こんにちは!配食のふれ愛のコラム担当です!
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数年前から、ドラッグストアやスーパーで介護用品の売り場が広くなっていることにお気づきでしょうか。成人用のおむつや口腔ケア用品と並んで、介護用食品や栄養補助食品も決して特別なものではなく、身近な店舗で手軽に購入することができるようになりました。
私たちは誰でも年をとります。そして、様々な原因により「食べること」が難しくなることがあります。これは決して認知症や特定の疾病だけが原因ではなく、加齢によって誰にでも起こり得ることです。
「食べること」が大変になってきた高齢者の方にとって、安心して食べていただける食事とはどのようなものなのでしょうか。
目次
介護食とはどのような食事か?
そもそも「介護食」とはどのような食事のことでしょうか?その名前から高齢者のための食事であることはわかりますが、具体的にはイメージしにくいかもしれません。
現在「介護食」に明確な定義はありませんが、加齢や疾病などによって、噛む機能や飲み込む機能が低下した高齢者の方が安全に食べられるように、かたさや物性を調整した食事のことを指します。
食べる人に合った適切な介護食の提供(情報)によって、食欲を増進し、誤嚥(誤って食物や唾液が気管に入り込むこと)や窒息など、食事時の事故リスクを軽減することができます。
簡単に言ってしまえば、「高齢者が食べにくくなった食品を食べやすく調整した食事」が介護食といえます。
介護食はどうして必要なのか?
では、どうして介護食が必要なのでしょうか。年をとると入れ歯になったり、歯が抜けたりするので、やわらかいものしか食べられなくなるのだと思われがちですが、実は歯の問題だけではありません。
例えば若い人が高熱を出して、数日間十分な食事が摂れなかったとしても、体調の回復とともに食欲も出て、すぐに元の生活に戻ることができます。食事の量を減らしたとしても、極端に偏った食事内容でなければ、体重が減るだけで直ちに健康を害することはありません。
ところが高齢者の場合は違います。ほんの数日間十分な食事が摂れなかったり、食事の量が少しずつ減っていくことで、それまでの生活を続けることができなくなる場合もあるのです。
1、高齢者は短期間でADLが低下することがある
日常生活の中で生じる基本的な動作をADL(Activities of Daily Living)=日常生活動作といいます。具体的には着替えや整容、食事、排せつ入浴、歩行などがADLにあたります。
人間の体は食事から摂る栄養素を分解・吸収し、それを材料に合成や再合成をしながら体のあらゆる器官を維持しています。また、常に必要な栄養素を体内に一定量蓄え、必要に応じて取り出して使います。
しかし、こういった体の働きも加齢とともに低下していくため、一般的には若い人と高齢者が同じ食事を食べたとしても、高齢者の方が栄養素の利用効率は低く、体内に蓄えられる量も少ないといえます。
そのために、食事が十分に摂れないことで若い人よりも短期間で体力が低下し、それまでのADLが維持できなくなることがあるのです。
高齢者の噛む機能、飲み込む機能の変化に気づき、早期に対策をとることが必要なのです。
2、噛む機能、飲み込む機能の変化に伴うサイン
何らかの原因で食べにくくなっていることは、高齢者ご本人から訴えがなくても、食事の様子から気づくこともあります。
1)食事を残すようになる
今まで食べられていた量の食事を残すようになったときは、食事が食べにくくなっているサインかもしれません。
高齢者は義歯の不具合などの口腔内のトラブルだけではなく、味を感じにくくなっていたり、腕や手指の痛みで食事摂取の動作に困難があるなどの原因によっても食欲が減退し、食事を残すことがあります。
2)食事に時間がかかるようになる
何らかの原因で食べ物が噛みにくくなっていると、いつもより一口の量が減ったり、噛んでいる時間が長くなるため、食事を食べ終えるまでに時間がかかるようになります。食事はゆっくりと楽しみたいものですが、人が食事に集中できる時間は20分程度だといわれます。
3)食事中や食後に声が変わる、むせる
声を発する声帯と食道はとても近いため、うまく飲み込めなかった場合に声がかすれたり、ガラガラ声になることがあります。また、飲み込んだ食べ物が気管に入りそうになると、むせることで吐き出そうとします。
食べ物や飲み物、唾液などが気管から肺へ入り込むことを「誤嚥」といい、肺炎の原因となることがあるため、飲み込みやすい物性に食事を調整する必要があります。
3、噛む機能、飲み込む機能に変化が起きる原因
前項のようなサインがみられた場合に、その原因を考えてみる必要があります。噛む・飲み込む機能に変化が起きた原因によって、食べやすい食事の形態やその他の対処法が変わってきます。
