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介護が必要になられたご家族がいらっしゃる場合、頭の中から離れないことの一つが「高齢者ホーム」の利用ではないでしょうか。過去の日本人的な感情ですと、「介護は最後まで家で家族が見るもの」という考え方が一般的でしたが、最近ではこういった考え方が少しずつ変化してきています。
この記事では、ご家族も含め10年後も安心して暮らしてもらうために、高齢者ホームを選ぶときの基礎知識をお伝えしていきます。
目次
高齢者ホーム:無理な在宅介護
はじめに、介護施設へ高齢者の方(多くの場合は親ですが)に入居してもらうと聞くと、あなたはどのような感情や印象を持つでしょうか。
それぞれの価値観や大きくなった環境によって感じ方が違っているはずです。しかし昔なら「最後まで家で」という意見が多かったことはご存じの通りです。
親の入居は不幸ではありません
昔なら、こんな風に感じる人も多かった気がします。
・親不孝
・恩知らず
・親を見捨てる
・介護を放棄している
しかし、これらの感じ方を最優先することで、親の介護生活を中心にしすぎて、自分の生活が成り立たなくなる人もいます。
これまでの生活の中に介護という状況が入ってくるだけでも、かなり大変です。今までと同じ生活を続けることはできません。もし介護が初めての場合なら、なおのこと困難を感じることは間違いないでしょう。
このような事実に目を向けるとわかってきますが、介護が必要になったとき最初に考えないといけないことは、高齢者ホームへ入居するのが良いとか悪いとかではなく、親も自分も共倒れせず生活を続けることができるのかを最優先にすることなのです。
無理するとどちらも不幸に
介護は思っている以上に大変です。実際にケアマネージャーさんたちの協力を得ながら、1日の介護計画を立ててみるとよくわかってきます。
介護は休みがありません。食事やトイレは1年365日行う必要があります。お風呂は毎日ではなくても数日に1回は使うことになります。
また認知症の方の場合ですと、身体的な介護以外に目を離せないという生活も必要になってきます。本当に1日24時間365日なのが介護です。
そこでこういった状態を少しでも軽減してもらうために、介護保険のサービスを利用することで、1日の中で数時間は介護サービス事業者の方に見てもらうことができます。
ただ、見てもらえるからといって、家族が介護する時間をゼロにはできませんので、1日の大半は介護に関わることになります。
このような状態を見ていきますと、先ほどのところでもお伝えしましたが、介護と家族の生活のバランスをとることが最優先になってきます。
介護と生活のバランスを考えずに、介護に専念するため「介護離職」される方もいらっしゃいますが、計画的に進めないと介護が終わった後に残った自分たちの生活基盤を失う方もいらっしゃいます。
介護だけを無理してやらず、自分たちの生活も成り立たせることを考えましょう。2つのバランスを考えることが大切です。無理な介護を続けることで「共倒れ」になる可能性もあるのです。
ポイントは介護の計画
介護を行う上で必要なのは計画です。実際に介護を行うために必要なことや時間、かけられる労力などを洗い出しておきたいところです。
ポイント1:時間
時間と聞くと、「1日に何時間介護に関わることができるのか」を想像しがちです。これはこれで正しいことですので、何時間関われるのかをはっきりさせておきましょう。
介護の時間にはもうひとつあります。それは「どの時間帯に関われるのか」ということです。朝と夜は仕事から帰っているので大丈夫だったとしても、お昼間の時間帯は誰も家にいないのなら、この時間帯の介護を何とかしなくてはいけません。
また、このようなケースもあります。夕方から夜までは、お子さんの塾の送り迎えがあり、外へ勤めに行っている人が残業になると、一時的に家に人がいなくなる。
送り迎えに時間がかかることもあります。残業が延びることもあります。ライフスタイルとも照らし合わせて、無理のない時間を考えることが大切です。
ポイント2:労力
この場合の労力とは体力と言い換えてもいいでしょう。介護は想像以上に体力を必要とします。人一人を起こし、支え、抱き抱えるのですから体力がないとつらいことがわかります。
特に昨今新聞でも取り上げられることの多い「老々介護」の場合、介護する側の体力も低下していきます。場合によっては更年期などで体調が優れない方もいらっしゃることでしょう。
また、お仕事で力を使う方、立ち仕事が長い方などは、家に帰ってから介護に使う体力が残っているでしょうか。
