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調理用語の「さ・し・す・せ・そ」は有名ですね。砂糖に塩、酢、せ(し)ょうゆ、(み)そ、この順番に味をつけていくと料理をおいしく仕上げることができるという、指南の言葉です。今回はそんな中から酢に注目し、その種類とただ酸っぱいだけではない健康効果、冬の体を元気にしてくれる食べ方をご紹介します。
目次
黒酢:ご存じですか?酢の歴史とその栄養
酢は世界最古の発酵調味料
酢とは、人類が初めて人為的に作った調味料だと言われています。古来、人々は収穫した果物を貯蔵していました。もともと、果物の皮や種などには、乳酸菌や酢酸菌をはじめとする多くの菌がついています。
やがてそれらの菌類が、まずはアルコール発酵させ、酒が生まれました。さらに発酵が進むことによって、酒は酢へと姿を変えたということです。
紀元前5000年頃の古代バビロニアの記録にはブドウやナツメやしから作った酢に関する記述があり、ヒポクラテスは酢を薬として病気の治療に利用していたと伝えられています。
日本では4~5世紀ごろに中国からその技術が伝えられたとされています。しかし、当時の日本では、時間をかけて作られる酢はとても高価な調味料で、主に貴族に使用されていました。
その後、1649年、織田信長の家臣、岡田半兵衛門泰政の孫、泰次が、酢の大量生産に成功。長い時を経て一般に広まったのは、江戸時代になってからでした。
酢の誕生や歴史については、マルカン酢様のサイトに掲載されています。ご参照ください。
http://www.marukan.com/health/sub/history.html
酢の栄養価について
このように広く一般に浸透した酢ですが、穀物や果物を発酵させていくうちに多くの栄養素や効能を持つ液体へと変化しています。
さらには原材料となる穀物や果物により、含んでいる栄養価も違ってきます。
酢に含まれる栄養素
一般的に手に入りやすい酢の栄養価は下記の通りです。
エネルギー(kcal) | 糖質(g) | ナトリウム(mg) | カリウム(mg) | カルシウム(mg) | マグネシウム(mg) | リン(mg) | |
穀物酢 | 4 | 0.4 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 |
米酢 | 7 | 1.1 | 2 | 2 | 0 | 1 | 2 |
ワインビネガー | 3 | 0.2 | 1 | 3 | 0 | 0 | 1 |
りんご酢 | 4 | 0.4 | 3 | 9 | 1 | 1 | 1 |
黒酢 | 8 | 1.4 | 2 | 7 | 1 | 3 | 8 |
バルサミコ酢 | 15 | 2.9 | 4 | 21 | 3 | 2 | 3 |
日本食品標準成分表2015年度版(2019年8月追記)より
古来より薬として重宝された酢 その効能
疲労回復に効果あり
運動をしたあと、また介護などで疲労が抜けない方は、体内でのエネルギー不足が考えられます。
このような場合には糖質と酢を一緒に摂取することが効果的です。
また、酢に含まれるクエン酸は体内に溜まっている乳酸を分解し、疲労回復に役立ちます。
ホットスパイシービネガードリンク
夏には桃やブドウを酢につけたものを、炭酸水などで割ったドリンクがさわやかでおいしいですが、冬には体を温める効果のあるスパイスを利用した温かいドリンクがおすすめです。プルーンには鉄分も含まれています。鉄分の補給にも良いですね。
【材料】 作りやすい分量
黒酢または穀物酢など 200cc程度
ドライプルーン 50g
(またはレーズン)
はちみつ 大さじ2程度
クローブ(粒状) 3粒
シナモンスティック 1本
黒こしょう(粒状) 5粒
しょうが 1/2かけ
【作り方】
1、ドライプルーンは、裏面の原材料表示を確認し、「油脂」と記載があれば油がまぶしてあります。(オイルコートと表示されていることもあります。)
この場合はボールに入れて熱湯をかけ、油脂を溶かし出してザルにあげてしっかりと水を切り、キッチンペーパーで水分をふき取っておきます。
しょうがは薄切りにする。