1)義歯の不具合、その他の口腔内のトラブル
ピッタリと作った義歯も、使用している間に少しずつ合わなくなってくることがあります。また噛み癖などにより、同じ場所に負荷がかかることで義歯が割れてしまうこともあります。
定期的に歯科検診をしていることが望ましいですが、義歯の不具合や口腔トラブルがあった場合はできるだけ早く歯科受診をしましょう。やむを得ず義歯を使用せずに食事をするような場合は、歯茎でつぶせるような硬さで、刺激の少ない食事を摂るようにしましょう。
2)食事を食べるための動作の不具合
肩が痛くて腕が上がらない、利き腕を怪我してしまった、手指に痛みがあるなど、上肢にトラブルがある場合も、スムーズに食物を口に運べないストレスから食事量が低下したり、菓子パンやおにぎりなど片手で食べることができる食品だけに偏ってしまうことがあります。
上肢だけではなく腰や足などに痛みやトラブルがある場合も、きちんと座ることが困難になると食べこぼしが増えたりします。
この場合、口腔トラブルがなければ食事自体よりもテーブルの高さやいすの高さ、お皿や箸・スプーン・フォークなどの食具を工夫することで改善できる場合があります。食事も食事の環境も、食べる人の状態に応じた方法をみつけることが大切です。
3)加齢に伴う筋力低下、咀嚼圧の低下
人が口に食物を入れ、噛んで、飲み込む、この一連の運動には非常に多くの筋肉が使われています。唇の周囲、頬、顎、舌、首、すべての筋肉を駆使し、反射の連続によって「食べる」行為が成立しています。
高齢者の筋力低下は足腰だけの話ではなく、口唇周辺の食べることに必要な筋肉においてもおきています。そしてこれは、誰にでも起こりうることです。
力強く噛めないのは義歯の不具合ではなく、口唇周辺や口腔、頸部の筋力低下の影響かもしれません。
4)疾病とその後遺症
疾病やその後遺症によって、噛む機能や飲み込む機能が低下することはしばしばあります。脳疾患の後遺症による麻痺や、頭頚部や口腔の手術の後遺症など、様々な疾病で起こる可能性があります。
リハビリによって回復を果たすケースもありますが、回復の程度は個人差が大きく、ご本人の努力も必要です。
5)認知症
身体機能に問題がなくても、認知症の発症によって食べることが難しくなることがあります。認知症が軽度のうちはそれほど大きな問題はみられないかもしれませんが、義歯の手入れが十分にできなかったり、義歯を紛失してしまうことなどによって、介護食が必要となるケースがあります。
口腔内の痛みや不具合を適切に訴えることができなくなると、歯科受診をしても改善が困難になる場合や、歯科受診自体を拒否することもあります。
6)その他
「なんとなく食欲がない」「特に体調が悪い気はしないけれど、食べられない」など、原因が明らかでない食欲不振も高齢者にはよくみられます。誰かと一緒に食事をする、外食をするなど、いつもと食事の環境を変えてみましょう。
それでも食事量が回復しないときは、早期に栄養補助食品を取り入れたり、場合によっては医療機関を受診しましょう。
介護食の作り方
ご高齢のご家族に介護食の必要性を感じた時、お家で介護食を作るには具体的にどのようにしたらよいのでしょうか。
1、噛みにくい場合
歯周病や虫歯、口内炎など口腔内のトラブルや義歯の不具合などで噛みにくい時、疾病の後遺症などで麻痺があり、噛む機能に低下があるなどの場合は以下の方法を試してみましょう。
1)繊維の少ない食材を選ぶ
野菜や肉、魚などは繊維やスジが強いと噛み切れないことがあります。葉物の野菜は葉軸部分よりも葉先を使う、肉は太いスジは切り取り、すりこぎなどで叩く、フォークで数か所刺す、包丁の先で切り込みを入れる、魚は皮と骨を取り除く、などの下ごしらえをしましょう。
肉や魚はミンチにして、肉団子やつみれにすると食べやすくなります。
2)やわらかくなるまで加熱する
野菜は繊維の強い部分を避ければ、やわらかくなるまで加熱することで食べられることも多いのですが、トマトの皮やナスの皮など、普段はそのまま使用することが多い部分も噛み切りにくいことがあるので気をつけましょう。
根菜や肉類は圧力鍋を使うと、短時間で繊維もやわらかくすることができます。
3)食べやすい大きさに切る
前歯で噛み切ることができない場合は、一口で容易に口に入る大きさに切っておきましょう。うどんなども4~5㎝に切っておくと、噛み切らずに口に入ります。
小さく切った方が食べやすいと思われがちですが、あまり細かくすると口の中でばらけやすく、歯のすき間や歯茎と歯茎のすき間から食べ物が逃げてしまい、うまく噛めません。
やわらかく加熱してあれば、ある程度の大きさがあった方が食べやすいことが多いようです。
4)隠し包丁を入れる、繊維を断つように切る
おでんの大根に十字の隠し包丁を入れるように、もう少し深く細かく切り込みを入れてから煮ると、大きいまま煮ても食べやすくなります。お刺身もスジを断つように切り込みを入れておくと食べやすくなります。
