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白内障は発症の原因として加齢が一番多く、高齢者に多い目の病気です。
初めは自覚症状が乏しいのですが、進行すると視力が低下したり、物が二重に見えてしまったりするようになり、日常生活に支障をきたすこともあります。
ここでは、多くの人が悩む白内障の原因や治療法、予防法などについて詳しく解説します。
目次
白内障とはどんな病気?
白内障とは目の中のレンズの役割を果たす水晶体が濁ってしまう病気です。
レンズが濁ると物が霞んで見えたり、弱い光でもまぶしく感じたりするようになってしまいます。
また視力も低下しますが、白内障による視力低下は眼鏡をかけても見えやすくなることはありません。
一番多い原因は加齢であり、40歳代から進行しはじめ、50歳代では40~50%、60歳では70~80%、70歳代で80~90%、80歳代ではほぼ100%に近く白内障の進行が認められる、と言われています。
「薬を使えば一度濁ったレンズが元に戻る」という訳ではないため、早期発見、早期治療が進行を遅らせるためには重要です。
残念ながら今の医学では白内障を完全に予防することはできませんが、国内での白内障による失明率は3%程度と低く、治療を受けることである程度進行を遅らせることができます。
目の構造と働き
・角膜
眼球の黒目の部分にありますが、角膜自体は透明の膜です。角膜は三層で構成されています。目に入る光を屈折させて、網膜上に像を結ばせます。
・水晶体
角膜同様に光を屈折させ、網膜上に像を結ばせます。カメラに例えると角膜と水晶体がレンズで、網膜がフィルムにあたります。
水晶体は、透明な凸レンズで弾力性に富んでおり、ピントを調節させるために厚さを変化させることができます。
・虹彩、瞳孔
虹彩は、眼球の色のついている部分で、瞳孔は虹彩の中心にある孔(あな)で、黒目の部分です。
瞳孔はカメラでいうと絞りに相当し、大きさを変化させることで目に入る光の量を調節しています。
・網膜
光を感じる杆体細胞と色や形を感じる錐体細胞などの視細胞が存在し、光を感じたり物を見たりするのに必要な組織です。
・強膜
強膜は白目の部分です。角膜とともに眼球の外壁を作っています。
・硝子体
眼球の内容物の大半を占める半透明のゼリー状の物質であり、眼球の形を維持する働きをしています。
・脈絡膜
強膜と網膜の間にある膜で、血管が豊富であり網膜に栄養を送っています。
・視神経
視神経は、網膜に達した視覚情報を脳に伝達します。網膜全体に約100万本の神経線維があります。
白内障の原因は?
白内障の原因で一番多いのは加齢によるものです。歳をとると目の中にあるたんぱく質が変化し、水晶体を濁らせてしまいます。
たんぱく質が変化する原因は「酸化ストレス」です。
酸化とは、身体の中に取り込まれた酸素の一部が活性酸素となり、身体の中の細胞を傷つける反応であり、金属が錆びるのと同様に酸化によって人間の身体も錆びると老化が促進すると言われています。
本来、人間の身体には活性酸素の働きを抑制したり、損傷した細胞を修復したりする力が備わっていますが、この抗酸化防御機能と酸化のバランスが崩れ、活性酸素の産生が上回った状態が「酸化ストレス」です。
酸化ストレスは加齢以外にも、喫煙、紫外線、目への衝撃、放射線の影響などで高まります。
他にもステロイドや痛風治療薬、向精神薬といった薬剤やアトピー、糖尿病、目の炎症を起こす病気なども白内障の原因となります。
白内障の症状は?
白内障は初期の段階では自覚症状がありません。進行すると、視界が全体的に霞んだり黄色く見えるようになったりすることがあります。
また、普通は眩しく感じないような弱い光でも眩しく感じてしまったり、物が二重に見えるようになったりすることもあります。
さらに進行するとどんどん目の中のレンズが濁ってしまうため、視力が低下してしまい、最悪の場合失明に繋がります。
白内障で見えにくいまま生活をしていると交通事故に遭うリスクが普通の人の2.5倍にもなると言われています。
少しでも自覚症状がある方は、早めに医療機関を受診するようにしましょう。
<白内障のセルフチェック方法>
以下の症状に当てはまる項目があれば、早期に眼科を受診することをおすすめします。
なお、白内障であるか調べるためには病院で検査を受ける必要があり、このセルフチェックは診断を決定づけるものではないためご注意ください。
□目が見えにくく不自由を感じることが多くなった。
□左右の目の見え方の差が大きい。
□明るい場所や日差しの強い場所にいると異常に眩しく感じる。
□片目で物を見た時、二重に見える。
□以前と比べて、近くの物が見えやすくなった。
□眼鏡を変えても見えにくさは変わらない。
白内障の種類は?
