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「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓は、自覚症状がないままゆっくりと病態が進行します。
ウイルス感染や肥満、飲酒などが原因で肝臓にダメージを与えている状態が続くと、肝臓の機能が低下して肝硬変となり、ゆくゆくはがんに進行する場合もあります。
ここでは肝硬変の高齢者向けの介護食などについて解説していきます。
肝硬変とはどんな病気?
ウイルス感染が原因で発症する肝炎、不摂生やアルコールの飲みすぎが原因となる肝障害などで肝臓が傷つくと、傷を修復しようとしてたんぱく質の1種である線維(コラーゲン)が肝臓を覆います。
肝障害が慢性的になることで、線維が肝臓全体に拡がった状態を肝硬変といいます。
肝硬変の状態となると肝臓はごつごつとした岩のような見た目になり、大きさは正常な肝臓よりも小さくなります。
肝臓が硬く小さくなることで、肝臓の機能が正常に働かず、低下していきます。
肝硬変となると、お腹に水が溜まったり(腹水)、白目や身体全体が黄色くなったり、肝性脳症という意識障害や異常行動、手が不随意に動く羽ばたき振戦などの神経症状がみられることがあります。
また、肝臓が硬化していく過程では、長期に渡って細胞の破壊と再生が繰り返し行われるため、細胞の遺伝子が損傷してがんが発生しやすくなります。
B型肝炎感染例では、可燃炎ウイルスそのものががんを発生させやすくなると考えられています。
肝硬変になって亡くなる原因の約70%は肝臓がんであり、肝硬変の患者さんは定期的に検査を受けて予防と早期発見・治療をすること大切です。
参考:日本肝臓学会 肝がん白書平成27年度
https://www.jsh.or.jp/medical/guidelines/jsh_guidlines/Liver_Cancer2015
肝硬変の原因について
・ウイルス感染
B型、C型肝炎ウイルスに感染して肝炎となると約20年かけて肝炎が進行していき、肝硬変と進みます。
B型、C型肝炎ウイルスの感染経路は血液です。
わが国では以前は輸血や集団予防接種での注射器具の使いまわしが感染の原因となっていましたが、感染予防対策がとられるようになってから感染者数は減少しました。
・アルコール
お酒に含まれるアルコールは肝臓で無毒化されるため、お酒をたくさん飲むと肝臓にかかる負担が大きくなります。
さらにアルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドは毒性が強く、多量の飲酒により肝障害が引き起こされます。
アルコール性肝障害であっても飲酒を続けて肝臓に負荷をかけ続けるとやがては肝臓が線維化し、肝硬変と進んでいきます。
・肥満
肥満者の約80%に脂肪肝がみられます。脂肪肝とは、フォアグラのように肝臓に脂肪が溜まり肝臓の30%を脂肪が占めている状態のことです。
放っておくと肝硬変に進行することもあります。脂肪肝の状態での自覚症状は全くありません。
肝硬変は慢性肝炎などの肝障害が少なくとも10年以上続いた結果生じる病気です。
ウイルス性や飲酒、肥満以外にも薬剤性や自己免疫疾患などが原因で生じる肝炎も進行すると肝硬変となります。
肝硬変でみられる代表的な症状
肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれており、肝臓の機能が保たれている初期の「代償性肝硬変」で自覚症状がないことが多く、自覚症状がないままゆっくりと病態が進行していきます。
肝細胞が破壊され線維化するに従い、食欲不振や全身のだるさを感じることがあります。
さらに肝硬変が進行し「非代償性肝硬変」となると肝臓の機能の低下や血流の低下から様々な症状が引き起こされます。
・黄疸
ビリルビンとは赤血球に含まれる黄色い色素のことで通常肝臓で代謝されます。