2、煮沸、またはアルコール消毒した保存容器にプルーン、しょうが、スパイス類、はちみつを入れ、酢を注ぐ。
プルーン、しょうがなどが水面から出ているとカビが発生することがあります。容器のサイズにより、必要な酢の量が変わりますので加減してください。
3、一日1回、全体をかき混ぜて漬けこみ、3日目位から味がまとまってきます。
4、適量を湯で薄め、召し上がってください。
胃腸の働きを促す
酢には胃酸の分泌を促す働きがあります。日ごろから食べると胃もたれする、という方には、酢のものをひと皿プラスして召し上がっていただくと、調子がよくなることがあります。
また、酢そのものにも胃や腸を刺激して蠕動運動を活発にする働きもあります。胃腸の働きを促進する効果のある、ホクホクとした野菜とともに取るとよいですよ。
マヨネーズを使わない!マッシュポテト
じゃがいもには、高齢者特有の腸の動きが悪くなって起こる便秘に効果があります。
酢とオリーブオイル、塩で作るマッシュポテトは、とてもあっさりと食べやすい上に、パラパラとして食べにくいものをまとめるつなぎにも使用でき、便利です。
注意点として、マッシュポテトやポテトサラダは、冷蔵での保存には向きません。食中毒の危険が高まりますので、当日食べる分のみ作り、残ったものを保存する場合は、速やかに冷凍してください。
【材料】 2人分
じゃがいも 2個(約200g)
塩 小さじ1/2
酢 大さじ1
オリーブオイル 大さじ3
【作り方】
1、じゃがいもは皮と芽を取り、さいの目に切って柔らかく茹でる。
2、茹であがったら水分を切り、そのまま火にかけて混ぜながら水分を飛ばして粉吹き芋にする。
3、しっかりと水分が飛んだらすりこぎなどで押しつぶしながら、酢、塩、オリーブオイルを加え混ぜる。
※じゃがいもの持つ水分量や、作り方(2)での水分の飛ばし方で、柔らかさが変わります。咀嚼や嚥下に不安がある場合は、牛乳、豆乳やだしなどで適宜のばしてください。
血中脂質の低下
酢の酸味成分、酢酸には、血液中の脂質を低下させる働きがあります。高齢者の多くが、多少なりとも高脂血症に悩んでおられるのでは、と思います。高脂血症は高血圧を引き起こし、心筋梗塞や狭心症、脳出血をも招く危険があります。
日々、少しずつ酢を摂取することで血液もサラサラになるとよいですね。
サバの黒酢煮
DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペタンエン酸)といった、青魚に多く含まれている脂質は、食物からしか取り入れることができない必須脂肪酸の一種で中性脂肪の低下、血液をサラサラにする効果があります。
目や脳を構成する脂質の成分であるとしても知られていて、眼精疲労や脳の老化防止にも役立ちます。
今回はそんな青魚の中からサバを選んでレシピにしましたが、鰯やアジ、ブリなどお好みの青魚でお試しくださいね。
【材料】 2人分
真サバ 2切れ
しょうが 1かけ
酒 200cc
しょうゆ 大さじ2
黒酢 50cc
水溶き片栗粉 大さじ1
【作り方】
1、サバは身が厚ければ切り目を入れ、ボールに入れて、沸騰してから一呼吸おいた湯(80℃程度)を回しかけ、アクや血液などを洗い流す。しょうがは薄切りにする。
2、鍋にしょうが、酒、しょうゆ、黒酢を入れて沸騰させ、(1)のさばを入れて強めの中火で煮る。
3、サバが煮えたら皿に盛り、煮汁に水溶き片栗粉を加えてとろみをつけ、サバにかける。
※咀嚼・嚥下に不安がある場合
サバは身を細かくほぐし、煮汁を絡める。(からい場合は湯で薄める。)必要に応じて、市販のとろみ材でとろみを付ける。
カルシウムの吸収を助ける
酢には食材に含まれているカルシウムを溶かし出す働きがあります。揚げたアジなどを酢醤油ベースのタレに漬ける南蛮漬けは、一晩経つと骨まで柔らかく食べられるようになることからもわかりますね。
高齢になると、骨粗鬆症の方が増えます。改めてカルシウムの多いものを摂取せずとも、たとえばあさりの味噌汁を作る際に小さじ1杯程度の酢を加えるだけでも、効果があります。
キノコ類に含まれるビタミンDは、カルシウムの吸収を助けます。ぜひ、あわせて調理して下さいね。
あさりと白菜の黒酢炒め