2、飲み込みにくい場合
高齢者は唾液の分泌量が減少しています。人は食物を口の中で噛みながら、唾液と混ぜて、自分が飲み込みやすい硬さと大きさの塊(食塊)を作ってから、食道へ送り込んでいます。繊維の強いものやパサパサしたもの、口の中でバラバラとばらけるような食品は食塊が作りにくく、飲み込みにくいといえます。
前記の「1.噛みにくい場合の方法」に加えて、次の事にも注意しましょう。
1)つぶす
芋・かぼちゃ類はやわらかく煮てつぶし、少し水分と油分を加えると飲み込みやすくなります。じゃが芋にマヨネーズを加えたポテトサラダは適した調理方法といえます。
2)なめらかにする、とろみをつける
肉団子やつみれを作るときに、ごま油やマヨネーズを混ぜ込むと、パサつきが抑えられて食べやすくなります。煮魚、焼き魚にはあんかけや照り焼きのたれのようなとろみのついたたれをかけるのも、食べやすくなります。とろみをつけるには片栗粉が一般的な材料ですが、介護用食品の「とろみ剤」を使用すると、加熱したくないものにも混ぜるだけでとろみがつくので便利です。
3)むせやすい場合
食べたものが食道ではなく気管に入りそうになった時に、それを排出するために「むせ」が起きます。酸味の強いもの、辛いもの、きなこなど粉っぽいものはむせやすいといわれます。また飲み込む機能が低下している高齢者は、液体にむせることが非常に多くあります。むせは苦しいだけではなく、誤嚥性肺炎や窒息につながる恐れもあるため、注意が必要です。
・ミキサーにかける
むせやすい場合は、口の中に残った食物の小片でもむせこんでしまうことがあります。そのような場合は、食品をミキサーにかけてなめらかにしてみましょう。イメージはポタージュスープです。小さめのミキサーやハンドブレンダーなどがあると便利です。
・とろみをつける、ゼリーにする
液体でむせこむ場合はとろみをつけてみましょう。サラサラの液体ではなく、少しトロっとしているだけでむせにくくなります。とろみをつけるには介護用食品の「とろみ剤」が便利です。食品の味や色を変えることなく、混ぜるだけでとろみをつけることができ、とろみ剤の量でとろみの強さも調節できるので、食べる方に合わせてとろみの強さを変えることができます。
とろみのある液体でもむせこんでしまう場合は、ゼリー状やムース状に固めてみるもの良い方法です。一般的にゼリーというと寒天やゼラチンを使用しますが、寒天やゼラチンは介護食に適した物性にするには多少のコツが必要なため、ご家庭では作りにくいかもしれません。
介護食の分類
介護食にはその形状によっていくつかの段階に分けて考えられており、その分類方法もいくつか存在します。市販の介護食品などを利用する場合に目安となる分類について説明します。
1.介護食の分類
これまで介護食の分類は各業界や団体がそれぞれに作成しており、混乱していました。近年その分類を統一しようという動きがありますが、現在も完全な統一には至っていません。
現在、主に使われている分類は次の3種類です。
1)ユニバーサルデザインフード(UDF)
2003年に日本介護食品協議会が自主規格として作成しました。市販の介護食には広く使われている分類です。市販の介護食パッケージには、ロゴマークとともに区分形状が文字で表示されており、誰にでもわかりやすい分類といえます。
2)スマイルケア食
2013年に農林水産省が介護食品の普及を目的に検討会議を設置し、整理した分類です。市販の介護食品を選ぶ際の参考となるマークを設け、介護食品の愛称を「スマイルケア食」としました。
3)学会分類2013
2013年に日本摂食・嚥下リハビリテーション学会が作成した分類です。略称を「学会分類2013」として、学会分類2013(食事)と学会分類2013(とろみ)に分かれています。この分類方法は主に病院や介護施設などで使用されています。
2.それぞれの分類の関係性
上記の3分類について、その物性ごとのレベルを表にすると次のようになります。
まとめ
高齢者の方が健康を維持し、充実した生活を送るためには「自分で食べる」「楽しく食べる」ことがとても大切です。食事を摂るためには買い物に行ったり、献立を考えたりといった活動が自然と付随します。自分で食事の用意ができなかったとしても、お箸やスプーンなどの食具を使って自分で食事をすることは、生活の質を維持するためにとても大切なことなのです。
しかし食事は毎日のことですから、ご家庭で介護食を作ることは必ずしも簡単なことではありません。ミキサーやブレンダーなどの調理器具が必要なこともあります。市販の介護食や配食サービスの介護食などを上手に利用して、頑張り過ぎずに介護食を日常に取り入れていきましょう。
高齢者の方にとって安全でストレスなく、楽しく食べることができる食事、それらの全てが「介護食」なのです。