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高齢化が急速に進むことで、認知症を患う方が増えています。平成29年に厚生労働省から発表のありました数字を見ると、次のように増加傾向にあることがはっきりとわかります。
年 | 推定数 | 推定有病率 |
2012年 | 462万人 | 15.0% |
2015年 | 525万人 | 15.5% |
2020年 | 631万人 | 17.5% |
2025年 | 730万人 | 20.0% |
2030年 | 830万人 | 22.5% |
2040年 | 953万人 | 24.6% |
2050年 | 1,016万人 | 27.0% |
2060年 | 1,154万人 | 33.3% |
出典:厚生労働省 平成29年版高齢者社会白書(概要版)
「3 高齢者の健康・福祉-図1-2-11 65歳以上の認知症患者の推定者と推定有病率」
URL:https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/html/gaiyou/s1_2_3.html
そこでこの記事では、今後増えていくであろう在宅での認知症介護におけるケアの工夫について解説していきます。
目次
認知症を知ろう
認知症ケアの工夫を知る前に、認知症とはどういったことなのかを理解しておきましょう。
そうしないと、本人の不安を家族が理解することは難しくなりますし、曖昧なままでケアを行っても、ご本人は余計に混乱される可能性もあります。
認知症と物忘れの違い
最初に私たちが理解しておきたいことは、認知症と物忘れの違いです。認知症というと「覚えていない」症状にフォーカスされることが多いため、年齢と共に誰にでも起こる「物忘れ(健忘といいます)」と同じように考えてしまいます。
しかし物忘れは、あくまでも加齢に伴う自然現象ですから、誰にでも経験があるはずです。
・昨日の晩ご飯のメニューが思い出せない
・テレビで観た芸能人の顔はわかるが名前が出てこない
・買い物に行って買いたいと考えていた商品が思い出せない
過去の記憶をすべて忘れているのではなく、経験や考えていたことの一部だけを忘れているだけで、特に日常生活に大きな支障が出ることはありません。
しかし、物忘れではなく「認知症」であった場合は、
・そもそも昨日、晩ご飯を食べた体験を忘れている
・テレビで顔を見てもまったくわからない
・買い物に来ていることがわからない
というような症状が出てきます。
また、
・カレンダーを見ても日付がわからない
・毎日一緒に暮らしている人の名前がわからない
・どこにいるのかわからなくなる
・時計を見ても時間がわからない
・着替えや食事が一人でできなくなる
というようなことが起こり、日常生活に影響が出てきます。
このように、認知症と物忘れ(健忘)とは、「覚えていない」という現象は同じでも、忘れている範囲が全く違うのです。
認知症の原因
次に、認知症の原因についてお伝えしていきます。
認知症の原因には、次の4つの病気が原因となって起こっていると言われています。
(1)アルツハイマー病
日本における認知症の7割を占めていると言われている原因です。脳内の神経細胞に「アミロイドβたんぱく」と呼ばれる物質が大量にたまることで、アルツハイマー病が起こると言われています。
脳内のたまった「アミロイドβたんぱく」により神経細胞が破壊され、脳が萎縮し認知症が起こります。
(2)脳血管障害
脳の血管が詰まって起こる「脳梗塞」。脳の血管が破裂して起こる「脳出血」。一般的には2つを合わせて「脳卒中」と呼ばれることもありますが、この疾患の後遺症として認知症が引き起こされることもあります。
(3)レビー小体型認知症
脳の神経細胞に、たんぱく質の小さな塊り「レビー小体」が現れてくることで、脳の神経細胞に障害を引き起こします。その結果「認知症」を発症することがあります。
(4)前頭側頭型認知症
脳の前部にある「前頭葉」。両方の横にある「側頭葉」。この部分が萎縮することで認知症を発症することがあります。
前頭葉は理性、側頭葉は言語や物の理解を司る部分なので、この部分が萎縮すると、これまでとは違った行動や言動が始まることもあります。
家族やまわりの人から見ると、常識外れな行動や言動のように感じられるため、社会生活を続けることに支障が出てきます。
MCIをご存じですか?