白内障は、水晶体の濁り方によって3種類に分けられます。
それぞれのタイプによって進行の早さや自覚症状の感じ方、手術が早期に必要かどうかなどが異なります。
種類 | 水晶体の濁り方 | 自覚症状 |
後嚢下白内障 | 後ろ側から | 強い羞明感 急激な視力低下 |
核白内障 | 中央部から | 色彩感覚の変化 一時的に老眼が治る |
皮質白内障 | 周辺から | 強い羞明感 かすんで見える |
白内障を調べるための検査とは?
白内障を診断するために必要な検査は眼科で実施しています。
検査を受ける際には、実際に白内障手術を行っている眼科での検査をおすすめします。
目のかすみやまぶしさという症状があっても、手術を行っていない眼科では経過観察と判断される場合もあるからです。
白内障かどうか診断するための検査には視力検査や、白内障の進行度を把握する検査、角膜の形を測定する検査などがあります。
白内障の検査費用は患者の目の状態に合わせて検査の内容が異なるため様々です。
保険適用となる検査であるため、基本的な検査であれば、自己負担額は約1,000円~3,000円程度です。
・視力検査
裸眼の視力と眼鏡及びコンタクトレンズを使用している場合には矯正視力の両方を測定します。
・細隙灯(さいげきとう)顕微鏡検査
特殊な顕微鏡を使い暗い部屋で行う検査です。角膜や水晶体、結膜の炎症の有無など、様々な目の病気を調べることができます。
白内障では水晶体の濁りの程度を確認し、進行度を調べます。
・角膜形状解析検査
角膜がどのくらい湾曲しているか調べる検査です。白内障の手術では人工レンズを眼内に挿入するため、この結果から挿入するレンズが選択されます。
・屈折検査
近視や遠視、乱視などの屈折異常の有無や、それぞれどの程度の強さなのか確認する検査です。
・眼底検査
瞳孔から目の中を覗き、視神経や網膜、硝子体の異常の有無を調べます。
・眼圧検査
眼圧とは、眼球内部の圧力のことです。
虹彩や角膜を保護する役割のある眼房水という目の中で作られる水が増えたり、流れ出る量が減ったりすると眼圧が上昇し、反対の場合には眼圧は低下します。
眼圧が正常値より高い場合は緑内障を患っている可能性があります。
白内障の治療法とは?
初期の白内障では点眼薬で進行を遅らせることができます。
しかし、薬だけでは濁った水晶体を元に戻すことはできません。進行した白内障では、外科的手術が適応となります。
白内障の手術は年々進化しており、現在では超音波乳化吸引療法・眼内レンズ挿入術がメジャーな手術となっています。
超音波吸引療法とは、濁った水晶体を超音波にて硬化させ、分割、吸引する事をいい、水晶体が抜けたスペースに人工眼内レンズを入れる治療法です。
わずか2-3mmの切開で、濁ったレンズを人工的に作られたレンズに交換するため、低侵襲でクリアな視覚を取り戻すことができます。
日本において年間120万件も施行される一般的な手術です。
また、この手術のメリットとして、手術時間が30分程度である事、局所麻酔で行える事、保険適用である事、日帰りでの手術も可能であることが挙げられます。
人工眼内レンズに関して、現在、単眼式(ピントが近く、もしくは遠くで合う)、二式(近く、遠く両方に合う)、ハイブリットタイプ(乱視などでもピントが合う)などの種類があります。
手術前の検査の結果により、一人ひとりに合ったレンズが選択されます。
白内障の予防方法・進行を遅らせる方法とは?