肝臓の機能が低下すると代謝されなくなるため体内で増加し、皮膚や白目の部分が黄色くなります。
・肝性脳症
アンモニアが代謝されなくなると見当識障害や異常行動、鳥のように手が震える「羽ばたき振戦」の症状がみられたり、重症の場合には昏睡状態となったりすることがあります。
・腹水、浮腫
アルブミンという血液中のたんぱく質が肝臓で作られにくくなることで低アルブミン血症となり、血管内の水分が血管外に移動してしまうため、見た目で分かる程お腹や手足に水がたまります。
・食道静脈瘤
肝臓を通る血液が通りにくくなると血液は逆流してしまいます。
逆流した血液は胃や食道の静脈に大量に流れ込むために血管が太くコブ状になることを静脈瘤といいます。
静脈瘤が大きくなると破裂して大出血する可能性があります。
他にも掌の内側が赤くなる手掌紅斑、首や頬に赤い斑点ができるクモ状血管拡張、男性でも胸が大きくなる女性化乳房などの身体症状が現れることがあります。
肝硬変の分類
肝硬変は重症度によって分類されます。
Child-Pugh(チャイルド・ピュー)分類
判定基準 | 1点 | 2点 | 3点 |
血清アルブミン値(g/dl) | 3.5超 | 2.8~3.5 | 2.8未満 |
血清ビリルビン値(mg/dl) | 2.0未満 | 2.0~3.0 | 3.0超 |
腹水 | なし | 少量(1~2L) | 中等量(3L~) |
肝性脳症 | なし | 軽度(Ⅰ、Ⅱ) | 時々昏睡(Ⅲ~) |
プロトロンビン活性値(%) | 70超 | 40~70 | 40未満 |
・グレードA(軽度):5~6点
・グレードB(中等度):7~9点
・グレードC(高度):10~15点
グレードA
代償性肝硬変といわれる状態で、軽度の肝硬変です。障害を受けていない肝細胞が代わりに働くことで肝臓の機能がなんとか保たれています。
グレードB
代償性から非代償性への過渡期の状態です。中等度の肝硬変で、全身倦怠感や食欲低下など軽度の症状がみられます。
グレードC
非代償性の肝硬変で、肝臓の機能を保つことができないため様々な症状がみられます。
代表的な肝臓の血液検査値とは?
肝臓の機能は自覚症状がないまま徐々に機能が低下していくため、肝硬変になっても気づかないことがあります。
そのため定期的に肝機能を検査して経過をみる必要があります。肝臓の血液検査値の意義を知り、自分の肝臓のおおよその状態を把握しておきましょう。
なお、基準範囲は測定する医療機関によって差異があります。
・ALT(GPT)
肝細胞内にある酵素でアミノ酸の代謝に関わる働きをしています。
健康な人の血液中にも含まれていますが、高値は肝臓の機能が障害されていることを示します。
肝臓に負荷がかかって肝細胞が破壊されると血液中に流出するため値が高くなります。
基準範囲 30U/L以下
・AST(GOT)
ASTもALT同様に肝細胞内にある酵素です。ALTと同じく肝細胞が破壊されると値が高くなります。
ASTは心筋や骨格筋、赤血球中にも多く含まれており、健康な人ではALTよりASTが高値を示し、肝障害があるとALTの方が高くなります。
基準範囲 30U/L以下
・アルブミン
アルブミンは肝臓だけで作られるたんぱく質です。血液に含まれるたんぱく質の半分以上を占め、栄養状態を示す指標となります。
肝臓の機能が低下すると値が下がります。
基準範囲 3.9g/dL以上
・γ-GTP
たんぱく質を分解する酵素で、肝臓、腎臓、膵臓などの細胞に含まれています。
これらの組織に障害があり、肝・胆道系に閉塞があると血液中に流れ出します。
γ-GTPはアルコール摂取量が多い時や脂肪肝がある場合に値が高くなります。
基準範囲 50U/L以下
・総ビリルビン
古くなった赤血球が壊れてできる間接ビリルビンは肝臓で処理され、胆汁中に入ると直接ビリルビンとなり胆道から排泄されます。
これらを合わせて総ビリルビンといい、肝臓の機能が低下すると値が高くなります。
基準範囲 0.2~1.2mg/dl
肝硬変の治療法とは?