MCI(軽度認知障害)という言葉をご存じでしょうか?MCIとは、認知症になる前の段階。
これまでの状態よりも少し認知機能が低下しているが、日常生活を続ける分には問題がない、という状態を示しています。
現在、日本ではMCIの方が400万人以上いらっしゃると推定されています。そして残念なことですが、認知症は一部の症状を除いて進行を遅らせることは出来ても止めることはできません。
ですから、MCIの方の場合、そのまま治療を行わないでいると認知症へ進行することは間違いないでしょう。
認知症のサインと対処法
「あれ?」「いつもと違うな」とご家族が感じられたなら、次のチェックを行ってみてください。
認知症は早期発見することで、進行を遅らせることもできます。
また、早い段階でわかると、次の章でお伝えするケアを行うことで、ご本人の不安も減り、本人も家族も安心して生活することができるでしょう。
まずは症状をチェックしましょう
認知症のサインを見逃さないために、よく使われるのが記憶力のテストです。
STEP1:家族が本人へ3つのわかりやすい単語を伝えます。
STEP2:伝えた単語を本人に言ってもらいます。
STEP3:別の話や質問をして、5~10分くらい間を空けます。
STEP4:STEP1で伝えた3つの単語を言ってもらいます。
2つ、3つの単語を言えた場合は、記憶力抜群です。
1つ、または1つも言えない。ヒントを与えても1つしか出てこない場合は、記憶に障害が出ている可能性があります。
もし、記憶に障害が出ているかもしれないと思われた場合、ご家族が本人の普段の生活における行動や言動を思い起こしてみてください。
・曜日や日付など何度も同じことを繰り返し聞いてくる
・財布や大切な品を置き忘れて探していることが増えている
・慣れた料理なのに手順がわからなくなっていることがある
・熱心にやっていた趣味に興味を示さなくなった
・家の中にいることが増えた
・テレビや新聞などにも興味を示さなくなった
・イライラしていることが増えた
・すぐに怒ることが増えた
・買い物に行くと必要ではないものまで大量に買ってくることがある
もし、これらの中に一致する行動や言動があったなら、できるだけスムーズに診断してもらいましょう。
かかりつけ医にも相談
とは言っても、ご本人としては認知症を患っていることは認めたくありませんので、病院へ検査に行くとか、専門医に診察してもらうことを嫌がられるかと思います。
そんなときには、これまで風邪や体調不良などを含めて、いつも診ていただいていた「かかりつけ医」の先生に相談するのが一番です。
よく知っている先生の話なら、ご本人も一度くらいは聞かれるでしょうし、かかりつけ医の紹介であればスムーズに認知症の専門医に診察してもらうこともできるでしょう。
しかし、「これまで健康だったから、かかりつけ医がいない」とおっしゃるご家庭もあることでしょう。そういった場合は、家族だけで悩むのではなく「地域包括支援センター」や「認知症の人と家族の会」などに相談することも可能です。
画像検査で診断
認知症の診断には、次のような方法が行われることが多いです。
・問診
・認知機能テスト
・血液検査
・画像検査(CTやMRI)
おおむねこのような診断や検査を行うことで、認知症かどうかがわかってきます。そして結果に合わせて必要な治療を開始することになります。
軽度の認知症ケアの工夫
MCIのように軽度な認知症ケアには、次のような方法があります。
それぞれのケアを行うときには、ご家族の工夫があることで本人も安心して暮らすことができます。
お薬
意欲や気力を向上させるために薬を使った治療が行われることがあります。
また、認知症だという現実と、思い出せない苦しさから、不安定な状態になることもあります。そういった場合にも薬を使って、気持ちを穏やかにする治療が行われます。
お薬を使った治療の場合、ご家族はお薬の管理をそれとなく介助していただきたいと思います。
また、ご本人が管理すると言われた場合でも認知症により、いつも正しくできるとは限りません。出来なかったときでも「自分でやるっていったのに!」とは言わず、それとなくサポートして上げてください。
リハビリ
