させることは、発作の遷延化や再発の防止に有効といわれています。早期に薬を中断することは発作の遷延化や再発につながる恐れがあるため、患部の発赤腫脹や痛みが軽減しても、医師の指示通りに服薬を継続しましょう。
非ステロイド系の消炎鎮痛薬で改善がみられない場合や、遷延性痛風発作、短期間に痛風発作を繰り返しているような場合には、ステロイド療法が実施されることがあります。ステロイド療法は経口薬の他に点滴や注射などの方法によって行われることもあります。
痛風発作の直後は再発作の危険性が高いため、尿酸値のコントロールは痛風発作が十分に消失したのを確認して、尿酸降下薬を少量から開始します。
生活習慣の改善
痛風発作が消失し、尿酸降下薬が開始されるのと並行して、生活習慣の改善も始めることが大切です。生活習慣の改善は再発作を防ぐための基本なので、服薬によって尿酸値が下がっても継続していく必要があります。
尿酸値のコントロール目標
尿酸値を適正にコントロールできれば、痛風発作の再発やその他の合併症を防ぐことができます。尿酸値が7.0mg/dlを超えると高尿酸血症と診断されて治療開始の目安とされますが、生活習慣の見直しや肥満が解消することで尿酸値が改善されることもあります。「まだ高尿酸血症ではないから大丈夫」と思わずに、尿酸値が高めの場合は早めに生活習慣の見直しを始めましょう。尿酸値のコントロール目標は6.0mg/dl以下です。
痛風の予防、日常生活で出来る事
痛風発作の発症には、生活習慣が大きく影響しています。 痛風を発症した人の特徴には、肉食に偏った食生活や多量の飲酒の習慣、肥満や脂質異常症・糖代謝障害の合併などがあげられます。
体重コントロール
高尿酸血症で肥満がある場合では、体重を適正に減量することで尿酸値も低下することがあります。ただし急激な体重減少や偏ったダイエット方法によって痛風発作が起こりやすくなることがあるため、無理のない方法で体重コントロールをしましょう。
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プリン体を多く含む食品は控えめに
最も注意が必要なのは肉や魚の臓物(内臓)類です。焼き鳥や焼き肉では、肉の部位に注意しましょう。またプリン体は水に溶けるので、肉や魚からとっただしやスープにも要注意です。魚介のだしや鶏ガラスープなどは、鍋物や麺類のスープによく使われています。ラーメンやうどんなどのスープは飲み干さずに残すようにしましょう。
プリン体の多い食品と少ない食品(mg/100g)
とても多い | 300mg以上 | 鶏レバー、イワシの干物、白子、あんこうの肝など |
多い | 200~300mg | 豚レバー、牛レバー、カツオ、マイワシ、大正エビ アジ干物、サンマ干物など |
少ない | 50~100mg | ウナギ、ワカサギ、豚ロース、豚バラ、牛タン 牛肩ロース、マトン、ハム、ベーコン、ほうれん草 カリフラワーなど |
とても少ない | 50mg以下 | コンビーフ、魚肉ソーセージ、かまぼこ、ちくわ 数の子、すじこ、ウインナー、豆腐、牛乳・乳製品 鶏卵、じゃがいも、さつま芋、ごはん、パン、うどん、そば、 果物、キャベツ、トマト、にんじん、大根、白菜 海藻類など |
野菜や海藻、きのこ類、果物はアルカリ性食品といわれます。尿の酸性度は食べ物によっても変化するため、アルカリ性の食品を積極的に摂ることで尿もアルカリ性に傾き、尿路結石ができにくくなるといわれます。果物の中には糖質を多く含みエネルギーの高いものもあるので、食べ過ぎには注意しましょう。
アルコールは控えめに
ビールにはプリン体が多く含まれるため、痛風発作のリスクが高まるといわれます。
アルコールに含まれるプリン体含量(mg/100ml)
アルコール飲料 | プリン体含量 | |
蒸留酒 | 焼酎25% | 0.0 |
ウイスキー | 0.1 | |
ブランデー | 0.4 | |
醸造酒 | 日本酒 | 1.2 |
ワイン | 0.4 | |
ビール | 3.0~7.0 | |
発泡酒 | 0.1~4.0 | |
紹興酒 | 11.6 |