肝硬変の状態に至った肝臓を元に戻す治療法はなく、肝硬変の悪化を防ぎ現状を維持することが治療の目標となります。
病状や重症度によって、薬物による治療だけでなく、栄養状態の改善やたんぱく質の摂取量の制限などといった食事療法も並行して行われます。
B型やC型の肝炎ウイルスが原因の場合には抗ウイルス薬を使用するなどといった原則的に肝硬変の原因に対する治療を行います。
非代償性肝硬変では、合併症に対する対症療法を中心としますが、内科治療では改善が見込めず、肝不全が進行した場合には肝移植の対象となります。肝移植には生体肝移植と脳死肝移植があります。
肝硬変で用いられる主な薬剤と効果
・肝機能改善薬
主に肝臓の炎症状態を軽減し、肝機能を改善する薬です。
・低アルブミン血症(低栄養状態)改善薬
肝機能の低下によって不足する栄養素を補い、栄養不足によって生じる症状や合併症を改善させる薬です。
・抗ウイルス薬
肝炎ウイルスによる肝硬変の場合に原因となるウイルスを排除する薬です。
肝硬変の合併症に対する治療
・腹水
安静と塩分制限を行い、改善しなければ利尿薬やアルブミン製剤を投与します。
薬物療法の効果がない場合は、腹水穿刺をして排液をしたり、腹腔・静脈シャントと呼ばれる腹腔と中心静脈をカテーテルで繋ぎ、腹水を静脈に流す治療法を行ったりします。
・肝性脳症
肝性脳症は、肝臓の機能の低下により、食事に含まれるたんぱく質が腸内細菌によって分解されることで生じるアンモニアを代謝・分解することができなくなるため、アンモニアの血中濃度が上がることで引き起こされます。
そのためアンモニア値が高くなり過ぎないよう薬物療法や食事療法を行います。
・食道静脈瘤
食道静脈瘤の治療は内視鏡で行います。内視鏡治療には、静脈瘤に薬剤を注入して硬化させる治療法と、浮き出た血管を縛る食道静脈瘤結紮術などがあります。
食道静脈瘤は破裂すると大出血して命の危険があるため、破裂に静脈瘤を見つけ、内視鏡で治療を行うことが大切です。
日常生活の注意点とは?
・適度な運動をする。
慢性的な疾患では筋力の維持のためにも適度な運動が必要です。
激しい運動は禁物ですが、軽く汗をかく程度のウォーキング程度であれば問題はありません。しかし、非代償性肝硬変の場合には原則的に運動は控えます。
・しっかり睡眠をとる。
睡眠導入剤を使用していると薬の代謝に時間がかかり翌日まで眠気が長引くことがあります。
また、肝性脳症の症状の1つに昼夜逆転があります。夜寝られない場合は主治医に相談しましょう。
・感染予防対策をする。
B型、C型肝炎ウイルスキャリアの場合、自身が感染を拡大してしまわないよう予防行動をとる必要があります。
肝炎ウイルスは血液で感染するため、握手や会食等では感染しないことをふまえておきましょう。
<感染リスクを避けるために必要な予防行動>
感染リスクを避けるためには、一般的に次のような行動を意識したほうが良いとされています。
・歯ブラシ、カミソリ、タオルなど血液が付着するおそれのある物の共用はしない。
・血液や分泌物が付着したものは自分で処理をするか、他者が処理をする場合には手袋を装着する。廃棄する際は漏れたり他のものや人へ付着したりしないようしっかり包む。
・怪我や鼻血が出た場合などはできるだけ本人以外が素手で触らないようにする。
・献血、刺青は行わない。
・性交渉にはコンドームを使用する。
・B型肝炎にかかっている人の家族はワクチンを接種する。
参考:『日常生活の場でウイルス肝炎の伝播を防止するためのガイドライン』
http://www.kanen.ncgm.go.jp/content/010/ippan.pdf
・薬手帳を持ち歩き、他院の受診時にも活用する。
肝硬変では、薬を分解する機能が落ちている状態であるため多剤の併用をすることで副作用が出てしまうこともあります。
複数の薬を医師から処方してもらうときは、現在飲んでいる薬を医師に見せて確認してもらいましょう。
・食後すぐの入浴は避ける。
肝臓に負担がかかるため食後1時間以内の入浴は避けましょう。また、入浴の際は、湯加減はぬるめにし、長風呂はしないようにしましょう。
・禁酒をする。
アルコールは肝臓で処理されるため肝硬変の方は原則断酒が基本です。アルコール性の肝硬変の場合には断酒で肝硬変が改善することがあります。しかし、アルコール性肝硬変の患者は自らの意志では断酒が困難なアルコール依存症であることが多く、医療機関での治療が必要になります。
肝硬変の食事の注意点とは?