体力の低下や体調不良のときに介護を続けると、介護する側がケガをしたりギックリ腰になったりして、介護できない状態になることもあります。
無理なくあなたが介護に使える体力(労力)を考えておいてください。
ポイント3:人数
介護に関わってくれる人は何人くらいいらっしゃるでしょうか。
ご家族全員が必ず関われるとは限りません。兄弟や親族が必ず関わってくれるとも限りません。
「たぶんこの人はやってくれるだろう」というのは危険です。必ず本人に確認するようにしてください。そうしないと期待はずれということにもなりかねません。
まずは介護するご家庭の方の中で、何人がほぼ毎日関われるのか。週末だけ、夜だけ、お昼間だけというように関われるのか。介護は理屈ではなくマンパワーです。人数を間違えると介護の計画も意味がなくなります。
ポイント4:お金
介護が始まると、これまでの暮らしよりもお金が必要になります。在宅介護でも、施設での介護でも同じです。ですから、長期的な介護と生活の資金計画を立てておきましょう。
施設での介護の場合、在宅介護よりも施設によってはお金が必要になります。介護のお金は施設選びや介護保険サービス選びの基準の1つになります。
ポイント5:住宅環境
在宅での介護の場合、トイレやお風呂、廊下に手すりが取り付けられるかを確認しましょう。また、お部屋の中に介護用ベッドが置けるのかもチェックポイントです。
また、車いすでお家の中を移動されるなら、廊下や部屋の入り口の広さをリフォームする必要も出てきます。さらに部屋と廊下の境目をフラットにする、トイレの扉も横開き(引き戸)にするなどの工夫が必要になってきます。
そして、介護サービスによって家族以外の人が出入りするのなら、防犯のためにカメラの設置などが必要になることもあります(介護する側、される側のためです)。
介護のために住宅環境を整えるのは、リフォームが関係するため出費もかさみます。施設での介護なら、こういった配慮は出来ていますので、ご家庭でリフォームする負担が少なくなります。
ポイント6:お互いの気持ち
大変難しいポイントですが、無視することはできません。介護される人、介護する人、お互いの気持ちをできるだけ一致させておきましょう。
介護はすぐに終わりません。またお互いの体調も年齢とともに変化していきます。こういった事実を見つめた上で、
・最初は在宅介護
・在宅介護が困難になってきたら施設介護へ
・共倒れにはならないことを優先
これがすべてではありませんが、こういった話を事前に伝えあっておきましょう。
高齢者ホームを選ぶポイント
在宅で介護をするのか、施設で介護をするのか。見極めるポイントは先ほどの6つです。その結果、「在宅だけではちょっと難しいかも」という場合には、ここからご紹介する施設を選ぶポイントが参考になるはずです。
施設の種類
介護ができる施設には種類があります。
・40歳以上の人が払っている介護保険で運営されている施設
・運営は介護保険ではないが、介護保険サービスを使える施設
・自治体など行政が運営している施設
・民間運営の施設(この場合は住宅といってもよいでしょう)
それぞれに特徴があります。メリットもデメリットもあります。
そして費用も変わってきますし、介護に対する姿勢も違っています。
どのような施設ならご高齢者の方もご家族も安心できるのか。どういった部分は満たしておきたいのかを考えながらチェックしておきましょう。
施設の基準
ここは注意ポイントです。介護施設はどんな人も受け入れてくれる、と思っていけません。
施設によって、入居するときに基準が決まっています。例えば、次のような基準があります。
・要介護認定の等級が高い人が入居できる
・要介護認定の等級が低い人だけが入居できる
・認知症の人だけが入居できる
また、次のような場合に退去しなくてはいけなくなることもあります。
・入居時は要介護認定の等級が低かったが高くなった場合
・入居時は認知症ではなかったが最近認知症と告知された
どういった場合は入居できないのか。どうなると退去となるのか。しっかりと確認しておきましょう。
施設のサービス
重要な点は、医療、介護、レクリエーション、食事です。
これらはどの施設でも同じではありません。施設によってどのような内容なのか違ってきます。
医師が施設に常駐して、何か不調があるとすぐに診察してくれるところもあれば、施設から家族へ連絡が入り「病院へ連れて行ってください」と申し出があるところもあります。
介護も内容や設備に違いがありますので、リハビリや運動などで健康に差が出てくることもあります。
レクリエーションは好みですので、人と関わることが好きな方にとってはうれしいことです。反対に、あまり人と関わるのが苦手な方だとストレスになってしまうこともあります。