あさりの殻に含まれるカルシウムは、酢を入れたたれで煮ることで抽出でき、取りこむことができます。酢の酸味が気になる方は、使用量を半分程度に減らし、少し強い火で煮込むことで飛んでしまいますので、加熱時間で調整してくださいね。
【材料】 2人分
あさり 20粒
しょうが 1/2かけ
白菜 1/8株
しめじ 1/2パック
白ネギ 1本
日本酒 大さじ2
しょうゆ 大さじ1.5
黒酢 大さじ2
こしょう 少々
【作り方】
1、あさりは砂抜きをして殻をこすり洗いしておく。
2、しょうがはせん切り、白菜は厚みがある部分は一口大のそぎ切り、葉の部分は一口大にきっておく。しめじは石付きをとり小ふさに分け、長ネギは斜め切りにしておく。
3、鍋にあさり、しょうが、日本酒、黒酢を入れて蓋をして火にかけ、酒蒸しにする。
4、あさりの口があけば白菜の軸の部分、白ネギ、しめじを入れてさっと煮る。
5、(4)の野菜が煮えたら白菜の葉の部分を加えてしょうゆ、こしょうで味を整える。
季節により使い分けたい 酢の取り方
スーパーマーケットの調味料コーナーにいくと、さまざまな酢があり、どのように使い分けるか、悩むことがありますね。
米酢に黒酢、ワインビネガーにバルサミコ酢。それぞれ、原材料や製造法に違いがありますが、穀物あるいは果物を発酵させて作られた酢であることに違いはありません。
米酢と黒酢、その違いについて
なかでも米酢と黒酢、ビンの裏に記載してある原材料は、どちらも米であることが多いですね。なのに、なぜ透明なものと黒い色がついているものに分かれるのでしょうか?
米酢は精米した米をステンレスなど樽につめ、数カ月発酵させて作ります。それに対して黒酢は、玄米に大麦や小麦を使用し、甕(かめ)に詰めて自然環境のもと1~3年という長い月日をかけて熟成させて作られます。その部分、黒い色が付き、コクや香り、うま味が付いてくるのです。また、原料に玄米を利用していることから、有機酸やビタミンB群、ミネラル類が他の酢よりも豊富に含まれています。
季節による使い分けについて
中医薬膳学では、冬の身体の不調には黒いものを食べるのが良いといわれています。黒酢もまたしかり、米酢などよりもビタミンやミネラルが多く含まれる黒酢は、体を温め、血行を促進する効果にも優れています。煮込み料理などに少しずつ利用し、毎日取ることができれば良いですね。
一方、コクのある黒酢は夏には少ししつこく感じることがあります。夏にはさっぱりと食べられる米酢でドレッシングなどを作り、生野菜のサラダや魚介の「なます」などが、疲労回復にもよいですね。
日々健康に過ごすために
多くの効能を持つ酢。酢を日々の料理に使用し、健康に過ごすことができればよいですね。しかし、健やかな食生活のために最も大切なのは栄養バランスです。とはいえ、常日頃から介護や家事に多くの時間を裂き、さらに栄養のバランスを整えるのはなかなか大変なことです。
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持病により食事制限がある方向けのたんぱく調整食やカロリー調整食、咀嚼・嚥下に不安がある方向けのきざみ食やきざみ食のとろみつき、また、ソフト食、ムース食など、さまざまなバリエーションから、そのときの状態にあわせたものを選べるのも魅力ですね。
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黒酢の取り方と効能まとめ
高齢になると、どうしてもさまざまな不調に悩まされるようになります。特にコレステロールや血行障害、高血圧は、多くの方が気にしているのではないでしょうか?
酢にはこれらの悩みを少しずつ改善していく力があります。残念ながら、医薬品ではないので、あくまでもゆっくりとその効果を表してくるものですが、今のような医薬品に対する知識がない時代から、その薬効は知られていました。
ただし胃潰瘍や胃酸過多のかたには、酢の酸は刺激になってしまうことがあります。このような方は摂取前に医師に相談のうえ、ご利用ください。
料理を作る時間が得られないときには先にご紹介したホットドリンクで暖まり、ゆっくりと調理できる日には酢のものを作ったり、煮物や炒め物に酢を利用したりして、日々健康に過ごす手助けになるとよいですね。