リハビリを行うことで、残っている脳の機能を活性化させることができます。そうすると認知症の進行が遅くなることもあると言われています。
リハビリには、次のようなことが良いとされています。
・昔を思い出す(記憶を思い出す)ために、家族や仲間と話す機会を増やす
・子供の頃に楽しんだ歌や映画やドラマを鑑賞する
・昔の写真を見る
また、手先を動かすことも良いと言われています。
・絵を描く
・写真を撮る
・歌を唄う
昔、手芸が得意だった方なら、針やハサミなどが危なくないような手芸をやっても良いでしょう。
折り紙や塗り絵なども良いですね。
運動
生活の中でリズムを作るように工夫しましょう。決まった時間に体操する。軽度の方なら散歩する。
ついつい生活のリズムが崩れてしまうことが増えますので、規則正しい生活が続けられるように、ご家族がサポートしてあげてください。
役割
これが一番大切な工夫なのではないかと思います。人は誰でも役割があるからこそ、達成し自信が芽生えます。そして、自信を持つことで安心を感じ、心も穏やかになるのではないでしょうか。
ですから、軽度の認知症が始まった方には、家族から簡単な役割を担ってもらうように工夫しましょう。
・洗濯物をたたむ
・靴下をたたんでタンスへしまう
・靴を揃える
・花壇に水をやる
「やっている」「やった」という実感が、自信と安心につながります。
生活での工夫
これまで出来ていたことが出来なくなると、誰でも不安になり混乱します。
そこで普段の生活の中で次のような工夫をすることで、ご本人に安心を感じてもらいましょう。
・服の前後ろがわかりやすいものを選ぶ
・服の上下がわかりやすいものを選ぶ
・ボタンが扱いにくそうならマジックテープを使った服にする
家の中にも、
・おフロはこっち
・トイレはこっち
というように案内表示を大きな紙に書いて貼っておくと安心されます。
また、
・ドアを開ける
・スリッパを履き替える
・ふたを開ける
というように、一つ一つの動作を案内しておくと、わからなくなることが減ります。
そして、こんな工夫も安心への行動につながります。
・メガネや財布などは決まった場所に置くようにする
・持ち物には住所と電話番号を入れておく
・ご近所の方や交番に伝えておく
ちょっとしたことですが、工夫しておくことで家族も本人も安心することができます。
不安を安心に変える認知症ケアの4つの工夫
さらに症状が進行した方へは、次のような工夫を行うことで不安を少なくしてもらえることでしょう。
本人は常に不安です。なぜなら、つい先ほどのことがわからないからです。いつも知らない間に、どこかへ連れてこられた気分なのです。
ですから、できるだけ不安を増やさないようにしましょう。
そして家族も接し方を知っておくと、「言い過ぎた」というような罪悪感を持つことがなくなります。
(1)ゆっくり伝える
早く話すと相手も慌てます。そうすると訳がわからなくなりイライラし不安が増えていきます。
(2)簡単に話す
二つのことを一度に言わないようにしましょう。シンプルに一つのことだけ伝えるのがベストです。「○○をしましょう」が良いですね。
(3)次をうながす
この場合「さりげなく」うながすのがポイントです。
(4)出来ないことよりも出来たことをほめる
認知症を患った場合、出来なくて当たり前なのです。ですから、出来たことをほめるようにしましょう。
「さっきも言ったけど」というのは、相手にとっては「聞いてない」ことを言われているので混乱します。
まとめ
今後も増えていくと言われている認知症。誰もが患う可能性のある病気です。
ご家族にとってもショックでしょうし、本人にとっては大変ショックであり、これからのことを考えると不安でいっぱいだと思います。
ですから、今回紹介しました認知症ケアの工夫を知っておいていただき、本人にとって安心できる環境を作っていただきたいと思います。
そして、認知症のケアにも出てきましたが、昔を懐かしむことは記憶を呼び起こすことにもつながります。音楽や映画、香りや食事は楽しかったときの記憶を一瞬で呼び起こしてくれることでしょう。
お花見や田植えなど、季節を感じてもらえる景色を見に、お弁当を持って出掛けても良いかもしれません。