食事も様々です。バリエーションのある食事もあれば、変化が少ないところもあります。また味付けなどは好みの問題なので、おいしく食べられるところを選ぶようにしておきたいところです。
施設のお金
入居時の費用。毎月の費用。施設によって様々です。高い安いではなく、あなたの生活を続けながら無理のない介護への費用負担を計算し、資金計画を立てることが重要です。
年齢が50代、60代ですと他のライフイベントも重なってくる可能性もあります。長期的な視点で計画しましょう。
施設のアクセス
第一は快適に過ごせる場所なのか。静かなところが好きな方なら、少し郊外の施設がよいでしょう。あまり静かすぎると寂しいとおっしゃる方なら、近くにコンビニなどがあって人の動きが窓から見えるようなところがおすすめです。
第二に家族が通いやすい場所であることも大切です。面会へ行くために、電車とバスを乗り継いで、というのでは困ります。また施設が山の中に建っている場合、自動車の運転に慣れておられない方ですと、施設近くの道は整備されていて走れますが、そこへ行くまでの道が険しいと怖くて進めないということもあります。
施設には14種類の選択肢がある
それでは高齢者向け施設の種類を見ていきましょう。全部で14種類あります。
14種類の施設とは
昨今、施設の種類が増えています。そのため、名前を聞いただけでは民間施設なのか公的施設なのかもわかりにくいですし、どのような介護内容になっているのかも伝わりづらくなっています。
まずは、次の14種類を見ていただき、広い視点で民間施設と公的施設の違いなどを検討してみてください。
民間施設 | シニア向け分譲マンション |
グループリビング | |
生活支援ハウス | |
シルバーハウジング | |
サービス付き高齢者向け住宅 | |
有料老人ホーム(健康型) | |
有料老人ホーム(住宅型) | |
有料老人ホーム(介護付き) | |
公的施設 | 養護老人ホーム |
軽費老人ホーム | |
認知症グループホーム | |
介護療養型医療施設 | |
介護老人保健施設(老健) | |
特別養護老人ホーム(特養) |
(出典:厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/)
特別養護老人ホームは待ち状態
いつの時代でも待ち状態なのが、特別養護老人ホームです。比較的費用が安く、安心して介護を受けられることから人気があります。
2015年(平成27年)に受け入れの基準が変更になったことから、待機されている方が少し減りましたが、それでも万単位の待機者がいらっしゃいますので、簡単に入所することができません。
早くて数ヶ月。長い人ですと数年かかることもあるため、入所できるタイミングは施設や介護度によって変わってきます。
有料老人ホームはライフスタイルで選ぶ
特別養護老人ホームの入所を待っていられない。そんな方のために有料老人ホームがあります。
ただ、費用面を見ると特別養護老人ホームよりもかかってしまいます。また施設によって必要になる費用がちがっています。
サービスの内容や設備もばらばらですし、お部屋の印象や共用部分の雰囲気も施設によって違います。
有料老人ホームを選ばれる場合は、ご本人のライフスタイルに合わせることが大切です。
一番大切なポイントとは
高齢者施設で一番大切なポイントとは、次の3つの雰囲気です。
・スタッフさんの雰囲気
・ほかの入居されている方の雰囲気
・施設全体の雰囲気
「なじめそう」「居心地がいい」と感じてもらえる雰囲気が大切です。施設は毎日生活をする場です。イライラする原因があったり、居場所のない雰囲気が感じられたりするとつらいだけになってしまいます。
毎日が暮らしやすい施設であること。大切にしたいポイントです。
高齢者ホーム:まとめ
介護を計画するポイントや、在宅から施設での介護を考える理由、施設の種類や選び方のポイントを紹介してきました。
本編でもお伝えしましたが、介護は毎日続くことです。そしていつ終わるのかわからないことです。ですから在宅で介護を続けられる場合でも、施設で介護をお願いされる場合でも、ご家族が共倒れにならないことを中心に考えてください。
しばらくは在宅で介護を続けられるのなら、毎日の食事を介護食の宅配弁当にすることで、少しは自分のお時間を持つことができます。その時間で気分を変えることもできるでしょう。
在宅介護が良い。施設介護が良い。どちらも良いことなのです。大切なのは、お互いが健康で安心して暮らしていけることです。介護は無理しないことが肝心です。