ビールや発泡酒は、メーカーや種類によってプリン体含量には変動が大きくみられますが、やはり他のアルコールと比べると多いといえます。しかしメーカーによっては「プリン体0(ゼロ)」などとうたっている商品もあり、「ビールにはプリン体が多い」と一概には言えないのが現状です。
キリンビールのウエブサイト内では、原材料と栄養成分の一覧が公開されています。プリン体量についても示されているので、参考にしましょう。
https://www.kirin.co.jp/products/list/nutrition/beer/
ビールにプリン体の含量が多いことだけが問題なのではありません。実はアルコール自体にも問題があります。
アルコールは体内に入ると肝臓で分解されて、乳酸が作られます。乳酸は尿中に排泄されますが、乳酸が増えることで尿が酸性に傾きます。尿の酸性度が強くなると尿酸は尿中に溶けにくくなり、尿酸の排泄が阻害されることになります。このことから、たとえプリン体が少ないアルコール飲料を選んでも、アルコール自体の作用によって尿酸の排泄が阻害されて血液中の尿酸濃度は高まります。同時にアルコールの利尿作用による脱水によって尿が濃縮されると、さらに尿酸は尿に溶けにくくなるため、アルコールの摂取には注意が必要です。
アルコール摂取時の注意点をあげます。禁酒はなかなか困難でも、次のポイントを気にとめながら、適量を飲むようにしましょう。
・お酒の種類を選ぶ
プリン体の少ないお酒を選ぶことだけではなく、アルコール度数の高いお酒を控えるようにしましょう。ウイスキーや焼酎などをストレートやロックで飲んでいた人は、水割りやハイボールなどにして水や炭酸水で割って飲むようにしましょう。ジュース類で割るとエネルギー(カロリー)摂取の過剰になるため、アルコールの割り材は水か炭酸水が理想的です。レモンやライムなど柑橘類を絞ることでバリエーションが広がります。
・おつまみを選ぶ
プリン体を多く含む肉類や魚類は避けて、枝豆や冷奴などの大豆製品や野菜のメニューを選ぶようにしましょう。きのこ類や海藻類のメニューもおすすめです。
十分な水分補給
水分を十分に摂ることで尿量が増え、尿酸の排泄を促します。尿路結石などの予防にも効果があるとされています。1日2ℓ以上の水分摂取が目安といわれますが、高尿酸血症以外に疾患がある場合は、水分摂取量についても医師の指示に従ってください。またジュースやスポーツドリンクなど糖分を含む飲み物はエネルギーの過剰につながるため、控えるようにしましょう。コーヒーや牛乳、ビタミンCを含む飲料などは痛風発症を抑制する効果があるともいわれています。医師に相談の上、適量を摂取しましょう。
適度な運動
運動は体重コントロールにおいても大切です。尿酸値のコントロールにはウオーキングやスイミングなどの有酸素運動が効果的といわれます。激しい運動や強い筋肉トレーニングでは尿酸が産生されるので注意が必要なため、運動の量と内容については医師や理学療法士に相談し、無理のない運動を継続していきましょう。
ストレス解消
精神的ストレスが尿酸値に悪影響を及ぼすことが明らかとなっています。ストレスをため込まず、自分に合ったストレス解消法をみつけるようにしましょう。
健康診断を受ける
痛風発作がおきるまでは、高尿酸血症自体に自覚症状はありません。以前は50代以降の男性に多かった痛風発作ですが、現代では初めての痛風発作が30代でおこるケースも増加しています。
また体内での尿酸値のコントロールには女性ホルモンが関与していることから、女性には少ないといえる痛風ですが、閉経以降の女性にも痛風発作の発症が増加している傾向があります。定期的に健康診断を受け、尿酸値に注目してみましょう。高尿酸血症と診断される前に生活習慣を見直すことで、痛風発作や高尿酸血症が引き起こす合併症を予防することができます。
痛風の原因と予防まとめ
痛風は特別な人の病気ではなく生活習慣病のひとつで、食事からのプリン体摂取を制限するだけではなく、生活習慣全体の改善が必要です。世界3大激痛のひとつともされる痛風発作の激痛を体験しないために、健康診断の尿酸値にも注目してみましょう。