(1)代償期、非代償期に共通する注意点
肝硬変では肝臓のエネルギー源である糖質を利用する能力が低下しているため、いつも肝臓がエネルギー不足の状態になります。
また、BCAA(バリン、ロイシン、イソロイシン)というアミノ酸が不足しがちとなるため、食事やアミノ酸製剤等で必要なアミノ酸を摂取する必要があります。
BCAAは良質なたんぱく質の中でも、まぐろやかつお、あじ、さんま、鶏肉、卵、大豆などに多く含まれています。
たんぱく質は肝臓細胞の再生、回復にも必要です。また、肝臓の貯蔵力が低下することでビタミンやミネラルが不足しやすいため、毎食の野菜や1日に1回は果物を食事に取り入れ、これらの栄養素を十分に摂取するようにしましょう。
さらに、肝硬変の食事の注意点として、肝硬変になると肝臓の生体防御機能が低下するため、食中毒などの感染症にかかると重症化しやすくなることがあげられます。
そのため、刺身や生卵などの生ものは口にせず、火を通して食べるようにしましょう。
また、肝硬変では便秘になると腸内毒素の吸収を促進させるため肝性脳症を起こしやすくなります。
便通を整えるために、食物繊維が多く含まれる野菜、海藻などの食品や消化しやすい食品を摂るようにしましょう。
(2)代償期の食事
代償期では慢性肝炎に準じた食事療法を行い、カロリーや塩分の摂取過多には十分注意する必要があります。
基本的には栄養バランスの良い食事を適量食べ、筋肉を維持することが大切です。
エネルギー摂取量は身体活動レベルや年齢によって異なりますが、おおよそ1日に30~35kcal/kg程度が目安となります。
脂質の必要量はエネルギー比の20~25%に留め、摂り過ぎないようにしましょう。
糖尿病がある場合は25~30kcal/kgが目安となりますが、病院で栄養指導を受けている場合は栄養士や医師の指示に従って食事管理を行ってください。
一般的にたんぱく質の必要摂取量は1.0~1.2g/kg/日程度ですが、たんぱく質を摂り過ぎると血中アンモニア濃度が高くなるため、病状によってはたんぱく質の摂取量を制限する必要があります。
(3)非代償期の食事
非代償期では合併症に応じて食事制限が必要になります。
【肝性脳症がある場合】
たんぱく質の摂取量は0.5~0.7g/kg/日とし、肉類よりも植物性のたんぱく質を摂るようにします。
また、食事は少量を頻回に食べ、空腹の時間が長くならないようにします。
アミノ酸であるBCAAが肝性脳症の症状を改善する効果があるため、栄養剤やアミノ酸製剤等で不足したたんぱく質を補います。
【腹水やむくみがある場合】
1日の塩分量を5~6g程度に制限します。塩分制限や利尿剤の使用などでも腹水・むくみが改善しない場合には水分制限が加わることもあります。
<減塩の工夫>
・普段使っている調味料を減塩タイプの調味料に変える。
・昆布やかつおなど出汁を上手に使い、食材のうまみを生かす。
・スパイスなどの香辛料や酢による酸味など、味にアクセントをつける。
・醤油はかけるのではなく小皿にとり、つけるようにする。
・煮魚より焼き魚を選ぶ。
・汁物は具を多くして、汁を減らす。
・ラーメンやうどんなどの汁は飲まない。
・塩蔵品や漬物、佃煮は控える。
・インスタント食品は避ける。
【食道静脈瘤がある場合】
刺激の強い食べ物や硬い食べ物は食道を刺激する恐れがあります。これらの食品や暴飲暴食は避け、良く噛んで食べるようにしましょう。
【糖尿病を合併している場合】
肝硬変では肝臓での糖の調節能力が低下するため肝性糖尿病となることがあります。
食後の血糖を高くしないよう一度にたくさん食べ過ぎず、炭水化物の多い食品や砂糖、菓子類などブドウ糖の吸収が良すぎる食品は摂りすぎないようにしましょう。
夜食療法とは?
肝硬変患者は肝臓での糖の貯蔵量が少ないため慢性的にエネルギーが欠乏した状態であり、就寝している夜間はエネルギー不足が深刻となり身体のだるさやこむら返りといった症状がみられることがあります。
そのため、肝臓が夜間にエネルギー不足とならないように就寝前に軽食を摂ることが勧められます。
夜食療法では、1日の総エネルギー量が増えすぎないよう毎食の摂取量を少しずつ減らし、寝る前に200kcalほど(おにぎり1個やロールパン1個分程度)を補うようにします。
肝硬変についてのまとめ
肝硬変は、以前は死の宣告と言われるほど予後の短い病気でしたが、治療法や栄養療法の進歩によって延命や生活の質を改善できるようになってきました。
また、肝硬変で亡くなる方の多くは肝臓がんであり、日頃から栄養に配慮した食事を心がけて定期的な検査を受けることが大切です。
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