白内障は、個人差がありますが40~50代から進行し高齢になるにつれ有病率が高くなっていくため、老化現象と言っても過言ではありません。
一度濁ってしまったレンズは手術以外では元に戻すことはできませんが、進行を遅らせることは可能です。
・糖尿病などの生活習慣病にかからないようにする
→糖尿病になると若い人でも白内障が進行しやすくなります。
そのため、普段から食生活に気を付けたり運動の習慣を持ったりすることで、肥満にならずに適正体重を維持できるように心がけましょう。
・強い赤外線や紫外線は避ける
強い赤外線(熱線)を浴びる職業の人は白内障になりやすい、と言われています。
また、紫外線を多く浴びる国の人にも白内障が多い傾向にあります。オゾン層の破壊とともに日中降り注ぐ紫外線量は増加の一途を辿っており、日本においても紫外線は予防するに越したことはありません。
外出時はサングラスをかけたり、レンズに紫外線カット効果がある眼鏡をかけたりして目を保護するようにしましょう。
また、太陽が高く昇るとサングラスの隙間から紫外線が目に入ってしまうため、つばのある帽子を併用して紫外線を防御すると良いでしょう。
目に影ができるように帽子を深くかぶることで、紫外線のカット率は20%から50%にアップします。
・禁煙をする
喫煙は酸化ストレスを高め老化を促す原因となります。禁煙することで白内障以外の様々な病気を予防することにも繋がります。
・AGEを多く含む食品を摂り過ぎない
AGE(エージーイー)は身体が糖化する過程で作られる物質です。
糖化とは、身体の中で余分な糖とタンパク質が結合して、タンパク質が劣化し、劣化したタンパク質によってAGEが産生される反応のことをいいます。
余分な糖は、体温の熱によってタンパク質と異常な結びつきをしてしまい変性させてしまうことから、糖化は「身体のコゲ」とも言われます。
AGEは、体内に蓄積すると、肌や髪、骨や血管など全身の老化を進行させます。
加齢による正常な老化に、糖化による異常な老化が加わることで実年齢以上に老化が進行するため、白内障だけでなく、アルツハイマー型認知症やがんなど病気の温床となるリスクが高くなります。
AGEは体内で作られるだけでなく、食品から摂取することでも体内に蓄積されます。
食品から摂取したAGEの多くは体外に排出されますが、約7%は体内に残り、糖化を促進する原因となります。
AGE値は野菜や魚など非加熱の生のままが最も低く、高温で熱する調理法ほど高くなります。
揚げ物、スナック類のほか、炭酸飲料やバターなどにもAGEは多く含まれているため、日常的に摂り過ぎないように注意しましょう。
調理法によるAGE値
低い← →高い | |||||
生 | 蒸す・茹でる | 煮る | 炒める | 焼く | 揚げる |
白内障予防のための食事
白内障の進行を抑えるには、抗酸化作用のあるビタミンなどの栄養素を摂取することが有効です。
ビタミンは野菜や果物に多く含まれており、野菜や果物を多く摂る人は白内障だけではなく、いくつかの病気にもかかるリスクが低くなる、ということが分かっています。
酸化ストレスから目を守るために、抗酸化作用のある食品を多く摂るようにしましょう。
<抗酸化作用のある栄養素>
・カロテノイド(キサントフィル)
ルテインやゼアキサンチン、アスタキサンチンといったカロテノイドという赤や黄色い色素には紫外線から目を守る効果があります。
ルテインはパセリやほうれん草、ブロッコリーなどに多く、ゼアキサンチンはパプリカや柿、とうもろこしなどに多く含まれているため、緑黄色野菜を使ったサラダを毎日食べるようにすると良いでしょう。
アスタキサンチンは鮭やいくら、エビやカニに多く含まれています。
・ビタミン群
ビタミンCやビタミンEには抗酸化作用があり酸化ストレスから水晶体を守る効果があります。
ビタミンCは赤ピーマンやブロッコリー、いちごやジャガイモに多く、ビタミンEはアーモンドやモロヘイヤ、木綿豆腐に多く含まれています。
ビタミンCとビタミンEは一緒に摂ることで相乗効果があります。
また、ビタミンCは多量に摂っても余剰になった分は尿として排出されてしまうため、毎日摂取することが大切です。
・オメガ3脂肪酸
亜麻仁油、えごま油、クルミなどの植物系とサバやサンマ、アジなどの魚系があります。
オメガ3脂肪酸は熱すると酸化しやすいため、植物系油脂はドレッシングにして摂取するのがおすすめです。
また、高温圧搾された油よりも低音圧搾された油の方がオメガ3脂肪酸は豊富に含まれています。
一度蓋を開けた油は冷蔵庫で保管すると良いでしょう。
魚は表面は酸化しても内部までは酸化しないため、焼き魚にしても問題はありません。
煮魚ならほとんど酸化しないため、より多くのオメガ脂肪酸を摂取することができます。
・アントシアニン
目に良いことで有名なアントシアニンは抗酸化作用を持つ青や紫色の色素のことです。
水晶体に凝集するたんぱく質を抑制する効果があるため、白内障予防にも効果があります。
アントシアニンはブルーベリーやぶどう、赤キャベツや茄子などに多く含まれています。
・ミネラル
亜鉛やセレンといったミネラルは抗酸化物質と一緒に摂ることで抗酸化作用を高める効果があります。
亜鉛やセレンは魚介類や肉類、海藻などに多く含まれますが、主食、主菜、副菜を揃えて毎食バランスの良い食事を摂って身体に必要な栄養素を補うことが大切です。
白内障予防のまとめ
白内障は自覚症状の程度は異なりますが高齢者であれば誰でも発病し得る病気です。
進行を遅らせるには酸化ストレスが鍵となっており、赤外線・紫外線を避けたり禁煙したりすることで白内障を予防できるだけでなく、アンチエイジングにも繋がります。
また、糖尿病などの生活習慣の予防も白内障予防と関係が深く、栄養バランスの良い食生活が健康には欠かせません。
しかし、栄養バランスを意識した食事を作るために献立を考えて買い物をして調理をする、というのは高齢者にとっては大変なことです。
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参考:日本白内障学会
http://www.jscr.net/index.html